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映画制作『鴨川ホルモー』(本木克英監督作品)
デジタルシネマカメラF23で全編24p/RGB 4:4:4/S-Log撮影された話題作『鴨川ホルモー』が完成
  『鴨川ホルモー』(本木克英監督作品)
テレビドラマ化された「鹿男あをによし」で知られる人気作家・万城目 学(まきめ まなぶ)氏のデビュー作「鴨川ホルモー」が映画化されます。映画『鴨川ホルモー』(監督・本木克英、撮影監督・江原祥二、出演・山田孝之、栗山千明、濱田 岳、石田卓也、ほか、配給・松竹)はすでに完成しており、2009年4月18日より全国ロードショーです。

この話題の映画『鴨川ホルモー』の撮影にはデジタルシネマカメラF23が使われ、全編24p/RGB 4:4:4/S-Logで撮影されました。松竹株式会社 映像製作部 映画製作室 プロデューサー 矢島 孝様と、撮影監督 江原祥二様に、F23採用の狙いと、実際の撮影で威力を発揮した性能・機能、また今後の映画制作におけるF23の可能性などを伺いました。

映画『鴨川ホルモー』の公式サイトはこちら http://www.horumo.jp/
原作の破天荒なおもしろさをきちんと映像化するため、F23を使って全編をRGB 4:4:4撮影
 
  松竹株式会社 映像製作部 映画製作室
プロデューサー 矢島 孝様
原作となった万城目 学さんの「鴨川ホルモー」は、書店に並んでいるの見つけてから気になる存在でした。物語は、京大生となった主人公が、一目惚れした女性に惹かれて「京大青竜会」というサークルに入会してしまうところから始まります。この「京大青竜会」、実は京都で千年に渡り伝承されてきた謎の競技“ホルモー”を行うサークルで、レーズンが大好きなキモ可愛系の式神“オニ”を駆使しながら大学間で対決を繰り広げます。その中で、友情や恋愛に悩む主人公を笑いと涙で描いています。京都ロケによる独特の雰囲気の中での青春コメディーであるとともに、最先端VFXで映像化した“オニ”を駆使したバトルシーンの数々も、今回の作品の見どころの一つになっています。

映像化にあたっては、撮影をどうするかが課題になりました。作品の中で、“オニ”と呼ばれる摩訶不思議なものが縦横無尽にバトルを繰り広げるシーンがあり、映像化が難しかったのです。監督や撮影監督を交えた協議の結果、圧倒的にCGの割合が多いと言うことで、CGを使いやすいデジタル撮影になりました。カメラは、情報量の豊富さと、後処理でのCG合成と親和性が高いRGB 4:4:4撮影が可能ということで、デジタルシネマカメラF23の使用が決まりました。

公開を控えた段階ですが、この選択は正解だったと思っています。青春グラフティとしての各シーンはもちろん、CG合成を駆使したシーンも、自然でかつリアリティにあふれ、原作のおもしろさを見事に映像化できたと思っています。
S-LogやS-Gamutに注目、デジタルシネマカメラの性能の良さや可能性の高さを実感
 
撮影監督 江原祥二様  
デジタルシネマカメラF23/F35は、すでに撮影監督者向けの発表会などで目にしたことがあり、その新しい技術とクオリティの高い映像に注目していました。今回の作品でF23を使用することが決まってから、作品の舞台となる京都でテスト撮影を重ね、改めて性能の良さや可能性の高さを実感しました。

特に注目したのが、S-Logのダイナミックレンジの広さです。とりわけハイライトの部分の収まりの良さはシネマカメラにもないような素晴らしさだと思いましたし、後々の補正などを考えると非常に有効だと判断できました。また、暗部については、作品の中で2000匹の“オニ”によるバトルシーンがあるのですが、舞台となるのが夜の大学キャンパスなので、どの程度まで暗部が出るか多少不安があったのですが、中間から暗部にかけても想像以上によく出ており、4Stopも大丈夫でした。これもS-Logならではの成果の一つだと思います。“オニ”たちの合成シーンも自然で臨場感に富んだものに仕上げられています。

 
  舞台となる京都のロケ現場風景。
デジタルシネマカメラF23のS-LogやS-Gamutといった機能は、原点となる元画をきっちり撮影するのに有効でした。
くわえて、F23に搭載された新しい技術には、広い色域を誇るS-Gamut(ワイドモード)もあり、今回の撮影でも使用しました。色の情報量がそれだけ豊富ですから、カラーグレーディングなどの後処理に有効だと評価した結果です。映画に限らず、映像コンテンツはあくまでも現場で撮影した元画ありき、すべての原点だと思います。それだけにベースとなる画をきっちり撮影する必要があります。RGB 4:4:4もそうですが、S-LogもS-Gamutも、こうしたきっちりとした撮影をうまくサポートしてくれる技術だと評価しています。

今回の作品では使っていませんが、ハイスピード撮影などが可能なSR Motionにも注目しています。特にF23は、撮影コマ数を1pから60pの範囲で1コマ単位で可変できます。現場ですぐにプレビューしながら、イメージに近いハイスピード撮影ができるほか、インターバルフレームモードでの撮影も可能など、撮影や表現の幅を大きく広げてくれると思います。余談ですが、この作品の後で撮影に入った映画でもF23を使用したのですが、その時にはSR Motionによるハイスピード撮影をかなり活用しました。ノイズといった不安が一切なく、フルHD解像度で最大2.5倍速のハイスピード撮影が現場で可能である点は、F23の非常に大きな強みだと感じました。
フィルムライクなワークフローやセパレート運用できるデザインなどは魅力。現場での撮影の自由度が向上
フィルム撮影の時と同じようにメーターを使用したワークフローが可能な点も魅力でした。その都度、画面に合わせて絞りを変えたり、ちょっと黒を締めてみたりすると、後処理の時に全部通して見るとバラツキが出るというのが個人的な印象なんですね。やはりメーターで計っていく方が黒の基調が統一され、全体のトーンを揃えやすいと考えています。

それと、フィルムカメラを意識したデザイン・形状もF23の魅力の一つです。特に、VTR部であるSRW-1をカメラ本体と一体化したり、分離したりして撮影できる点は、現場での撮影の自由度を高めてくれました。京都の先斗町でのシーンがあるのですが、そこではちょっと激しい画が欲しかったので、手持ちで走り回って撮影しました。画が揺れているので、CG部の方は苦労したかもしれませんが、手持ち撮影ならではの、迫力あるシーンになったと思います。
カメラの性能・機能の向上はデジタル制作に大きく貢献、編集やカラーグレーディングシステムの普及や発展にも期待
今回の作品でF23を使ってみて、デジタル撮影あるいはデジタルシネマには、独特のおもしろさがあると感じました。今後も、作品の企画・内容に合わせて、撮影にF23やF35を使用するケースが増えてくるのではないかと思います。また、特に今回のようなCG合成が多い作品では、フィルム撮影でDIする場合に比べると確実に工程が1つ減ることになりますから、コストメリットにつながることも期待できます。

また、S-LogやS-Gamutといった性能・機能の拡充から、デジタルシネマカメラの可能性の高さも実感しました。今後、こうした新しい技術を、カメラだけでなく編集などの後処理工程にも普及・拡充してトータルワークフローを構築していくことができれば、デジタルシネマの可能性はさらに飛躍的に拡大するのではないかと期待しています。
江原祥二(えばら・しょうじ)撮影監督 プロフィール 撮影監督。日本撮影監督者協会(J.S.C)会員。横浜放送映画専門学院(現 日本映画学校)卒業後、映画、テレビ、ビデオパッケージなど幅広い作品の撮影、撮影監督を務める。
主な作品は、「くノ一忍法帖 自来也秘抄」(1995年)、「さくや 妖怪伝」(2000年)、「悪名 AKUMYOH」(2001年)、「大奥」(2006年)、「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」(2008年)など。
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