有限会社レイブプロジェクト 様
マルチコプターやドローンなどの無人航空機パイロットとして36年のキャリアを持ち、空撮の第一人者である有限会社レイブプロジェクトの請川博一様。発売当初にAirpeak S1を購入しCMなどの現場で使用されています。これまでに数多くのドローンを操縦し、数多くの撮影現場を経験してきた請川様に、Airpeakを操縦した所感や、撮影現場のエピソードをお話しいただきました。
有限会社レイブプロジェクト 代表
請川 博一 様
出身地の北海道旭川市を拠点に全国で空撮を手掛けるドローンパイロット。36年のキャリアと卓越したドローン操縦技術で、多くのCMやテレビ番組などの空撮を手掛ける。産業用ドローン、農業用ドローンなども取り扱い、企業や官公庁からの多様な依頼に応えている。
レイブプロジェクト
http://raveproject.jp
株式会社ジャパネットウォーター様テレビCM「ジャパネットウォーター きれいだ。」篇(30秒/15秒)(出演:福山雅治、監督:是枝裕和、撮影:瀧本幹也)の制作にあたり、ソニーのドローン「Airpeak S1」が使用されました。
Airpeak S1との出会いは2021年7月の体験会でした。体験会で触れたのは発売前の開発機でしたが、その時点での完成度も高く、発売までにさらに良くなるだろうという期待もあり、誰よりも早く予約をしました。12月になって実際に届いた製品も、シリアルナンバー1番という量産1号機でした。ドローンは現在60機以上所有していますが、人の噂を聞いてから買うようなことはしていません。「まず自分が使ってみて、確かめたい」、そんな姿勢を貫いてきました。そして実際に使ってみて、良ければ仕事で使う。そんなスタイルです。
今回の作品の撮影は5月でしたが、その前に3作ほどAirpeak S1で撮影を行っています。それ以外は、つい最近までテストを繰り返したり、主催している撮影研修やドローン体験会などで使ったりしていました。Airpeak S1の送信機の操作にも“指慣れ”し、信頼性や耐久性といったものが肌感覚で掴めてきました。そろそろ本格投入かな…と思っていた矢先にいただいたのがこの撮影のお仕事でした。今回の「『ジャパネットウォーター きれいだ。』篇」は、大型CMには初めてのAirpeak S1投入になりました。
Airpeak S1を使ったきっかけは、過去に別の案件でご一緒させていただいた、撮影の瀧本さんのご要望によるものです。私がAirpeak S1を購入したことを瀧本さんが聞き及んでおられていて、その現場で、「Airpeakも持っているんですって?」と話題になりました。今回は瀧本さんによる「ドローンカットはソニーのFX3で撮りたいから、ドローンもソニーのAirpeak S1で」ということで決まりました。
以前はドローンでの撮影というと、カメラマンさんやプロダクションさんから撮影内容を伺い、こちらでドローンを選定することが多かったのですが、最近はプロダクションさんもカメラマンさんもドローンに詳しくなってきています。そのため、今では、今回のような「機体指定」での発注が普通になってきています。ドローン選定における考え方も、「載せたいカメラに一番向いているドローン」といった、カメラ合わせの形になってきています。従って「Cinema LineシリーズのFX3やデジタル一眼カメラ α(アルファ)で撮りたければAirpeak」という流れは加速してくると思います。
ドローンというと、とかく最大飛行時間や最大伝送距離が話題になりますが、CMやドラマ、映画といった撮影では、何よりも大切なのは「飛ばしたいときに、すぐに飛ばせる」ことです。例えばCMで使われるドローンカットはせいぜい2秒程度で、使いどころをピンポイントで素早く撮れることが重要です。そのカットの撮影に与えられているスケジュールも、30分というような単位です。従って、設定作業が早くて、すぐに飛べて、すぐに本番に入れることが大切です。30分の予定が10分で終われば、みんなが喜びます。
どんなカットを撮るかは、決まっていて飛ばすのが普通です。飛ばしてから考えるようなことはしませんから、1フライトの時間も2分とかそれぐらいのものです。いろいろな作品の撮影に関わってきましたが、距離も遠くまで飛ばすようなことはあまりなく、いいところ100mくらいまでの目視内飛行が中心です。従って、最大飛行時間や最大伝送距離よりも、それぞれのカットの撮影を素早く撮れて、一発でキメられる使い勝手の方が大事です。
今回のロケ地は、山梨県・静岡県の富士山麓周辺でした。撮影は2日間でしたが、1日目は私が機体操縦、瀧本さんがカメラとジンバル操縦、というデュアルオペレーションでした。2日目は、滝のあるシーンを私がシングルオペレーションで撮影させていただきました。
Airpeak S1はソニー初のドローンですが、操作性や飛行能力など、満点をあげてもいいと思える抜群の良さです。実際に、初日の朝に行ったドローンカットの撮影も、あっという間に全て一発OKをもらうことができました。時間にもゆとりができ、バリエーション違いをそれぞれ2〜3カット撮ることもできました。仕上がりを見ていた是枝監督からも「完璧でしたね!」というお言葉をいただけました。
ドローンカットの1つに、歩いていく福山雅治さんを低い位置でフォローしていくカットがあったのですが(30秒バージョンの2カット目)、Airpeak S1は、送信機のスティックへの応答性も素晴らしく、飛行のトップスピードや加速度もさることながら、ゆっくり飛ばすのも思い通りにコントロールすることができ、完璧な動きをしてくれました。
Airpeak S1はフルサイズミラーレス一眼カメラが搭載できる最小クラスのドローンですが、大きな強みはそのコンパクトさと軽量さです。時間にも制約がある日本のCMやドラマ撮影では、現場に着いてから大掛かりな準備作業を必要とする機材は望まれていません。仮にAirpeak S1を超えるサイズになってくると、1人での運搬や準備は難しくなってきます。Airpeak S1はコンパクトなだけでなく、用意するべきアクセサリー数の少なさに始まり、それに伴う準備作業の早さに至るまで、機動力の高さは非常に好印象です。
また、フルサイズイメージセンサーのカメラが持つ“高感度”を、1人で運用できるというのも、Airpeak S1の強みです。今回は、その出番はありませんでしたが、夜景の撮影などでは「一人で運用でき、夜景が美しく撮れる、ドローン」という強みを発揮すると思います。
Airpeak S1を撮影現場で使い始めて実感したことは、全ての通信が2.4GHz帯だけで行われていることの良さです。撮影現場では、ドローン以外の用途でも無線通信が使われたりしています。特に、現場スタッフの映像モニタリング用には、よく5GHz帯のワイヤレス伝送が使われています。そういった、現場で広く使われる他の無線機器との干渉を心配しなくていいというのは、撮影現場におけるAirpeak S1の大きな強みであると感じます。
Airpeak S1の使い勝手が良いところは、他にもあります。例えば、空港近くの飛行禁止空域で、国土交通省などの正式な許可を受けた上でAirpeak S1を飛ばそうとする場合、飛行禁止空域での飛行を行えるよう、機体側の飛行制限機能の設定も変更する必要があります。こうした設定変更作業や、その設定状態の確認はモバイルアプリ「Airpeak Flight」上で、簡単・確実かつスムーズに行えます。Airpeak S1は、こういう点でもすごく楽ですし、安心です。
私は、産業用無人ヘリコプターを足がかりにドローンの世界へと進んできたので、ドローンは初期のものから見てきています。その中でも、ソニーの最初のドローンであるAirpeak S1は、完成度の高さが際立っていると思います。自分たちの仕事は、お客様が選んだ機体が最高のパフォーマンスを発揮できるようにすることですが、Airpeak S1は実際にその期待に十分応えてくれていると思います。手にしてからまだ7カ月ほどですが、トラブルも一切ないですし、撮影もしっかりとこなせています。そして、何よりも驚いたのは、ソニーの開発スピードの速さでした。開発の着手から、初めてAirpeak S1を目にした2021年7月の体験会まで、わずか3年だったと聞きました。その期間で、この完成度を実現したソニーには本当に驚きました。
Airpeakは日本メーカーの製品ということで、声がダイレクトに伝わる安心感があります。実際に、購入以後も私たちの声に耳を傾け続けてくれています。特にこの安心感は何物にも代えがたいものです。ソニーには、これからもずっと、ユーザーに寄り添った開発を続けてほしいと思います。