漫画家・石塚真一さんによる「ハイレゾで、聴きたかった10曲」。
今回の選曲は、石塚さんにとって、
「青春とジャズ」が大きなテーマでした。
プレーヤーそれぞれの若い頃の葛藤や苦悩が、糧となり、音に生きる。
一筋縄ではいかない彼らの意志や生命力が、
ハイレゾによって、ありのままに伝わってくるようです。
上原ひろみさんの「ドリーマー」は、とくに冒頭のピアノの旋律が好きです。ハイレゾで聴くと、サイモン・フィリップスのドラムもすごく近くに聴こえました。たくさんのタムを操ることで知られるプレーヤーですが、ライブ会場で聴くのと同じくらいタムの音階がクリアで、一つひとつの音がよく聴こえてきて楽しい。とにかく、次から次へといろんな音が鮮明に聴こえてくるから、息つく暇もなくて、他のことが手につかなくなる(笑)。体感として、濃いですね。
これもピアノの旋律が好きな曲。ロバート・グラスパーのピアノには歌心があるというか、エモーショナルに音が紡がれていきますね。こういう高音質なレコーディングは、ハイレゾで聴くのが本当に楽しい。もう笑っちゃうくらいに(笑)。上原ひろみさんもまさしくそうですが、こうしてリアルタイムで新しい挑戦をしているジャズプレーヤーたちにも、いつも心を開いていたいと思います。
ちょっと暗いテーマで、劇画っぽい雰囲気もある。渋い出だしから、とてもカッコいい楽曲。ケニー・ドーハムのトランペットが、ひたすらクールな印象です。一流のプレーヤーたちとの呼吸も見事で、どこか安心して演奏しているように感じました。ハイレゾでは、曲の重みや深みがしっかり再現されているように思います。やっぱり、各プレーヤーの個性が鮮明に伝わってきますね。
ジョン・コルトレーンのバンドを脱退した後の作品ですが、マッコイ・タイナーらしさが変わらず発揮されていると思います。彼のピアノはどこか淡々としていて、人間としての丸みのようなものも感じられる。左手を駆使した演奏も大きな特徴で、ハイレゾでもそのパートがよく聴こえてきました。音からだけでも、彼の左手の動きが目に浮かぶようですね。ちなみに『BLUE GIANT』に登場する(沢辺)雪祈は、左手が強いピアノプレーヤーなのですが、高い所から叩きつけるような奏法など、マッコイのスタイルにイメージを重ねたところがあります。
この曲を聴いてはじめて、ジョン・コルトレーンのすごさを知りました。こんなにも目まぐるしくて複雑な展開を、正確無比に演奏しきるなんて、とてつもない努力が必要だったに違いないと。とにかく圧倒されます。周りを押しのけてでも、前へ前へと出てくるところが、いかにも彼らしくて、僕はやっぱり好きですね。ハイレゾで聴くと、さらに彼の声まで聴こえてくるようで、その迫力に驚きました。
取材を終えて。ジャズは自由で、個性が生きる音楽。その魅力を楽しく語ってくれた石塚さんに、『BLUE GIANT』の宮本大の姿が重なりました。歌詞のないジャズには、自分のすべてを楽器に込めるかのような、奇跡的な演奏が確かにあります。音に触れて、人に触れる。ハイレゾならではの高い再現性を通して、プレーヤーたちの個性にぜひ触れてみてください。(Hi-Res 10 songs編集部)
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※取材時にはハイレゾ対応のウォークマン「NW-A35」、ヘッドホン「MDR-1000X」で試聴しました。
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※音楽配信サイト「mora」で配信されている曲の中から選曲をしています。
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※本ページに掲載している情報は2017年3月22日現在の情報であり、予告なく変更される場合がございます。
石塚真一(いしづか しんいち) 1971年生まれ。茨城県出身。中学校ではブラスバンド部に所属。22歳から27歳までアメリカに留学し、ロッククライミングや気象について学ぶ。帰国して会社員を経験した後、28歳で漫画家に転身。代表作に『岳-みんなの山-』『BLUE GIANT』。現在、小学館『ビッグコミック』にて『BLUE GIANT SUPREME』を連載中。『BLUE GIANT』完結編となる第10巻、および『BLUE GIANT SUPREME』第1巻の単行本が、3月10日に同時発売されたばかり。
特設サイト
http://bluegiant.jp/
Edit by EATer / Photography by Kiyotaka Hatanaka(UM) / Design by BROWN:DESIGN
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「BLUE GIANT」の石塚真一氏がハイレゾで、聴きたかった10曲(前編)
世界一のジャズプレーヤーを目指す主人公を描く「BLUE GIANT」の漫画家・石塚真一さんに好きな10曲を選んで聴いてもらいました。レコードショップ「CITY COUNTRY CITY」店長がハイレゾで、聴きたかった10曲(後編)
音にこだわる下北沢のアナログレコードショップ店長 平田立朗氏に、好きな10曲を選んでもらい、ハイレゾでおすすめしたい聴きどころを紹介してもらいました。レコードショップ「CITY COUNTRY CITY」店長がハイレゾで、聴きたかった10曲(前編)
音にこだわる下北沢のアナログレコードショップ店長平田立朗氏に、好きな10曲を選んでもらいハイレゾで聴いてもらいました。Hi-Res 10 songs vol.0 : ハイレゾ10曲
ハイレゾの魅力を確かめるには、自分の好きな曲を聴いてみるのがいちばん。このシリーズでは、音楽とともに生きるさまざまなプロフェッショナルたちに、「ハイレゾで聴いてみたい10曲」を選んでもらい、実際に試聴していきます。