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CM制作「資生堂 おばあちゃんのおまじない」篇
ショートムービーのようなCMをF23で24p撮影  独特の質感を表現
2007年9月からオンエアされている株式会社資生堂様のCM「おばあちゃんのおまじない」篇は、ショートムービーのようなストーリー性と独特の質感が表現された作品として話題を集めました。このCMの撮影には、デジタルシネマカメラF23が使われています。
監督・演出の日下宏美様、撮影監督の柏原 聡様、VEとして参加されたマックレイ株式会社 制作グループ撮影/HDエンジニア 関 祥海様に、今回のCMの制作コンセプトと撮影方法、F23についての評価などを伺いました。
HDカメラとフィルムカメラの特性を併せ持つF23はCMの企画コンセプトや表現に最も適したカメラでした
 
  資生堂CM「おばあちゃんのおまじない」篇より。
© 株式会社資生堂
今回のCM「おばあちゃんのおまじない」篇は、2007年9月にオンエアされた資生堂提供のスペシャル番組に合わせて企画されました。1社提供番組ということもあり、1本を長尺120秒のCMにしたいとの意向でした。内容は、通常の商品広告よりもストーリー性の高い作品となっており、昔の化粧品の器をモチーフにした少女と祖母との交流を描いたものです。

このCMをHDで制作することについて、正直なところかなり悩みました。これまでフィルム制作を基本とし、常に高品質のCMを制作してきた資生堂の作品であることや、今回の企画がどちらかといえばショートムービーのような内容だったからです。その反面、長いあいだ番組制作でHDCAMやCineAlta(シネアルタ)を使ってきて、HD制作の可能性の高さは実感していましたし、今回のCMは120秒と長尺でカット数も多いので、HD制作の方が有利ということもわかっていました。

そうしたときに、F23というデジタルシネマカメラがソニーから発売されたと聞いて、さっそく仕様やテスト映像をチェックしてみました。その結果、F23がHDとフィルム両方の特性を兼ね備えたカメラシステムであることが分かりました。今回のCM撮影に、これ以上の機材はないと判断して、採用を決めました。
映画を撮る感覚で24p撮影を選択  企画にフィットした映像表現ができたと思う
 
照明を抑えた撮影でも暗部の黒潰れがないと好評をいただきました。  
 
障子越しに差し込む陽の光の陰影や空気感までを映し出しています。  
制作サイドとしては、今回の企画内容に合わせて、映画のようなCMのトーンで撮影・制作することを意識しました。そこで、24pで撮影し、RGB4:4:4記録しました。合成のシーンはありませんが、情報量が豊富で映画的な質感表現に効果的と判断したからです。

撮影現場でモニタリングしているときから、非常にクオリティーの高い映像であると感じました。特に、暗部のディテールや肌の再現性が格段に優れていました。通常の商品CM撮影では、照明を強く焚く傾向があります。今回の作品はしっとりした質感を表現するため照明を抑え気味にしていましたが、黒が潰れることもありませんでした。作品の中に、女性が部屋で座っているシーンがあるのですが、窓に架けられたカーテンの襞(ひだ)までしっかりと再現されています。そのほか、女性の肌の色、障子から入る自然光、雨上がりに雲の間から差し込んでくる陽の光など、非常に繊細な表現にも威力を発揮してくれたと思っています。F23のダイナミックレンジはフィルムに匹敵すると聞いていましたが、まさにそれを実感しました。

また、今回の作品はカット数が多かったので、カメラ本体が非常にコンパクトで機動性に富んでいることや、使い勝手の良さも大変重宝しました。女性アシスタントが、一人で運んでセッティングできるほどです。おかげで撮影をスムーズに進めることができただけなく、撮影に集中することができました。
仕上がりに近い状態に追い込むためカスタムモードを使い現場で追い込んでイメージに近い画作りを
 
  デジタルシネマカメラF23を使ったCM撮影風景
*写真提供:柏原 聡様
F23の魅力として、シネモードとカスタムモードの2つの撮影モードが搭載されている点があります。今回の撮影では、監督・カメラマン・照明・VEが現場で協議しながら、仕上がりをイメージした画づくりをしていったので、従来のCineAltaと同様にすべてのメニュー項目が調整可能なカスタムモードで撮影しました。スタッフ全員が参加して協議することで現場全体が活気づきますし、いろいろなアイデアが出てきます。カスタムモードは、今回のCM撮影のような現場で追い込んでいく撮影に適したモードといえます。

今回の作品では使用していませんが、F23/SRW-1によるSR Motionにも注目しています。別に機材を持ち込んだり、カメラのセッティングを変更することなくアンダークランク/オーバークランク撮影ができ、しかも撮ってすぐに効果を確認できます。ハイスピード撮影が多いCMでは、特に効果的に使えるのではないかと思っています。
目的・用途で選べる豊富な撮影機能を搭載  今後のCMや映画制作に大きな可能性を提供するカメラ
 
  デジタルシネマカメラF23を使ったCM撮影風景
*写真提供:柏原 聡様
今回の作品は、HD撮影・HD完パケ・HD納品と、一貫してHDクオリティーが確保されています。また、現場で追い込んでいった画も保たれているので、当初から描いていた映画的な表現、ショートムービーのようなイメージに仕上げることができたと思っています。クライアントサイドの評判も上々でした。

F23は、映像コンテンツのクリエーターにとって、非常に魅力的な存在になると思います。S-Logのほかに、ユーザーガンマ設定、SR Motionなど多彩な撮影機能を搭載していますから、用途や目的に合わせた画づくりやイメージに近い表現が可能になります。

劇場用映画では、F23を使ったデジタルシネマ作品が増えてくるのではないでしょうか。このカメラがあれば、小規模なチーム編成でも映画づくりが可能になると考えられますし、S-Logによるフィルム制作的な考え方も映画に向いていると思います。

CMの制作でも、地上デジタル放送の本格化に伴い、HD制作が一層活発になってきます。従来、フィルムを使っていた作品でも、F23が使われるケースが今後増えてくるのではないでしょうか。それだけの性能と機能を持ったカメラだと思います。
監督・演出 日下宏美様

「世界遺産」(TBS系列)という番組で、ソニー製HDカメラシステムを1号機から使ってきましたが、今回F23を使ってみて、その進化の速さに驚いています。F23は、今後の映画やCM制作に大きな可能性を持つカメラだと思うと同時に、演出・撮影・照明・編集に携わるクリエーターの技術やテクニック、ノウハウが真に問われる時代になってくると感じています。
撮影監督 柏原 聡様

フィルム撮影のような質感を表現できるのは、F23の最大の魅力です。今回のCM撮影で、障子越しの光、雨上がりの光などを撮影しているときに強く感じたことですが、シーンごとの光の陰影だけでなく、その場の空気まで映し取ることができるという印象を持ちました。F23の登場により、少人数のスタッフで、映画を撮影する時代が来るかもしれません。
マックレイ株式会社 制作グループ 撮影/HDエンジニア 関 祥海様

F23は、非常に大きな可能性を秘めたカメラだと思います。S-Logや撮影モードとして、従来のCineAltaシリーズと同様にすべてのメニューを調整可能なカスタムモードが搭載されている点はその一つです。個人的には、カスタムモードは今回のCMのように現場で追い込んでいく撮影に向いたモードだと思っています。
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