contents1 高感度高速シャッター
高感度化は、デジタルカメラ開発の「永遠のテーマ」

関根 義之CCDの高画素化は、当初の数十万画素から、100万、200万、300万、500万…と、止まるところを知らないが、それにつれて一画素ごとのセルのサイズは小さくなり、取り込める光の量も減る(=感度は低下する)。したがって、デジタルスチルカメラの画づくりを専門とするシステム技術部門の関根 義之にとって、光をより効率的に集める工夫や、信号を増幅することなどによって感度の低下を補うことは、以前からのテーマだった。

 

T9ではシャッター速度を速めるためにさらなる高感度化を進め、被写体のブレを最小限に抑えることを可能にした。感度を表す単位は、世界標準化機構という団体の定めた『ISO』。2005年春に発売したDSC-T7では、『ISO64」から『ISO400』相当まで選ぶことができる。それに対しT9では、さらなる信号の増幅によって『ISO640』相当までの高感度化を可能にした。

【高感度化の効果(暗所での撮影)】
背景も人物もきれいに写す
少ない光量でも明るく写せる
増幅してもノイズが目立たないレベルへもっていく

「単に信号を増幅すればよいということではありません」と関根は言う。「増幅すると、もともと信号に混入していたノイズも一緒に増幅させてしまいます。ノイズが多い画は、細やかさに欠けるざらついた感じになってしまったり、色むらが出てしまったりします。感度を上げて被写体ブレを防いでも、ノイズの多い画では使いものになりません。高感度化を推し進めながらもノイズをいかに抑えて画の艶を保つかは、画づくりにこだわる我々にとって、非常に重要なポイントでした。」

 

「ですから、まずは回路全体からでるノイズを根本的に減らすことに取り掛かりました。デジタルスチルカメラの中には、CCD、電源、さらに回路そのものから出るノイズが蔓延しています。例えば、ISO100に対応していればよい時代には目立たなかったノイズが、ISO640では目に付くようになります。これを防ぐために、電源、基板、回路などすべての設計を見直しました。地味で手間もかかる作業ですが、これが効くのです。」(関根)

ノイズを「生」の段階でカットする新機能
もう一つの対策として、新開発の「クリアRAW NR(ノイズリダクション)」を搭載した。撮影した画像データを光の3原色である「R(Red)」、「G(Green)」、「B(Blue)」のオリジナルデータの段階でノイズを適切に処理することにより、輝度(明るさ)と色の両方でノイズを効果的に低減した。さらに、画質とノイズの全体的なバランスに注意しながら、その時々のISO感度に応じて最適な画づくりを入念に行った。
その結果、従来機種(DSC-T3)との比較で約6割ものノイズを低減することができ、低照度でも高速シャッターでの撮影が可能となった。
光学式手ブレ補正と高感度の「2枚看板」で、T9は昼でも夜でもあらゆるシーンのブレを抑えてくれるのである。
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