SONY

BE MOVED RX cyber-shot

Engineer's Voice 開発者の想い

カメラの本質を研ぎすませ/デザイン

「最高画質」に相応しい、華飾を排した高品位な佇まい。重厚感を感じさせる美しさと道具としての使いやすさを両立した機能美としてのデザインを紐解く。

カメラの本質を研ぎすませ/デザイン

「削ぎ落とした先にある、カメラの原点へ」

クリエイティブセンター DIプロダクトデザイングループ 高木 紀明

高木:当初のデザインは、こういうオーセンティックなデザインではありませんでした。元々ソニーには、人がやらないような斬新なデザインに挑戦するスピリットがあり、今回も例えば近未来のデザインなど、さまざまなアイデアを山のように模索しました。しかし、開発メンバーと議論していくうちに「そうじゃない」と。最高画質に相応しい、無駄なものを削ぎ落とした"カメラの原型"を目指すべきだと気がつきました。そして、一眼カメラユーザー層やカメラ史を徹底的に研究し、試作を数えきれないくらい重ねました。決して懐古趣味的なデザインでなく、必然的に導き出されるカメラの形を追求し、このデザインにたどりつきました。さらに、小型化というテーマに向け、機構設計の担当者とともにコンパクト化を追求していきました。

コア技術部門 構造設計部 天野 高太郎

天野:小型化については、時に製造方法まで見直し、設計を考えました。いちばん難しいのはやはり、フルサイズのイメージセンサーを、この小さなボディにいかに収めるかということ。通常は、レンズ鏡筒にイメージセンサーを取り付け、それをボディにジョイントさせます。しかし、RX1の場合、イメージセンサーが大きいため、レンズ径も大きくなる。同時に、ボディにも大きな穴が必要になり、サイズも大きくなってしまうのです。そこでRX1では、ボディ前面キャビネットをはさみ、レンズ鏡筒は前から、イメージセンサーは後ろから取り付けるという今までにない設計にしました。製造方法が変わり、より複雑な構造になりますが、本体ボディの小型化を優先させました。

「ディテールのこだわりが、愛着を生みだす」

RX1の操作性

大島:RX1では操作部材のレイアウトにも、いつもとは違うこだわりを持って取り組みました。たとえば、このレンズ部の絞りリング。レンズ交換式カメラなどはボディ右上面などに電子ダイヤルとしてありますが、RX1では「絞りはレンズの機能である」と考え、レンズ部分に設置しています。リングを絞ると、実際に絞り羽根を絞っているような感覚の操作になっています。ちなみに、このレンズ鏡筒部のフォーカスリング、マクロ切り替えリング、絞りリングの配置も、並び順、各リングの径や幅を何通りも試作した結果のものです。また、設定操作も、一眼カメラなどに搭載される、設定状況が一目で確認でき、ファインダー装着時に使いやすい「クイックナビ」を採用し、一眼カメラユーザーの方が使いやすいよう配慮しています。

高木:この露出補正ダイヤルにも注目してください。普通、目盛りの文字色は1色ですが、RX1は2色になっています。一般的なカメラの場合、数値(指標)の前に丸ポチがあって、+1とか−1とか印字されていましたが、RX1の場合はダイヤル自体の径があまりに小さいので、丸ポチをつける面積がないんです。そこで、マイナス記号が指標も兼ねるデザインを考案。指標をグレーに、マイナス記号を白色にすることで、混同をさけ、見やすくしているのです。その他にも、モードダイヤルの菱形のローレット刻みや、ケーブルレリーズが取り付けられるシャッターボタンなど、ディテールをつくり込んでいます。また今回はカメラ本体そのものだけでなく同梱のレンズキャップまでも、アルミ材質で新規に専用開発しています。私の知る限り、可動式のレンズキャップの材質にアルミを採用するものは珍しく、そういった部分からもお客様に持つ喜びを感じていただけるように、細部までこだわりぬきました。