ー充電バッテリー内蔵でスタミナもたっぷりですね。
関:
実は商品企画からの当初の注文は“4時間以上”でした。でも、もっと長くしたいというスタッフみんなの思いもあり、BTX500の連続再生時間は約6時間、BTX300は約8時間と結局倍近くになりました。
両モデルとも高出力のスピーカーなので、どんなに低消費のCPUやシステムを使ってもそれだけ電力がかかり大容量の電池が必要になるわけですが、できるだけ省スペースになるよう高密度のリチウムイオン充電池を採用しました。さきほどの話にもありましたが、磁性流体スピーカーのメリットで消費電力を下げられるのも大きいですね。
ーおすそわけ充電はどのような使用シーンを想定していますか。
山近: スマートフォンは使用方法によっては1日もたない場合がありますよね。USBケーブルで接続してモバイルバッテリーのようにXシリーズの充電バッテリーから充電できるこの機能は、旅行や出張の際の緊急時に役立つと思います。
ーワンタッチでBluetooth接続できる「NFC」対応もうれしいですね。
岡: Bluetooth接続のやり方がわかりにくいという声が多いので、それがワンタッチで済んでしまう簡単さは大きな魅力だと思います。お客さまにワイヤレススピーカーをより身近に感じていただけますし。
山近: 実装にあたっては、ユーザーがタッチする角度をいろいろとシミュレーションして、読み取りやすい位置にNFCチップを内蔵しています。
ー“持ち運べる”デザインについて、工夫したポイントを教えてください。
及川: 基本的なことですが角にRをつけたラウンド形状にしたり、背面には指がかかるように窪みをつけたりして、持ちやすさに配慮したデザインになっています。窪みを深くしすぎると背面を周りこむ音に影響を与えてしまうので、持ちやすさと音の良さの絶妙なバランスを探り当てながら調整しました。
内山:
BTX500のスタンドはダイカストを採用しているので、薄くスタイリッシュなフォルムながらも確かな剛性を確保しています。ここで振動をしっかり受け止めることで音質にも寄与する、まさに縁の下の力持ちですね。
普段はあまり目にふれないところですし、黒く塗装しているので金属には見えないかもしれませんが、スタンドって持ち運んで設置するたびに触れるところですから、そのたびに質感の良さを感じていただけるようこだわって作っています。
ー背面をぐるりと包みこむ塗装にも見えない秘密があるそうですね。
内山:
たびたび持つ製品なのでここも触感にはこだわっていて、ゴムのような触り心地だけどそれよりもシルキーなすべすべ感が出る特別な塗料を使っています。
普通のゴム風塗装だと、やっぱりゴムなので消しゴムのように汚れを取りこんでしまうデメリットもありまして・・・たとえばちょっとジーンズにこすっただけで色が付いちゃうので白モデルって作れないのです。でもこの新触感塗装なら汚れもつきにくいので、BTX300にはホワイトもラインアップできました。
ースピーカーにはめずらしくキャリングケースが付いていますね。
岡: キャリングケースを同梱することでポータビリティーのイメージが伝わりやすいでしょうし、もちろん持ち運ぶときにはキズを気にしないですみますからね。
及川: デザイン案を何パターンも作って吟味したり、横幅がある製品なので入れやすく取り出しやすいように伸縮性が高い素材を使ったり。最高峰のXシリーズですから、所有する喜びも感じていただけるようケースにも相当こだわりました。
ーお話を伺っていると、細部まで徹底的にこだわったスピーカーだというのがよくわかります。
関: 最後にひとつ、高音質への強い思い入れが極まったエピソードというか、音質を追求する上で今回特にみんなに呆れられたのが・・・BTX500のリアキャビネットのサイドの稜線を最後の最後で“0.3ミリ”削ってなだらかにしたことです。金型を作り直すという無茶なお願いをしたわけですが、音の回りこみ方がそこで変わって音質に響いてくるので妥協はできませんでした。そういったギリギリの追い込みもあって、Xシリーズは本当に自分が欲しい、自宅で使いたいと思えるスピーカーに仕上げられました。
山近: 実は音響設計の関からのさまざまな要求を組み合わせていっても、当初は音質向上につながっていないような印象でした。だから、特にBTX500は「このままで大丈夫かな」と正直なところドキドキしていました(笑)。ところが最終段階になって、パズルがぴったりはまったみたいに音が抜群に良くなったのです。
関: そこに至るまで、わたしたち音響設計は冷たい目で見られながら耐えるしかないんです(笑)
山近: 突然何が起きたのかと、本当にびっくりしたことを覚えています。ぜひお客さまにも、Xシリーズの驚きの音質を好きな場所に持ち運んで味わっていただければと思います。