細見(鏡筒リーダー)
我々レンズチームに来た要望は、広角端の35mm換算焦点距離を28mmより広角にしたい、テレ端のF値をより明るくしたいということだったのですが、どちらもサイズが大きくなるのが普通です。でもこれらを達成した上でカメラはこのサイズに入れたい、さらにEVFとフラッシュも入れたいから、鏡筒はもっと小さくして、ということなんです(笑)。広角で明るく、性能もトップレベルでいながら小さくという、非常に難しいスタートになりました。今までの延長線で設計をしているだけだとまず達成できないのですが、本レンズは非球面レンズの枚数を増やしました。10枚のレンズのうち9枚が非球面レンズです。非球面を多用すると、鏡筒組み立て状態での光学性能を出すのが非常に困難になります。小さくて高性能なレンズを組み立てる為に、他のRXシリーズでもそうなのですが、レンズとイメージャの性能を最大限に引き出す為に、レンズとイメージャをミクロン単位で調整する精度を従来機種よりもさらに高めて作っています。
そして今回、非球面レンズ2枚を張り合わせるということにもチャレンジしました。ガラスのレンズとしては世界初の試みで、技術を確立したのも今回が初めてだと思います。新しくないのですが、ガラス非球面のレンズ同士ということになると非常に精度が高い技術が要求されました。完成したレンズは、おかげさまでとても高い評価をいただいております。
もうひとつ、今回NDフィルターを内蔵したのですが、これも好意的な反応をいただいていて、入れられて本当に良かったなと思っています。内蔵させるとなるとレンズの後ろにスペースが必要ですし、使わないときの格納先にも場所を確保しなければならないので、径方向も厚みも両方厳しくなります。サイズキープのコンセプトでやる上では非常に難しいチャレンジでした。
皆見(プロジェクトリーダー)
レンズバリア搭載も私たちがこだわっているところです。NDフィルターもレンズバリアも、スペースを作り出して内蔵するというチャレンジポイントをレンズチームが突破してこの商品が実現できています。
田上(メカリーダー)
実は今回、鏡筒の外径はわずかに細くなっているにも関わらず、内蔵できています。
皆見(プロジェクトリーダー)
レンズ外径が小さくなっているのには理由があり、それは、ボディ天面をフラットデザインにしたいという思いからでした。フラッシュをレンズの真上に入れたいからレンズ外径は何mmでなければいけないというアプローチでしたが、それが余計にレンズチームのハードルを上げてしまったわけです。
田上(メカリーダー)
鏡筒の径を小さくすることによってはじめてレンズの真上にフラッシュも入って、その横にEVFも入ったわけです。そのために10分の1mm、100分の1mm単位で追い込んで設計しています。
伊藤(商品企画)
画質的には、新開発の画像処理エンジンBIONZ Xによりさらなる高画質を実現していますが、やはり、まずレンズでしっかりと解像させるというコンセプトを貫いています。このレンズがあるからこそ、各デバイスが持っている性能を引き出せて相乗効果も出ます。
皆見(プロジェクトリーダー)
RX100 IIIのレンズは、RX100・RX100 IIレンズと比較してワンランク上の品質を実現しています。RX100 IIIは単にEVFが載ったカメラというわけではなくて、多岐にわたって革新が図られています。そのなかでもレンズに大きなこだわりを持って開発しました。初めてRX100 IIIを使った方はもちろん、RX100、RX100 IIを使ってこられた方ほどこのカメラの凄さを感じていただけるのではないでしょうか。