臨場感たっぷりのハイレゾを聴けるX99と
ハイレゾへの扉を開くX88
──X99の進化点を教えてください。
関 英木[音響設計リーダー]
X99に関しては、X9の完成度が高いため、音の方向性はキープしていますが、機能を強化した分、ハードウェアの変更も伴います。それをポジティブに音質向上につながるように考え、たとえばスピーカーユニットに少し手を加えました。キャップ裏側をガラスのクロス貼りに変更して、振動板の強化を行っていますが、表面からは見えません。その結果、中低域の質を向上させました。
──今回新たに加わったX88とはどのようなモデルでしょうか?
関 英木[音響設計リーダー]
まず商品企画からハイレゾの良さが伝わる商品をお求めやすい価格で出したいという話がありました。当初は違う形が本体設計で検討されていましたが、X9の経験値から、ハイレゾはX9の構成・形状でないと難しいと思い、内緒で原理試作を作りました。そして皆に音を聴いてもらい、デザイナーからも賛同を得て、最終的にX9をコンパクトにした形にできました。音質的にはX9で評価されている良さを、どうやってサイズダウンして実現するかという挑戦でした。
そこで、メカ設計ではX9で経験を持っている内山を、電気設計は、かねがね目をつけていた西本をスカウトするように、うまく担当に入ってくるようにお願いしました。
──X9やX99との大きな違いは上面トゥイーターがないところですね。
関 英木[音響設計リーダー]
上向きのトゥイーターは目の前で聴くのではなく、ハイレゾの楽しみを広げるということで、少し離れたところで聴いても音が広がって聴こえるように付けました。しかし、X88は、自信があったのでの普通の形でまとめようと考えました。もっとも、このサイズで上面トゥイーターを載せるのは物理的に無理でしたが。
──メカ的に苦労したところを教えてください。
内山 了介[メカ設計]
ハイレゾを気軽に楽しめるモデルということでしたが、X9と比較しても音響的に妥協しているところはとても少ないです。これはX9とX88の基板ですが、ほとんど同じ部品が乗っています。妥協せずに小型化するためのウルトラCはないので、メカ設計として細かいところを積み重ねて小さくしていきました。
たとえば、左右のスピーカーボックスの裏側に透明な部品を使っています。これは、リモコンの応答を知らせるLEDのレンズをボックスと一体で作っているためです。また、ウーファーのユニットが微妙に傾いていて、リモコンの受光部のスペースを作ったりしています。
X99とX88のリアキャビネットには、X9同様今回もランダムなリブを入れました。平行面がないようにランダムな形状を作っていきました。
関 英木[音響設計リーダー]
材料には固有の振動数があります。プラスティックのキャビネットの上に他の材料を乗せると、それぞれ固有の振動数が共振してしまい悪い影響があります。そこで、わざとひとつの部品の共振点のバランスを崩して、他の素材が乗ったときに共鳴する部分をなくすように考えました。金型を作るのは大変ですが、そこはお願いしました。
内山 了介[メカ設計]
単純にランダムなリブを作ると金型が作れない形状が発生してしまいます。自動で正解を出してくれるツールはないので、メカ設計のセンスで、ランダムかつ金型に負担のかからない形状を作っています。
関 英木[音響設計リーダー]
X88のミットレンジにも社内で開発した磁性流体ユニットを使っています。これはダンパーの代わりに磁性流体でセンタリング効果を持たせるユニットで、レスポンスがよく、歪みが少ないのが特長です。X99にも使われている、贅沢なユニットですね。
また、フロントバッフルの左右と上の3面に斜度がついています。ここはグリルが入るための段差なのですが、平面のままだと音響的によくないので、視聴、測定、実験を重ねた結果、スロープを付けました。これにより、余計な反射音の影響を排除し、音像の広がりに寄与しています。
内山 了介[メカ設計]
細かいところですが、X99/X88のアンテナは、軸をゴムでフローティングさせて、バネで押さえ込んでいます。スッキリしたデザインを実現する収納式のアンテナは、そのままではノイズを出しやすい機構です。フローティングさせることで振動を抑制しています。
──電気系でもいろいろと工夫がありそうですが。
西本 香子[電気設計]
X88はX99と比べて容積的には半分ぐらいです。基板の高さや形状の制限が大きく、特にウーファーにはかなり大きな防磁のキャップがついているため、その裏の基板には背の低い部品しか置けないなど、いろいろと制限がありましたが、音質を考慮しながら設計しています。苦労したところは、サイズとコストを考慮しつつも、X9の音の方向性を踏襲するようにまとめることでした。
また、筐体が小さいため、電源部分はACアダプターですが、低域の力不足にならないように工夫しています。
関 英木[音響設計リーダー]
音質の担当から電気の担当にお願いしたのは、値段なりの作りかたをすると絶対それ以下の音にしかならない、ワンマーク、ツーマーク上の考え方でまずは部品を選定してくださいとお願いしましたが、がんばってくれたと思います。