ーはじめに、ワイヤレスポータブルスピーカー Xシリーズ誕生の背景 やコンセプトを教えてください。
岡:
最近は、スマートフォンなどを音楽プレーヤーとして利用される方が増えてきています。でも、家で聴くときにドックスピーカーにセットしてしまうと、ネットやアプリを楽しめないという不便がありますよね。ソニーでは、ワイヤレスで音楽を聴きながら手もとでスマートフォンなどを操作するユースケースが主流となることを想定して「音楽プレーヤーの環境変化に合わせてワイヤレススピーカーのラインアップを拡充させていこう」という方針のもと、SRS-BTV5やSRS-BTM8などをリリースしてきました。
その流れを受けて開発した今回のXシリーズ、SRS-BTX500とSRS-BTX300は高音質とポータビリティーの高い次元での融合をコンセプトにしたスピーカーです。ワイヤレスの利便性だけでなく、さらに一歩進めて「よりいい音を持ち運べる」という価値をお客さまに提供できる我々の自信作です。
ーBTX500とBTX 300、2つのモデルの大きな違いは何ですか。
岡: ひとつはポータビリティーの幅ですね。BTX500は家の中で、例えばリビングから寝室への移動、テラスなどへの持ち運びが基本になると思います。BTX 300の方はより小型・軽量なので、出張や旅行など家の外に持ち出すという使い方まで想定しています。それと音質のレベル。どちらもいい音なのはもちろんですが、BTX500はよりハイグレードな高音質を実現しました。
ー「音の良さを追求しつつポータビリティーも両立させる」という、 相反する課題をクリアするのは大変だったと思います。
関:
商品企画やデザイナーがポータビリティーのためにできるだけ小さく・薄くしたいというのはもちろん理解できるのですが・・・正直言って無理難題でした(笑)。音響設計の立場から言いますと、小型化と高音質の両立はひじょうに難しいのです。スピーカーユニットとボックス容量の設計に大きな制約が生じますので。
今回のシビアな課題をクリアするためのポイントのひとつは、スリム化を可能にしながら存在感のある低音を実現するためにパッシブラジエーターを選択したことです。
また、BTX500については「磁性流体」という素材をフルレンジスピーカーユニットに採用し、さらにサブウーファーを加えることでさらなる高音質を追求しました。
及川:
ハードウェアチームやデザイナーの頭を悩ませたのは「持てるサイズ」の具現化です。厚さ(奥行)は70mmぐらいが限度っていう認識が皆の念頭にあって、その限られたスペースの中で高音質確保に必要な容積をキープしつつ、基板や充電バッテリーなど数多くのユニットを割り当てていく必要があります。
BTX500もBTX300もさまざまな形状やサイズの試作品を作って、そのたびに音を鳴らして音響設計と相談しながら軌道修正の繰り返し・・・。音質とポータビリティーのバランスを調整しながら、果てしない試行錯誤の末にたどりついたのが目の前にあるシンプル・イズ・ベストな筐体です。
関: 面白いのは、やればやるほどだんだんスピーカーとして理想的な形、しっかり前を向いた姿に落ち着いてきてシンプル&コンパクトになっていったことです。レイアウトをとことん詰めていくと、あまり奇をてらったデザインにはならないんですね。