株式会社アシックス様
「ANIMA SANA IN CORPORE SANO(健全な身体に健全な精神があれかし)」の創業哲学に基づいた技術革新や製品・サービスづくりに努めてきたアシックス。健やかなココロとカラダを育むためには、健やかな地球環境も欠かせないと考え、「VISION2030」では環境に配慮したサステナブルな手法で、製品やサービスを開発・提供することも唱っています。その姿勢は、ブランド発信の場でも同じ。今回、新商品の販売促進ツールに空間再現ディスプレイを利用し、さらなる魅力の伝達とサンプルの廃棄削減につなげました。
*掲載内容は2024年3月時点のものです。展示は2024年4月11日まで。また、展示内容は予告なく変更する場合があります。
私の所属部門ではシューズの開発・設計をしており、2020年にはデジタル技術チームを立ち上げ、デジタル空間でシューズをリアリスティックに表現、再現するデジタルサンプルの業務を開始しました。最大の目的は、サステナビリティです。3D技術を使ってシューズを立体画像化することで、実物のサンプル製作数を減らそうと思ったわけです。この3Dモデルを開発だけでなく、営業・販売でも活用する機会はないかと考えていたある日、ソニー・ミュージックソリューションズから空間再現ディスプレイ(以下、SRD)のご提案がありました。そのデモを見て興味をもったことから、3Dモデルを活用した施策を一緒に検討いただくことになりました。
3Dモデルの活用を模索する中、従来のSRD(ELF-SR1)と比べてより大画面の「ELF-SR2(以下、SR2)」が登場。シューズを実物大で表示でき、裸眼で本当にリアルな3Dモデルが見られることに感動して、これなら3Dモデルの新たな活用方法になると考えたため導入を決めました。
具体的に、どのような機会でSRDを利用するのか。そのアイデアとして浮かんだのが、ショールームやPRの場でシューズの3Dモデルを取引先やユーザーに見ていただくことでした。最初に利用したのがアシックスジャパン本社での展示会で、国内で取り扱う全シューズの3Dモデルを用意。シューズを分解表示しながら内部構造を解説し、取引先の理解を高めました。開発業務で制作した3Dデータを、別の目的にうまく活用できたわけです。
今回はアシックス原宿フラッグシップとアシックスラン東京丸の内の2店舗で、ランニングシューズ「METASPEED™」シリーズの最新モデルをPRしたいと考えておりSR2を利用しました。来店客へ新商品の魅力を伝えるためにシューズのサンプルを用意するのですが、やはり実物だと内部構造まではわかりません。分解したパーツを置いたりすることもありますが、管理面などでのハードルが高いことがあります。当展示ではストライド型とピッチ型という各走法に適したシューズを3Dモデルでお見せし、重要な機能を内部構造で比較したり、パーツ単体で見せたりします。
そして展示方法としては、これまで45°に傾けた利用が推奨されてきたSRDを、垂直*に立てて設置したことがポイントです。斜め置きですと傾きの分だけ奥行が求められますが、垂直ならスペース効率がよく、什器もスタイリッシュにできました。テストして見たところ画像の立体感も遜色なく、画面の見やすさや画像の操作性も良いと感じました。
*垂直設置での利用に対応したSDKの公式リリースは2024年3月25日から。本件はアシックス様とソニー・ミュージックソリューションズのアイデアで独自に実装。
また3Dモデルの閲覧はマウス操作などではなく、SRD対応アプリも開発して、Leap Motionというハンドセンサーを利用した手振りでの操作を可能にしました。操作性も抜群によく、シューズを手で回しながら眺めるような感覚を実現しています。今回、ソニー・ミュージックソリューションズには展示のプランニング全体を推進いただき、什器の制作やUI・UX開発についても一緒に相談しながら進められました。ソニーのみなさんにはアドバイスやサポートをいただき感謝しております。
手の動きに合わせて画面上の3Dモデルの表示角度が変化
3Dモデルの活用が有効とはいえ、単に3Dモデルを見せるだけなら通常の2Dディスプレイでも可能です。しかし、2Dディスプレイでは商品のもつ魅力を伝え切れない、それがSRDを利用する意義だと考えます。SR2は微妙なコントラスト調整もできる4Kのディスプレイなので、シューズの形状や素材感などのディテールがリアルに再現されます。シューズ表面の光沢感なども、よくわかるのではないでしょうか。SRDを2Dモード表示にしてみたこともありますが、3D表示とは全く違う印象で驚きました。
美しい映像のリアルな3Dモデルを見せられることで、はじめて実物サンプルの代替となり得ます。これまで展示会やショールームなどでは、全カラーバリエーションの実物サンプルを準備して来場者へお見せし、最終的には廃棄せざるを得ませんでした。しかし今後は省スペースでの全モデル展示やサンプルの製作数を減らし、サステナビリティの推進という本来の目的にもさらに寄与できると考えています。
今回、店舗で公開したランニングシューズ「METASPEED™ SKY PARIS」の3Dモデル
今後、海外でもSRDを積極的に利用していきたいと思っており、中国の展示会で利用を予定しています。業者だけでなく、ユーザーに向けたイベントでもおもしろい活用ができないか検討しているところです。店舗やショールームでも有効活用できるのではないでしょうか。
そして、将来的には開発業務での活用も考えています。まずは初期デザインを関係者にレビューする際、よりリアルで精細な3Dモデルを見せられれば、フィードバックの精度が上がると期待できます。また、工程の短縮も期待しています。例えば現在、開発を通してサンプルを2~3回ほど製作するのですが、1回目はSRDを利用することで実物のサンプル製作を1回スキップできるかもしれません。サステナビリティへの貢献はもちろん、製作に1カ月ほどかかっている時間も大幅に短縮でき、その分デザインをブラッシュアップする時間が増えれば、大きなメリットになるはずです。
空間再現ディスプレイ ELF-SR2は、ソニー独自の視線認識技術により、裸眼のままでもクリアで色鮮やかな立体視を再現するディスプレイです。あたかもそこに実物が存在するかのような画像描写で、プロダクトのデザインにおけるイメージの制作や共有、商品プロモーションにおけるデザイン・機能訴求といった用途で、新たな可能性をもたらします。
空間再現ディスプレイ
ELF-SR2(27 型)
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