村島(EVFリーダー)
当時RX10で新しいEVFを開発して、高い評価をいただいていました。できれば同じEVFを使いたかったのですが、絶望的にRX100 IIIには入れられません(笑)。でもサイズに入れるために見え性能を妥協したくない。サイズに入れるために光学全長を抑えると、画面が小さく見えたりアイポイントが短くなったりと、RX100シリーズのファインダーとしてふさわしくないものになってしまいます。ならば使うときは光学全長を確保して使わないときは沈胴させてサイズに納めるという方式にしました。ただそう言った方式は複雑な構造になるので、完成度を上げるのに苦労しましたね。そんな完成度が低いときには、チームみんなで「好評のRX100シリーズに中途半端なEVFをつけて、トータルでの平均点が下がるなら、採用は見送るしかないね」と話合っていました。だからEVFも完成度を上げて、最終的に満足できるものができたと思っています。パネルについても通常コンパクトデジカメでは0.2型のパネルを使っていますが、RX100 IIIには約4倍の面積がある0.39型で高精細な有機ELを使っていますので一眼カメラ並みの見え性能が得られています。レンズのコーティングも今回EVFでは初めてT*コーティングを採用して、中心だけでなく隅々まで視認性が高いクリアなファインダーになっています。
田上(メカリーダー)
実は、最後の最後まで、EVFはなくなるかも知れなかったんです。納得できないものを載せるぐらいならと・・・
皆見(プロジェクトリーダー)
この状態のままお客さまに提供しても満足していただけない、だったら載せられないということです。その都度、新しい改善案を出して、ようやく納得のできるものに仕上げることができました。完成までに何度が本当にEVF検討中止ということになりかけたことを覚えています。
田上(メカリーダー)
ファインダーを上げたときのデザイン、接眼部の造形。そういう細かなところで、これだったらダメだねとあきらめかけた時もありましたね。
伊藤(商品企画)
そのころよく言われていましたね・・・
村島(EVFリーダー)
このサイズに収めつつ、光学性能を確保する唯一の「解」が沈胴式だったんですが、こうすると光学性能を確保するための精度と密閉性が必要になってきます。沈胴式にすると部品点数が増える。部品点数が増えるとそれだけ10ミクロンレベルで部品一点一点の精度を追い込んでいく必要があるんです。精度を保ちつつ、引き出すときの感触を良いものにする。当然耐久性も要求されます。クリアしなければいけない課題がいろいろありました。最後に、接眼部の片隅を指先一つで押すだけでスッと入っていくようにしました。これは金属軸などの部品の精度をぎりぎりまで追い込んでガタつきを極限までなくしたことで達成できたことです。
皆見(プロジェクトリーダー)
これは本当に苦労したところですね。最初の試作では、そもそも硬くて押し込みにくくて(笑)、これはもう使い勝手として完全にNGだな、というところから始まりました。それが、指2本で両側を押したり親指の腹でEVF中央を押さえたりしなくてもキレイに収めることができるのがわかりますか? 普通は一辺だけ押したら、引っかかりそうな気がしますよね。そこまでの仕上がりを達成しています。
皆見(プロジェクトリーダー)
このクラスのカメラには接眼センサーはあって当たり前の機能だと考えていますが、社内で試しに評価して頂いた方々から「接眼センサーはどこにあるの?」とよく質問を受けました。で、「ここをよく見てください」と、フラッシュとEVFの真ん中のところを指すと「え!?こんなところに」と驚かれることがほとんどでした。
田上(メカリーダー)
造形をくずさずにセンサーを配置できる場所がそこしかないんです。狭い段差の中に収めなければいけない、その小型化に大変さがあります。これはだいたい普通の接眼センサーの5分の1ぐらいの大きさです。
皆見(プロジェクトリーダー)
さまざまな課題を乗り越えて、EVFとして見えがキレイで、しっかり使えてかつデザインも良いと、非常に高い評判をいただいています。デザインが格好良くてもEVFとして使えないのでは全く意味がありません。写真はファインダーを覗いて撮りたいというスタイルのお客さまの声に、しっかりと応えたかったのです。
伊藤(商品企画)
フィルムカメラに慣れ親しんだお客さまはファインダーを覗くスタイルが一般的だということもありますし、一方でコンパクトデジタルカメラやスマホから入った若い世代で、ファインダーを覗くスタイルへの憧れを持つお客さまもいらっしゃいます。液晶では見にくいけれどもEVFだと視度調節を使うことで確実に見えるようになり良かったという声もいただいています。