スイッチャー

株式会社福岡放送 様

2020年3月掲載

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九州初の4K HDR中継車。システム規模を大幅拡大も、空間の上手な活用で従来並の駐車サイズを実現

株式会社福岡放送様は、野球やサッカーなどのスポーツ中継を主に担う、12G-SDIインターフェースによる4K HDR制作に対応した、同社最大の「101中継車」を新規に導入され、2019年5月から運用を開始されました。

  • 谷口 浩司様

    技術局 制作技術部
    副部長
    谷口 浩司様

  • 川邉 淳一様

    技術局 制作技術部
    副部長
    川邉 淳一様

将来を見据えて4K HDR対応に

今回更新を行った101中継車は、当社の保有する4台の映像中継車の中で最も大型の中継車です。野球やサッカーなどのスポーツ中継を想定した中継車になります。旧101中継車は、導入後16年が経過していました。更新にあたり、検討を重ねる中で「これから車を作るなら4Kに対応するべきじゃないか」という方向性になり、コンセプトの目玉になりました。

規模拡大と同時にコンパクトに柔軟に

今回の更新では、野球やサッカーなどのスポーツ中継を、スローを含めてすべて1台の中で完結できるようにすること。また音声はサラウンドに対応できるようにすることもミッションでした。車両は、現場の都合やカメラ収納スペースなどの観点から、拡幅しない設計にしました。ゴルフ中継など、音声規模が小さい現場では、音声中継車を出さずに運用できるように、車内にミキサーも設置できるようなとても柔軟な設計にしています。

さらにスイッチャーのタッチパネルやスロー卓のインカムを壁面埋め込みにしたり、天吊りするなど、空間と使い勝手を両立する工夫も積み重ねました。内装にも吸音材を用いるなど、制作室の静粛性にもこだわっています。

スイッチャー操作卓。メニューパネルを側面壁に埋め込むなどの工夫でスペースを確保

ミキサーなどを設置できるスペースに特注設計の架台

制作エリアとVEエリアを仕切る遮音カーテンの効果は絶大

インターフェースは12G-SDI

カメラはマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300を採用。旧101では8台常設・最大12台でしたが、今回は10台常設・最大16台に規模を拡大しました。スイッチャーはマルチフォーマットプロダクションスイッチャーXVS-9000を導入しました。収録用にはXDCAM Station XDS-PD2000とマルチポートAVストレージユニット PWS-4500を備えています。PWS-4500は収録だけでなく4Kでのスローも想定しています。HD用にはさらに別のスローサーバーも搭載しています。HDR・SDRサイマル制作には“SR Live for HDR”ワークフローに対応するためのHDRプロダクションコンバーターユニットHDRC-4000も搭載し、マスターモニターには、30型4K有機ELマスターモニターBVM-X300を用意しています。BVM-X300については、背面機器のメンテナンスを行いやすくするためと、4Kモニターを他の用途でも有効活用できるように、専用金具でラック前面に吊る構造としました。

インターフェースは4Kでも1本で送ることができ、扱い慣れている同軸の12G-SDIを選びました。3Gに対して12Gでは4Kの23.98Pや29.97Pができませんが、HDがメインの運用となるため、割り切りました。

“SR Live for HDR”ワークフローに対応するためのHDRC-4000

実績と先進性と提案力でソニーに決定

4K中継車に関してはソニーが最も実績が豊富で、特にHDRとのサイマル制作ワークフローの面でも一番進んでいたのがソニーでした。一方で、検討にあたっては他社にもご提案をお願いしました。しかし、4K HDR・12G-SDIで提案可能なメーカーは他になく、ソニーになりました。

ちなみに当社のスタジオサブではすべてソニーのスイッチャーを使っています。またカメラについてはいままで他社製品が中心でしたが、レンタル等でソニーのカメラも使っていましたので、個別の機材については親しんでいました。

見てわかる画質アップを実感

更新後に運用を開始して真っ先に実感をしたのは、画質のアップでした。HD制作においても、画質は見違えるほど良くなりました。中継車内のモニターのみならず、音声中継車に置いている民生用液晶テレビで見てもはっきりと違いがわかるほどです。

4Kサイマルに向け自社番組で予行も

新101は、当初より系列外も含めた積極的な外部貸出も見込んで製作した車両です。九州地域初の4K HDR中継車ということで、九州放送機器展にも出展して積極的にアピールしました。そのおかげか、既に外部貸出の実績もできました。

4K HDRはこれからノウハウの蓄積のため、4K HDRのサイマルを想定したワークフローでの自社番組中継を行ってみることも考えています。来春には局舎内のスタジオサブも4K対応になりますので、4Kにも積極的に取り組んでいきたいと思っています。

主な導入機器
4K HDR 中継車

マルチフォーマットプロダクションスイッチャー「XVS-9000」
マルチフォーマットポータブルカメラ「HDC-4300」
HDRプロダクションコンバーターユニット「HDRC-4000」
マルチポートAVストレージユニット「PWS-4500」
XDCAM Station「XDS-PD2000」
30型4K有機ELマスターモニター「BVM-X300」