作田 真理子[商品企画]
━━ この秋になってさまざまなメーカーから「スマートスピーカー」が登場しています。これはどういったものなのでしょうか?
作田:スマートスピーカーは、ボイスアシスタント入りのワイヤレススピーカー。話しかけるだけで音楽を再生したり、天気やニュースなどの情報を確認したり、対応機器のコントロールを行うなど、さまざまなことができます。実は海外ではもう2〜3年ほど前から製品が発売されているのですが、すでに多くのユーザーから支持を集めているんですよ。
作田 真理子[商品企画]
━━ この秋になってさまざまなメーカーから「スマートスピーカー」が登場しています。これはどういったものなのでしょうか?
作田:スマートスピーカーは、ボイスアシスタント入りのワイヤレススピーカー。話しかけるだけで音楽を再生したり、天気やニュースなどの情報を確認したり、対応機器のコントロールを行うなど、さまざまなことができます。実は海外ではもう2〜3年ほど前から製品が発売されているのですが、すでに多くのユーザーから支持を集めているんですよ。
━━ 今回発表された『LF-S50G』では、ボイスアシスタントにGoogleの開発した「Google アシスタント」を採用しています。その理由を教えてください。
作田:Googleには検索エンジンとしての長い歴史と実績があり、それがGoogle アシスタントにおいても有効に作用しています。
また、ソニーは、ここ数年で発売したスピーカーやテレビで、同じGoogleの「Chromecast built-in」という機能を積極的に搭載してきました。Google アシスタントはこうした機器とも連携できるので、『LF-S50G』の音声を、それらの機器から出力したり、映像をテレビに表示させたりといった使い方ができます。こうしたGoogleのオープンプラットフォームを効率良く活用することで、お客様に高品位で新しい体験を提供できると考えました。
━━ そんな中、『LF-S50G』がどのような意図をもって企画されたのか、その背景を教えてください。
作田:先ほどもお話したよう、スマートスピーカーにはいろいろな機能があるのですが、この製品ではまず音楽を気軽に楽しめることを重視しました。これまでは、部屋で音楽を聞くときは、スマホを取りだし、ワイヤレススピーカーの電源を入れて接続し、聞きたい音楽を選んで……といった手間がかかっていたのですが、スマートスピーカーなら、一言「OK Google, 音楽を再生して」というだけでOK。この際、具体的に曲名を指定してもいいですし、「何か音楽をかけて」といったざっくりした指示でも構いません。
━━ 音楽を聞くハードルが下がりますね。
作田:はい。ものすごく簡単なので、これまであまり音楽をかけていなかったシーンでも、何か聞いてみようかという気になります。暮らしの中に音楽が溶け込んでいる、そんな豊かな生活を提案することが、この製品の狙いです。
━━ ちなみに『LF-S50G』ではどんな音楽を再生できるんですか?
作田:発売時点では「Google Play Music」と「Spotify」の、2大ストリーミング音楽サービスに対応しています。もちろん、ご自分のスマートフォンに保存されている楽曲データを再生することもできますよ。
※スマートフォンに保存されている楽曲データを再生する場合、スピーカーに話しかけて操作することはできません
━━ 『LF-S50G』がターゲットとするユーザー層を教えてください。
作田:スマートフォンで音楽を楽しんでいる人たちがターゲットだと思っています。ですので、より多くの方に、今までよりも快適に音楽を楽しんでいただけるよう、さまざまな工夫を凝らしました。高音質であることはもちろん、360°サウンドによって、部屋のどこにいても同じように音楽を楽しめるようにしたこと(音質については後述)、キッチンなどこれまではスピーカーの置けなかった場所でも使っていただけるよう防滴設計や撥水(はっすい)加工を施したこと、料理中の汚れた手でも操作できるようジェスチャーコントロールに対応したことなど、ですね。
━━ ジェスチャーコントロールではどんなことができるんですか?
作田:本体天面に設置されたセンサーの上に手をかざして左右にスワイプすると曲送り、上方向にスワイプすると再生/一時停止、円を描くように回すとボリューム調整が行えます。
また、下方向にスワイプすることで、Google アシスタントを起動することもできます。近くにいるのなら、「OK Google」と声をかけるよりもこちらの方が早いかも知れません。なお、ジェスチャーコントロールは、Google アシスタント搭載スマートスピーカーの標準機能ではなく、ソニーが独自に開発したものとなります。現在発売されているスマートスピーカーでこうした機能を搭載したものはありません。
━━ 音楽再生以外の機能についても聞かせてください。先ほどお話ししていた対応機器のコントロールとは、具体的にどんなことができるのでしょうか?
作田:「YouTubeで人気の動画を再生して」などと命令した際、対応するテレビがあれば、自動的に電源が付いて、映像が表示されます。AV機器以外では、フィリップスのスマートLED電球「Hue」を操作して、部屋を暗くしたり、オン・オフしたりといったことが可能です。
━━ それ以外に面白い機能はありますか?
作田:インフォメーション系の機能も便利ですよ。「天気を教えて」「最新のニュースを教えて」というように、直接知りたい情報を聞くこともできるのですが、朝、起床後に「おはよう」と声をかけると、その日の天気と主要なニュースを読み上げてくれます。ユニークなところでは「『おはよう』ってイタリア語でなんて言うの?」とか「サイコロを振って」などといった質問にも答えてくれますね。また、キッチンタイマーや目覚ましアラームなど、日常使いに便利な機能もあります。今後もGoogle アシスタントはどんどん機能が強化されていく予定。それに伴い、『LF-S50G』ももっと便利になっていきます。ご期待ください。
小俣 森生[デザイン]
━━ 『LF-S50G』のデザインコンセプトを教えてください。
小俣:『LF-S50G』はキッチンやリビングなどに常に置かれて使用されることを想定しているため、そういった室内空間に心地よく調和するオブジェクトとしてデザインをしています。また、全体的にラウンドした柔らかなフォルムを採用することで、対話する相手として、親近感を持てるようにしています。この形状には多くの人が過ごす場所に置かれた際に、うっかりぶつかってしまっても痛くなく、壊れにくいような印象を持たせる狙いもあります。
━━ カラーリングについても同じように“調和”を重視したのでしょうか?
小俣:はい。一般的なAV機器は真っ黒あるいは真っ白な製品が多いのですが、『LF-S50G』は同じ黒、白でも、少し異なるニュアンスを加えるようにしています。よく見ていただければ分かると思うのですが、「ホワイト」はオフホワイト(わずかに灰色がかった白)、「ブラック」はチャコールグレー(木炭のような濃い灰色)に調整しています。もう1つの「ブルー」もトレンドを汲みつつ、少しグレイッシュなトーンにして、家具やインテリアに馴染むようにしました。
━━ ほか、外観デザインでこだわった点、工夫した点はありますか?
小俣:『LF-S50G』は防滴対応を謳っているので、本体を覆っているファブリック素材はかなり吟味しています。実際に撥水加工が施されているのですが、生地自体も水が染みこみそうな印象の素材ではなく、少し張りのある質感のものを採用することで、撥水性を想起させるようにしています。ファブリック部分のパーツは脱着可能な仕様になっているので、万が一汚れてしまっても水洗いすることが出来ます。
また、本体下部に鏡面処理の施されたパーツが付いているのですが、これには、『LF-S50G』を置いた環境の色やテクスチャーを写し込んで、よりその空間にブレンドさせるという狙いがあります。機能的にも、キッチンなど、濡れた場所に置いた際に、水気や汚れを拭き取りやすいというメリットがあるんですよ。
※スピーカーグリルの洗浄は水洗いのみ(洗剤などは使用しないでください)。防滴仕様はスピーカーグリルを装着した状態を指します
より空間に馴染むように、鏡面仕上げのパーツが置いた環境の色やテクスチャーを写し出すようになっている
━━ 光の演出についてはいかがでしょうか?こちらも小俣さんが担当されたのですか?
小俣:配置などに関しては設計と一緒に詳細を詰めつつ、イルミネーションのイメージや、本体中央の7セグLEDを使った時計部分の形状などのデザインを担当しました。光の具体的な動きに関しては専任のデザイナーが担当しています。
━━ もう少し具体的に教えてください。
小俣:イルミネーションは、導光パーツなどを露出させず、ファブリック越しに透過させて光らせることで、光っていないときの佇まいがよりミニマルに見えるようにしています。時計部分については、形状とのバランスを考えて数字を縦積みにしています。スペース的には横に並べることもできたのですが、それだと斜め方向から見たときに端の数字が読めなくなってしまいますよね。なお、時計は置き場所に応じて光の強さを調整できるようにもなっていますし、必要がなければOFFにすることも出来ます。天面のサークル状LEDはジェスチャーコントロール時に明滅するのですが、それによって今、自分が操作しているということが分かるようになるほか、『LF-S50G』が何となくインテリジェントに見えるという効果もあります。
関 英木[設計]
━━ まずは『LF-S50G』の音質面でのアドバンテージを教えてください。
関:我々は音響メーカーですので、長年蓄積した経験とデータを持っています。特に、小型のアクティブスピーカーは得意分野の1つ。古くはカセットテープ版ウォークマン専用の外付け小型スピーカーなど、80年代前半から、小さくてもしっかり音楽を楽しめるものを作り続けてきました。それを踏まえた上で、今回特にこだわったのが、スピーカーから出る人の声が部屋のどこにいてもきちんと聞こえるということ。『LF-S50G』では、もちろん音楽を楽しむこともできるのですが、それに加えて、「今の日本の総理大臣はだれ?」「明日の天気を教えて」という質問に対して、音声で返答するという機能が用意されています。であれば、やはりそこに人がいるかのように聞こえてほしいですよね。人の声の温かみが再現できなければ意味がないと考えました。
━━ “人の声の温かみ”を再現するために、技術的にはどういうことをやっているのでしょうか?
関:まず、内蔵されているスピーカーを低域担当のサブウーファースピーカーユニットと、ボーカル帯域のメインである中高域担当のフルレンジスピーカーユニットの2つに、あえて分けています。やはり、このサイズのスピーカーユニットで低音から高音までをまんべんなく再生しようとすると、どこかに無理が出てきてしまいます。低音をしっかり出すには、振動板を大きく揺らさなければならないのですが、そこに人の声が乗ると、クリアな声を再現することが難しいのです。この本体サイズで満足のいくサイズの2つのスピーカーユニットを搭載するのはかなり難しかったのですが、ここは妥協せずに配置の工夫で実現しました。また、フルレンジスピーカーユニットは、中央のボイスコイルボビンに直接キャップを貼り付けることで、中高域のエネルギーを損失なく発することができるようにしています。
━━ そのほか、音質面で工夫したことはありますか?
関:本体上部に内蔵している、低音増幅用のバスレフダクトの中にダンプ材を仕込んでいます。これによって、バスレフ方式の量感豊かな低音と、密閉方式の自然な響きと伸びを両立させることができるのです。実はこれ、高級オーディオの世界では一般的なテクニックなんですよ。ただ、ダンプ材の材質や仕込む量をどうするかは、小型のシステムでは例がなく本当に悩みました。最後の最後、本当にギリギリのタイミングでベストな素材と充填(じゅうてん)位置、量を見つけることができましたので、その辺りのわずかな違いを感じていただけるとうれしいです。
ダンプ材が仕込まれた『ダンプドバスレフダクト』 (内部にある黒い素材が詰められているのが分かる。実物は透明ではない)
━━ そしてもう1つ、音響的な特長として360°サウンドを採用している理由についても教えてください。
関:この製品はオーディオルームに置かれるようなものではなく、リビングやキッチンなどの生活空間で使われることを想定しています。そうした場所では、ユーザーがスピーカーの正面に座ってくれるとは限りません。例えばアイランドキッチンのあるダイニングルームの場合、お母さんはキッチン側に、お父さんとお子さんはカウンターを挟んだ反対側に座っていたりしますよね。こういう時に、360°サウンドなら、スピーカーをどこに置いても、音を家族全員に同じ聞こえ方で届けることができるのです。
━━ なるほど。ちなみにこの360°サウンドは、技術的にはどういったことをやっているのでしょうか?
関:スピーカーには指向性といって、正面にエネルギーが集中するという特性があります。そこで、『LF-S50G』では、まずはフルレンジのスピーカーユニットを上向きに配置し、その正面に円錐(えんすい)形の反射板(ディフューザー)を置くことで、360°全方位に、均等に音を拡散させるということをやっています。
その上で、サブウーファースピーカーユニットについては、フルレンジスピーカーと対向させる形で下向きに配置。本体上部の空間で低域を増強させ、それを同じく反射板で全方位に放出しています。この2つのスピーカーユニットの間隔は0.5mm単位で最適値を検証。相互に音が干渉しあわないベストな位置取りを設定し、低域から高域まできれいに音が拡がっていくようにしました。
━━ 非オーディオメーカーの製品が中心となっているスマートスピーカーの世界では、ここまで音質や聞こえ方にこだわった製品は珍しいのではありませんか?
関:そうですね。スピーカー正面とそれ以外で音の聞こえ方が違ってしまったり、同じく360°スピーカーを謳っていても、ディフューザーを内蔵していない(音を下向きに放出し、床面で反射・拡散する)ため、ちょっと本体から離れると音が聞こえにくくなってしまったり、床材によって音質が変わってしまうといったものが多い中、『LF-S50G』は音質バランスだけでなく、安定してどこでも聞こえ方が変わらない、という点でも、音響メーカー・ソニーとしてのこだわりを見せられたのかなと思っています。