「科学と技術の融合による科学技術の根本的な開発、それにより人類の真の文化を創造する学部」を理念に、基礎科学の素養を十分に積み、新しい技術開発にも積極的に参加できるような柔軟性と創造性を持つ科学技術者の育成に取り組まれている大阪大学 基礎工学部様。ソニーのリモートカメラやAIプレゼンテーション支援システムEdge Analytics Applianceなどを活用し、“リアルでも” “オンラインでも” 授業を受ける学生に“差を感じさせない”ことをめざしたハイフレックス型授業を実現する教室を整備されています。導入をご担当された関山明教授にお話をうかがいました。
関山 明教授
コロナウイルス感染症の急激な拡大により、2020年4月から授業のオンライン化を余儀なくされました。その年の中盤くらいからは、対面授業も行わなければならないという話も出始めたのですが、基礎工学部は講義室の数が限られており、さらに入室制限で2/3ルールが導入されたため、学生全員は講義室に入りきれない事態となりました。そこで、今で言う「ハイフレックス」に対応した環境を整備し、学生が対面授業かオンラインでのリモート参加か、どちらを選択しても“違いを感じないスタイル”の構築を追求しなければいけないと考えました。
また、導入検討にあたって教員から「安物買いをしてくれるな」という意見があり、多少高額でも、きちんとしたものを導入して欲しいという要望がありました。私自身も安いWebカメラでオンライン授業をやってみて、スペック的に不満を感じ、結局スペックの良いものを買い直すという経験を何度かしてきました。さらに、深刻だったのは“音”の問題で、性能の低いスピーカーマイクを使うと全然聞こえないという指摘が出て、授業に支障をきたす経験もしていました。
講義室から配信する授業の場合、準備にかかる負担も深刻で、都度、ビデオカメラを持ち込んで授業をやることは可能でしたが、準備に時間がかかってしまうため休憩も取れず、これを毎回やるのか?という点が大きな課題でした。
システム選定で重要視したポイントは機器を都度設置することなく、一度決まった機器のセッティングはそのまま維持できるよう、機器単体での調達ではなく旋回型カメラを天井から吊って常設にするなど、一体のシステムとして機能することを前提に検討を進めました。その上で、PCからスライドを投影して授業を行う先生や、板書を中心に授業をされる先生など、教員によって異なるさまざまな授業スタイルに対して、柔軟に対応できるよう配慮しました。準備にかかる時間もできるだけ短縮し、ワンマンオペレーションで行えることも譲れない要件となりました。
カメラについては天井に旋回型のリモートカメラを常設、教室を自由に動いて講義する先生用としてカメラが教員を自動追尾する機能を導入しました。また、板書を重視される先生向けには、黒板をあらかじめ複数の画面に分割した画角でプリセット登録を行い、リモコンで簡単に画面の切り替え操作ができるようにしました。
オンライン授業では、講義を行う教員自身が、今どのように映っているのかを確認できることも重要です。そのため、教員側に向けて49型のブラビアを2面、天井吊り下げ式に設置し、1台は配信するカメラ映像の確認用モニターとして、もう1台はリモート接続している学生たちを映すPCのZoom画面表示や、教員のセカンドディスプレイとして使えるように設置しました。通常、教室天井に大型ディスプレイを設置する場合、学生の視聴用として設置されるものですが、ハイフレックス授業に対応するためにあえてこのような形で教員用として設置を行っています。
板書に関しては、演習などでは教室後方の黒板を使って授業されるケースもあるため、後方の黒板も撮影可能な形でカメラを設置しています。今回のカメラ導入によって、”映像的に黒板はとても優れている”ということをあらためて認識しました。ホワイトボードはペンの色や太さに気をつかったり、蛍光灯の反射で見えにくかったりしますが、黒板はそういうことがなく、目にもとても優しいと感じます。ソニーのリモートカメラで撮影した板書映像は、白や黄色などチョークの色の違いもはっきり表現されていて、オンラインで見ても「とても鮮明だな」と感じています。
逆に、多機能であっても誰も使いこなせないまま、年月が経過してしまうようなシステム導入は絶対に避けたかったポイントです。そのためPCベースのシステムは採用せず、できるだけバージョンアップなどのメンテナンスが必要なく、つなげばすぐ使えて操作が直感的にできるシンプルなものを選定の対象にすることで、ワンマンオペレーションの実現をめざしました。
今回、導入したシステムは非常に満足のいくものとなりました。当初、3教室から導入をスタートし、これをデファクトスタンダードとして設置教室を増やしていきました。授業のたびにカメラを設置しなくていいということは教員にとって準備が楽になり、しかもカメラを自分で自由に動かせるという点がすごく大きいと思っています。また動画としてとてもきれいなので、見る学生にとっても非常にストレスが少ないと思います。
対面でもオンラインでも、どちらで講義に参加しても良い、と学生に伝えたところ、オンライン参加者が大幅に増えてしまった、ということがありました。オンラインのほうが黒板の文字が見やすいとか、オンラインのほうがかえって発言(コメント)しやすい、といったオンラインのメリットを学生自身が強く感じているようです。教員側もいつもと変わらずに講義をすればよく、授業の最後に学生にもカメラオンにしてもらいチャットで出欠確認を行っています。このようにハイフレックス型の授業が浸透してきたことは、導入した設備に対する評価が高いことの裏付けにもなっていると思います。
対面で最適化した授業とオンラインで最適化した授業はやり方が違っていて、両方を等分にはできないという先生方も実際にはいらっしゃいました。そこで、率先して使いこなされている先生の協力も得て、5分程度のインストラクション動画を作って学内に限定公開するなどの工夫をしてきました。その甲斐もあって、今では基礎工学部の教員もかなり慣れてきて、オンライン授業が定着してきていると感じています。
自動追尾がもう少し進化するといいと思います。ちょっと動いたら自動でズームしたり引いたりしてくれるとか。また、運用中に自動追尾が一旦外れて機能しなくなるケースがまれにあります。カメラのプリセット機能を使った画角切り替えとも併用しているので特に問題にはなっていませんが、自動追尾の性能向上も含め、もっと使いやすくなるといいと思います。
さらに将来的にはVRで自分があたかもその教室にいるかのような感覚で授業を受けられるようになるとよいですね。もはやそうなると、 “対面”という概念自体も意味がなくなるかもしれません。学生同士が切磋琢磨するという意味で“大学”という場は絶対的に必要ですし、対面も必要ですが、新しいテクノロジーを使うことで、具体的な教育方法そのものはこれから大きく変わってくるかもしれません。ソニーさんには、新しい視点での教育のあり方やスタイルを提案してくれることを期待しています。
納入特約店:株式会社 教映社
※本ページ内の記事・画像は2022年4月28日に行った取材を元に作成しています
リモートカメラ
SRG-X120、SRG-300H
AIプレゼンテーション支援システム
REA-C1000
(自動追尾機能)
ブラビア
FW-49BZ35F/BZ
レーザープロジェクター
VPL-FHZ65 VPL-FWZ65