高木:当初のデザインは、こういうオーセンティックなデザインではありませんでした。元々ソニーには、人がやらないような斬新なデザインに挑戦するスピリットがあり、今回も例えば近未来のデザインなど、さまざまなアイデアを山のように模索しました。しかし、開発メンバーと議論していくうちに「そうじゃない」と。最高画質に相応しい、無駄なものを削ぎ落とした"カメラの原型"を目指すべきだと気がつきました。そして、一眼カメラユーザー層やカメラ史を徹底的に研究し、試作を数えきれないくらい重ねました。決して懐古趣味的なデザインでなく、必然的に導き出されるカメラの形を追求し、このデザインにたどりつきました。さらに、小型化というテーマに向け、機構設計の担当者とともにコンパクト化を追求していきました。
天野:小型化については、時に製造方法まで見直し、設計を考えました。いちばん難しいのはやはり、フルサイズのイメージセンサーを、この小さなボディにいかに収めるかということ。通常は、レンズ鏡筒にイメージセンサーを取り付け、それをボディにジョイントさせます。しかし、RX1の場合、イメージセンサーが大きいため、レンズ径も大きくなる。同時に、ボディにも大きな穴が必要になり、サイズも大きくなってしまうのです。そこでRX1では、ボディ前面キャビネットをはさみ、レンズ鏡筒は前から、イメージセンサーは後ろから取り付けるという今までにない設計にしました。製造方法が変わり、より複雑な構造になりますが、本体ボディの小型化を優先させました。