Lシリーズ
外面にも内部にも、幾多の試行錯誤を重ねて完成したスマートなフォルム。すべては、インテリアになじむ美しい立ち姿のために。
360度美しいフォルムを実現
――パイプを使用したりと、スタンドの形状が旧Lシリーズから大きく変わりましたね。
湯川:
新Lシリーズはテレビ機能に重点が置かれているので、テレビが見やすい「0度の画面角度」を実現する必要がありました。それで、これまで続けていたフォトフレームのような「人」型のヒンジスタイルをやめました。
スタンド形式でも他にはない個性ある姿にしようとデザイナーが出してくれたアイデアが、φ20ミリの鉄パイプを曲げて、そこにアルミダイキャストの支柱をくっつけるという非常にシンプルかつ高級感のあるデザインです。あくまでも画面が主役の、主張しすぎないスタイルを表現できたと思っています。
――薄さや背面のすっきりした美しさも目を引きます。これならインテリアとの親和性も高そうです。
湯川:
今回のモデルはLED液晶をはじめ、ノートアーキというCPUとチップセットの構成を採用したので「これは絶対に薄型化のチャンスだな」と思いました。加えて、排気口・吸気口やメモリーの蓋などが整然と並んだ「裏も美しいデザインにしよう!」というのが、デザイナーとメカ設計の共通のテーマだったのです。
蓋について言えば、メモリーの蓋があってHDDの蓋があって・・・というあちこちつぎはぎだらけの背面は美しくありません。それを避けるために新Lシリーズでは、スタンドと一体化した真ん中の蓋を取り外せば壁掛けもできるし、メモリーもHDDもオプションの光学式ドライブも交換できるレイアウトにしています。
また、旧Lシリーズでは無塗装光沢の部品を前面パネルだけに使っていたのですが、これを背面にも適用しました。鏡のように磨きこまれた金型から作られたプラスチックの成型部品は自信作なので、ぜひ裏も見てほしいです(笑)。
野村:
横から見れば薄さが際立ちますし、後ろから見てもらうと余計なネジ穴が全くない360度美しいデザインです。机のど真ん中に置いてもらってもキレイで、壁掛けにしてもスタイリッシュですよ。
谷口:
電気担当としては、その「真ん中の蓋を取り外せば全部交換できる」というミッションは難題でした。私の予定としては別の場所にメモリーを置くつもりだったのですが、メカ設計からの強い要望がありまして(笑)。それで最初のレイアウトをぐるりと回転させたりして改めて内部の配置を考えたのですが、最終的にはまったく違う形になりました。非常に苦心したところなので、私もぜひ裏も見てほしいです(笑)。
――この薄さの中に、スピーカーをレイアウトするのは大変だったのではないでしょうか。
湯川:
本体で特に薄く見えるのは上部の尾根稜線のところで、歴代オールインワンモデルの中で最もスリムです。このスタイリッシュなフォルムを実現しながら、十分なボックス容量をもつスピーカーを収めるために下尾根稜線とのつながりを工夫しました。実際は、本体の底の部分を上部よりも若干ゆったりさせているのですが、デザイン上は三次元曲面を利用して違和感なく見えるように仕上がっています。
谷口:
実は、最終に近いスピーカーの試作品に対して「豊かな低音が出るように、もっとボックス容量をアップしてほしい」というオーダーを受けました。でも、本体の外形など他のパーツがすでにフィックスされていたこともあって、ほとんど自由になるスペースはなかったのです。そこで少しでもボックス容量を稼ぐために、オーディオエンジニアやメカ設計と協力しながら、私はマザーボードをギリギリまで削ったりして調整しました。そうやって「薄さ」と「いい音」の両立が実現できたというわけです。
黒崎:
「いい音」を実現するために、ソフトウェアでは「S-FORCE Front Surround 3D」という新しいバーチャルサラウンド技術を採用しています。後方のサラウンドスピーカーを仮想的に作って、より立体的に聴いてもらえるのでブルーレイの映画など大迫力で楽しめますよ。PCに搭載されたのは今回が初めてですが、長い間ソニーで開発してきてブラッシュアップを重ねてきた技術なので私にとっても思い入れが強いです。
リビングにもマッチする「白」を追求
――新Lシリーズのテーマである「白」を実現するために、前面ガラスの役割は大きかったのではないでしょうか。
湯川:
私は、光学式タッチパネルを初めて採用した旧Lシリーズも担当していました。そのときは、液晶画面の前面に同じサイズのガラスを貼り付けるという仕様でした。しかし今回は「ガラスを生かしたデザイン」を大事にするというコンセプトで、大判ガラスにして透明な素材感を強調したり、ガラス裏印刷の色を見せるなどの対応を進めていました。
そこへ商品企画からは「リビングにもマッチして女性にも気に入ってもらえるような白モデルを作ってほしい」とオーダーされたわけです。ガラス印刷の「白」対応は、最初はもっと簡単にできるだろうと踏んでいたのですが、実際はぜんぜんうまくいかずにだいぶ試行錯誤しました。
――「白いガラス」を作るのに苦労したわけですね。
湯川:
ガラスには、もともと緑色の材料色がついています。オリジナルカラーは緑っぽいというわけです。それを消して「白いガラス」を実現するために、実は5回も印刷しています。納得いくまで何度も何度もデザイナーと一緒にトライして、オーダー通りの「白モデル」が完成したときは感慨もひとしおでした。
――「白」へのこだわりは周辺機器にも表れていますね。
野村:
そうですね。キーボードやマウス、あとリモコンも。今回は「全部白」という私からのオーダーを実現してくれて、インテリアにすっと溶けこむモデルになったと思います。私も家で使うのが楽しみです(笑)。
オールインワンだからこそ求められる拡張性
――HDMI入力/出力をはじめ豊富な端子を装備していますが、どういった使用シーンを想定したのでしょうか。
小竹:
HDMI出力デバイスは世の中で主流になってきたので、全モデルに入力端子を標準搭載しました。HDMI出力については、大画面テレビで見たり見せたりするときに便利です。デイトレーダーの方など、マルチディスプレイを使用する方にも喜ばれると思います。
野村:
AVアンプにつなげてさらにいい音で楽しみたいときにも、HDMI出力は有効だと思います。あとビデオ入力も搭載しているのですが、スペースやコストなどの問題もあり皆でだいぶ議論しました。やっぱりオールインワンモデルなら「いろいろな機器につながる」ことが重要ですよね。それは実際にこれ1台で生活している私の実感でもあり、お客さまの望まれていることだと考えていますので最後は押し切りました。
谷口:
旧Lシリーズでは、上位モデルとVAIOオーナーメードで選択した場合の搭載だったのでHDMI入力は別基板でした。今回から全機種搭載ということで、マザーボードに組み込んでいます。
さきほども「真ん中の蓋」のところで話しましたが、商品企画やメカ設計からの要望がかなりきつく、しわ寄せがすべて電気担当のところにきて(笑)。とくにHDMI入力は回路規模が大きいので調整に苦労しました。
私はこれまでノートPCの電気を手がけてきまして、新Lシリーズで初めてオールインワンモデルの担当になりました。当初からその多機能ぶりに面食らっていたのですが、さらにいろいろな人がアレ付けろコレ付けろと迫ってきまして、かなり追いつめられました(笑)。
湯川:
1台の中にディスプレイの基板もテレビの基板もPCの基板も入れなければなりませんからね。しかも究極にコンパクトに。電気担当は3倍働いたと思います(笑)。
――用途が多岐にわたるオールインワンモデルは、性能・スペックについても期待が大きいと思います。
小竹:
もちろん、ハイスペックです。クアッドコアCPUや高性能グラフィックアクセラレーターをはじめ、メモリーの拡張幅も広いですし、HDDも2テラまで対応しています。VAIOオーナーメードモデルで、幅広くいろいろな組み合わせを楽しんでもらえると思います。
野村:
「テレパソ」としてもハイスペックです。3波(地上・BS・110度CSデジタル放送)対応のデジタルチューナーを2基、「スグつくTV」用を合わせれば地デジチューナーは合計3基まで搭載できます。つまり「スグつくTV」を見ながら2つの裏番組を同時録画できるので、見たい番組が重なっても大丈夫です。
小竹:
はじめにお話ししたように、すべては「お客さまの1日の生活時間の中で、Lシリーズに触れてもらう時間を増やす」というコンセプトにつながっています。
仮に1日24時間の割り振りを睡眠7時間、通勤時間含めた仕事12時間とすると残りの自由時間は「5時間」となります。この自由時間にどれだけ使っていただけるかということになりますが、これまでは仕事から帰宅して録りためたテレビ番組を視聴。おやすみになる前にメールやインターネットで計1〜1.5時間。これが自宅でPCを使うおおよその時間ではないでしょうか。
今回の新Lシリーズなら「スグつくTV」や「Quick Web Access」、「Edge Access」など便利な機能が増えたので、テレビもWebも見たいときにすぐ、快適に見られます。しかもハイスペックですから、タッチ操作と相まってサクサク使えます。私は5時間のうち4時間くらいは触れていただけるのではないかと思っています。
そうしてお客さまの日常に受け入れていただける、リビングで親しまれるPCになってくれれば、開発者としてこれほどうれしいことはありません。