ーBTX500の高音質実現のキーポイントになった磁性流体スピーカーについて教えてください。
関: 磁性流体そのものは、磁性を帯びる性質をもったオイルみたいなものです。ソニーには、スピーカーユニット用にこの素材を最適にチューンアップし、開発するチームがあるのが強みですね。
ー従来のスピーカーに比べて、どのようなメリットが得られるのでしょう。
岡:
当然ですが、スピーカーユニットは再生中に激しく揺れ動きます。そのままだと周りにガリガリ当たったり飛び出してしまったりするので、ダンパーという部品をサスペンションにして制御するのが一般的です。でも、実際にはダンパーが無いほうが動きがスムーズで、中高域のレスポンスが良くなるのですね。そのダンパーに置き換わるのが磁性流体というわけです。
しっかりとサスペンションとしての役割を果たしながらもスピーカーの動きを邪魔しないので、ボーカルやアコースティックサウンドなどの中高域をクリアに鳴らせるのがいちばんの魅力です。
ー音質以外の長所についても聞かせてください。
関: 音圧感度が高いのも特長です。つまり同じ大きさの音を出すのに、ダンパーを付けたスピーカーよりも入力レベルを下げることができるので、そのぶん消費電力をセーブできるというメリットがあります。また、ダンパーがないぶんスリムサイズになりますから筐体の薄型化にも貢献しています。
ーパッシブラジエーター搭載により低音にも期待できますね。
関: 最近の曲は低音を重視する傾向があるので、音響設計として低音の増強は避けて通れない案件です。今回はスペースを取ってしまうバスレフダクトという選択肢は捨てて、スリム化と低音の充実を両立できるパッシブラジエーター方式を採用しました。パッシブラジエーターとは、スピーカーユニットから出される特定の周波数に共振して低音を豊かにするユニットのことで、BTX500にはこれが2つ、BTX300は1つ搭載しています。
ーそれらの各ユニットを固定するバッフル板にもこだわりがあるとか。
関: ハードウェアチームに強くリクエストして、フロントのバッフル板に関しては繊維で強化した樹脂を使っています。それはなぜかというと、スピーカーユニットというのは非常に激しく動くものですから、それぞれの振動が悪い影響を与え合わないようにガッチリ固める必要があるんですね。リアバッフル板は音を響かせたいのであえて普通の素材を使っていますが、フロントバッフル板は高剛性なので硬くて全然曲がらないほどです。
及川: フロントバッフル板に使用した素材は剛性が高いぶん脆さも併せ持っていて、実は強い衝撃には弱いという性質があります。持ち運んで使うスピーカーですから、その問題を解消するのに土壇場まで改良の繰り返しでした。ちなみにBTX500の方は、サブウーファーの振動を抑えるためにさらにフレームで補強してあります。
ー圧縮音源の高域を補完する「DSEE」の搭載をはじめ、AACやapt-Xコーデックの採用によりBluetooth再生時の音質が向上しますね。
山近:
「DSEE」は“ウォークマン”などにも搭載されていますが、Xシリーズ用に何度も調整しながらカスタマイズして満足のいくレベルに仕上がったと自負しています。圧縮率の高い音源でも、自然でクリアな高域を楽しんでいただけると思います。
AACとapt-Xコーデックについては、従来のSBCよりも高音質・低遅延で再生できるという優位性はもちろん、iPhoneなどではAAC、Androidモデルではapt-X対応のモデルが増えてきているのも大きいですね。「Bluetoothをいい音で快適に楽しめる」環境が整ってきている中で、高音質を追求するXシリーズが両コーデックを採用するのは必然だったと言えます。
岡: Bluetoothスピーカーの音質に対する世の中の評判は、けっして芳しいものではないという認識が我々にはあります。そのイメージを払拭できるよう、そして最高峰のXシリーズの名に恥じないよう、その他にもデジタルアンプ「S-Master」や2種類のサウンドエフェクト(MEGA BASS/SURROUND)、さらにBTX500には「Clear Phase」といったソニーの高音質技術を惜しみなく搭載しています。