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2010年5月1日 全国ロードショー
配給:東映©「ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-」製作委員会 |
2004年に公開された映画「ゼブラーマン」の続編「ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-」(監督・三池崇史、脚本・宮藤官九朗、撮影監督・田中一成、出演・哀川 翔、仲 里依紗、阿部 力、ほか)が、2010年5月1日から全国東映系で公開されました。
この作品は、デジタルシネマカメラF23とSRW-1により全編を24p/RGB 4:4:4で撮影されています。また、一部のシーンでは、テストを兼ねて2009年12月発売の新商品HDCAM-SRカムコーダーSRW-9000も運用されました。
「ゼブラーマン」に引き続き撮影監督を務められた田中一成(J.S.C)様に、この作品の見どころや撮影にF23/SRW-1を採用した狙い、実際の撮影で威力を発揮した性能などを伺うとともに、テスト運用されたHDCAM-SRカムコーダーSRW-9000についての評価や今後の映画撮影における可能性についてお話を伺いました。
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田中一成(たなかかずしげ)撮影監督 プロフィール
日本映画撮影監督協会(J.S.C)会員。1954年生まれ。鳥取県出身。横浜放送映画専門学校卒業後、田村正毅氏の助手を経て映画、テレビ、オリジナルビデオの撮影に携わる。1994年文化庁芸術家在外研修員としてアメリカ、オーストラリアに派遣。主な作品に「極道恐怖大劇場 牛頭 GOZU」「ゼブラーマン」「仮面ライダー THE FIRST」「着信あり Final」「落語娘」「少年メリケンサック」などがあり、他にVシネマ多数。 |
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今回の作品の舞台は、西暦2025年。第1作で誕生したヒーロー ゼブラーマンの力を悪用した一団が、東京を“白黒つける都市”ゼブラシティとして支配しています。その世界で、正義を司る部分として切り捨てられ記憶を無くした主人公「白ゼブラ」が、仲間達の協力によって立ち上がり、「黒ゼブラ」や悪の手先達を相手に、地球の存亡をかけて戦いを繰り広げるという近未来アクションヒーロームービーです。
映画の内容から、必然的にCG合成やエフェクトを多用することになります。約600カット、全体の1/3をブルーバック、グリーンバックで撮影、あるいはエフェクトを使用しています。ゼブラシティの様子やアクションシーンなどでは特に多く使用されており、こうしたCG合成やエフェクトを使った映像表現が、この作品の見どころの一つになっています。
第1作「ゼブラーマン」の撮影には、HDCAMカムコーダーHDW-F900をベースにしたパナビジョン社のキャメラを使用しましたが、今回の作品の撮影には、デジタルシネマカメラF23を使用しています。別の作品で同社のF35を使用した撮影の経験があり、その画質のクオリティーやSRモーションなどの機能、そしてフィルムキャメラと同様の使い勝手ができる点などは高く評価していましたから、今回の撮影でもぜひ使いたいと思っていました。
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「ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-」の1シーン |
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CG合成のためグリーンバック撮影 |
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デジタルシネマカメラF23に決定した理由は、CG合成のことを考えてです。CG合成を行うにあたっては、グリーンバック撮影の際に被写体の輪郭をきっちり撮影する必要があります。情報量が豊富なRGB 4:4:4撮影に加え、F23の被写界深度の深さを活用することで、CG合成に有利で有る事や、実効感度が高くて室外の広範囲のライティングにも余裕が出来る事などから判断しました。また、撮影コマ数を1コマから最大60コマまで任意に設定できることも理由の一つになっています。これにより、24p撮影なら最大2.5倍速のハイスピード撮影(スロー)が可能になるなど、エフェクト撮影に威力を発揮してくれるだろうと期待しました。
私がF35やF23で撮影する際はいつもそうなのですが、CvpFileEditorで作成したオリジナルのガンマカーブを使用しています。ベースを組んだり、ビデオエンジニアの立ち会いはお願いせず、SRW-1をドッカブルで運用するなど常に身近に置くスタイルで、フィルム撮影と同様にメーターを使って撮影しました。監督にはモニターアウトで確認してもらいました。
また、SRモーションについては、スローシャッターも効果的に活用することができました。代表的な例が、ゼブラシティの表現においてです。東京の街並みはそのままに、行き交う人々の映像をあえて3コマ、あるいは4コマ飛ばして撮影することで、悪の集団に洗脳された人々をうまく表現できたと思います。撮影したその場で効果を確認することができる点も、監督をはじめとした演出・制作サイドにとっては便利だったと思いますし、タイトなスケジュールの中で効率的に撮影を進めるうえで大きく貢献してくれたと思います。
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デジタルシネマカメラF23で撮影中の三池崇史監督(写真・左)と田中一成撮影監督(写真・右) |
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デジタルシネマカメラF23で撮影中の田中一成撮影監督 |
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新商品のHDCAM-SRカムコーダー SRW-9000も使用 |
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今回、テストを兼ねて3日間ほどHDCAM-SRカムコーダーSRW-9000をスタジオセットなど一部の撮影で使用しています。SRW-9000は、コンパクトなVTR一体型でF23とほぼ同等の性能・機能を実現した点が最大の特長です。今回は、F23との2キャメ運用やSRW-9000のみの単独運用、また手持ち撮影など行いましたが、運用について非常に満足しています。コンパクト・軽量に加えて、操作のインタフェースがF35やF23をほぼ踏襲しており、使いやすく操作しやすい点も魅力だと感じました。
撮影中は、F23で使用しているガンマカーブをメモリースティックでSRW-9000に取り込んで同じ絞りになるように設定し、ダイナミックレンジが必要なシーンではゲインアップ6dBで800%、それほど必要でない時は3dBアップの600%といった具合に使い分けています。画質的にはF23と比較してほとんど遜色なく、どのシーンをどちらで撮ったのか、撮影に立ち会っていない限り分からないほどです。CG用にプリカラーコレクションをした際も、本当にどれがどちらのキャメラで撮った映像か、まったく分かりませんでした。
撮影コマ数を1コマから60コマまで任意に選択できることを含め、SR MotionやRGB 4:4:4記録、あるいはS-Log撮影に対応するなど、幅色い映像表現が可能であることは映画撮影において威力を発揮します。今回のように、F23といったデジタルシネマカメラのサブキャメラとして使うことはもちろん、単独運用でも幅広い映画撮影に活用できるとも思います。特に、これまでHDW-F900を使用してきた予算に限りのある作品などは、今後、SRW-9000を採用するケースが間違いなく増えるのではないでしょうか。特に、デジタルシネマに関心を持ち、あるいはデジタルで育ってきた若手を中心とする監督やキャメラマンにとっては、HDW-F900で享受してきた効率性や表現の自由度といったデジタルならではの魅力にくわえて、デジタルシネマカメラだからこそ可能になったフィルム的な質感、トーン、さらにはオペレーションがSRW-9000で可能になりますから、そのインパクトは大きいと思います。F35を頂点とするデジタルシネマ制作のラインアップに、新たにSRW-9000が加わったことで、映画の撮影・制作の選択肢もさらに広くなりました。 |
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今回の作品は、CG合成やエフェクトだけでなくカット数自体が非常に多く、極めてタイトなスケジュールの中で撮影が行われました。それが可能だったのは、F23やSRW-9000とSRW-1によるデジタル撮影があったからだと思います。撮影現場あるいは編集・カラーグレーディングで、色やトーンを容易に合わせることができました。また、エフェクトも撮影現場で確認できるので効率的に撮影を進めることができました。そういった意味で、デジタル撮影・制作のメリットを改めて実感した作品でしたし、SRW-9000の開発は、まさにその成果だと思います。また、日進月歩の技術革新は続き、一層の機能・性能の充実、ラインアップの拡充が進むと期待されます。
(一方)、私個人の意見として、ソニーには我々キャメラマンや機材レンタル会社などのユーザーの意見を取り上げて製品に反映したり、日々進化していくデジタル関連製品を我々に総合的に提案してくれる担当者、例えばですが作品の準備段階から仕上げまで最新のデジタル技術のハード面をバックアップするような人材を育てていただき、ソフトとハードの両面からこれまで以上に魅力的な映画の制作・撮影に貢献してほしいと期待しています。 |