――今回の作品の企画意図や制作に至る経緯、見どころなどをご紹介ください。
村上この作品は「踊る大捜査線」シリーズ第3弾となります。2003年の劇場版第2弾以来、7年ぶりとなります。
今回は東京湾岸署の「引っ越し」が作品のモチーフとなっています。人が動く、物が動く、車が動く。そのドサクサの中で事件が起こる、しかも8つ同時に発生する。さらに青島が逮捕した者の解放要求が届く・・と。2年ぐらいかけていろいろなアイデアを紡ぎだしていく中で、劇場版の魅力である物量、事件多発、群像劇など、「踊る大捜査線」シリーズらしい、おもしろい映画ができると判断し、制作が決定しました。テレビシリーズからのファンの方々はもちろんですが、新旧豪華キャストそれぞれの魅力と映画の内容で、初めて観る人にも十二分に楽しんでもらえる作品に仕上げることができたと思っています。ぜひ、大勢の方々に劇場へ足を運んでもらい、「踊る大捜査線」シリーズならではの世界を満喫していただきたいと思っています。
――撮影にデジタルシネマカメラF35とHDCAM-SRポータブルレコーダーSRW-1を採用された狙いは何でしょう。
村上本広監督の作品制作には、「おもしろい映画づくり」というメインテーマとともに、「新しいテクノロジーへのチャレンジ」というサブテーマがあります。2003年の「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」はCineAlta HDW-F900によるHDCAM 24pで、2005年の「交渉人 真下正義」はHDW-F900とSRW-1によるHDCAM-SR 4:2:2で、2006年の「UDON」はほぼ全編をCineAlta HDC-F950とSRW-1によるRGB 4:4:4といったように、つねにその時代の最先端のテクノロジーを採用して撮影しています。
では、今回の作品は何で撮るか、と考えた時に、個人的に真っ先に思い浮かんだのがデジタルシネマカメラF35でした。撮影を担当された川越さんも同様のお考えでしたから、割とスムーズに決定しました。最高の話題作を、最高のテクノロジーと予算を使って撮りたいという思いはスタッフ共通だった、ということでしょう 。
川越僕自身はテレビドラマ制作を数多く手がけてきていますが、いまデジタルシネマという観点、つまりビデオで映画を撮る上で最高のカメラの一つがF35であることは間違いありません。スーパー35mm相当の単板CCDなど最新のテクノロジーがもたらすクオリティーの高さは誰もが認めるところでしょう。ただ、今回F35を推奨した理由は、このクオリティーの高さだけでなく、ビデオエンジニアが参加することで現場での追い込みが可能になること、そして撮影後の仕上げを含めたトータルワークフローでのF35の優位性を評価した結果でもあります。データ収録というだけなら、ほかのカメラを使うことも考えられますし、実際にテストもしてみました。ところが、ワークフローに違いがあるわけです。私たちが求める作品世界を追求するには、データ収録の場合、撮影や仕上げの時間がかかり過ぎると判断しました。F35はポストプロダクション作業を含めた使い勝手の良さという観点でも、ハイエンドの分野で群を抜いた存在だと思います。
村上ワークフローも確かにF35採用の決め手の一つですね。今回の作品はクランクインから公開日までの日程が予め決まっていたので、ポストプロダクション工程の時間がかなり制限されていました。使い慣れたワークフローを踏襲できるF35でなければ、公開に間に合わないといった状況に陥ってしまったかもしれません。
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株式会社ロボット コンテンツ事業部
映画部 プロデューサー 村上 公一様 |
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株式会社バスク 制作技術センター
技術専任部 部長 川越 一成様 |
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株式会社バスク 制作技術センター
映像技術部 岡村 亮様 |
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