ハイレゾの良さを最大限に引き出すため設計手法自体をゼロから見直したSS-HA1/SS-HA3に対し、SS-HW1は従来の設計手法を発展させる形でハイレゾを楽しめるように開発しました。SS-HA1/SS-HA3と目指す方向は同じでスタートしましたが、アルミとウッドではまったく同じという訳にはいきません。そこで、ウッドスピーカーならではの魅力、木の良さを生かすという方向性で、響きの美しさ、やわらかさの感じられるスピーカーを目指して設計を進めました。
SS-HA1/SS-HA3は従来のスピーカーの設計思想とは異なります。あれをそのまま木でやるのは非常に困難なため、従来のスピーカーの設計思想にSS-HA1/SS-HA3で得たノウハウをなるべく取りこもうという方針で進めました。
具体的にはSS-HA1の試作品を持ってきて、バッフルのカットを埋めるところからはじめ、どこが重要かと検討を重ねました。バッフルを大胆にカットできれば理想的なのですが、トゥイーターパネルを凸にした上でわずか数ミリですがその端面を45°にカットすることでもかなりの効果がある事が分かりました。そこで、正面スーパートゥイーターと天面スーパートゥイーターの間の面を含めてトゥイーターパネル外周に45°のカットを採用しました。また、ユニットの配置と開口部の形状はSS-HA1を踏襲しています。試聴すると細かいところでも影響が出るのがわかりました。
SS-HW1にはチェリー材の1枚板を突板に使用し、仕上げにピアノ塗装を施して、高級感のある外観と共に、ピアノ塗装により経年変化や気候変化に左右されない美しい響きを実現しています。ウッドキャビネット特有の木の響をコントロールすることにより、音にふわっとしたやわらかさと艶を持たせました。さらに、響きをコントロールするために、キャビネット内部の補強は試作を何度も繰り返し検討しました。
3種類のスピーカーユニットについては、見た目はSS-HA1と同じようなユニットですが、実はそれぞれまったく違うものです。例えば13cmウーファーは磁気回路だけではなく、振動板材料の組成やエッジ材質を変え、SS-HW1の特長にあったユニットに仕上げています。同じマイカを使用していますが、製造プロセスを若干変更しています。キャビネットの素材や容積などの違いから、SS-HW1に合わせて開発しました。
ハイレゾ再生のためにセパレーテッドチャンバー方式(=トゥイーターとネットワーク基板を、ウーファーと別のキャビネットにする)を採用しました。ネットワーク基板やトゥイーターは振動すると音を濁らせてしまいます。そのためトゥイーターや基板を、ウーファーチャンバーとは仕切られた別のチャンバーに入れ、ウーファーからの音圧や振動を軽減することで音をクリアにし、ハイレゾ音源の繊細な表現を再現します。この方式により約10%、ウーファーの容積は犠牲になってしまいましたが、豊かな低音を得るためにスピーカーユニットは独自のものにして強化してあります。
また、パーツ類も音質重視のものを使用しています。フィルムコンデンサーは高級機と同等のものですし、トゥイーターは空芯コイルを使用しています。また、吸音材についてもSS-HA1/HA3と同様のものも検討しましたが、キャビネットの形状や素材の違いから、最終的にはウッドキャビネットに最適な素材を採用して入念に調整の上、十分に入れてあります。さらに、セパレーテッドチャンバーキャビネット部分にも共振を抑えるために吸音材を入れるなど、細部に渡りこだわりました。
いろいろなジャンルを聞いてチューニングしています。ピアノ塗装仕上げということもあるかもしれませんが、特にピアノの響きはとても良いと思います。
SS-HW1は従来のオーディオの楽しみの延長でハイレゾを存分に楽しんでいただけるスピーカーだと思います。機会があれば、SS-HA1とSS-HW1の違いを聴いてもらっても面白いと思います。
やっぱりインテリアを考えると、リビングにモダンな家具をそろえているような場合はHAシリーズが合うと思います。しかし、落ち着いた家具の部屋で、いままでのスタイルを崩したくないといった場合はウッドキャビネットのSS-HW1が良く合うのではないでしょうか。