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商品情報・ストアヘッドホンスペシャルコンテンツ MDR-NC500D 開発者インタビュー

ノイズキャンセリングヘッドホン 「MDR-NC500D」開発者インタビュー

  • 01. 15年前から実現を切望してきたノイズキャンセリング機能のデジタル化
  • 02. アナログを超えたデジタル そのキャンセル性能と音質
  • 03. とことん軽量化にこだわり装着性を追及した「MDR-NC500D」
  • 04. この開発チームだからこそ実現できたノイズキャンセリングヘッドホン「NC500D」

01. 5年前から実現を切望してきたノイズキャンセリング機能のデジタル化

角田   実はソニーのデジタルノイズキャンセリングの歴史は意外に長く、15年ぐらい前から浅田や板橋が所属していた部署が研究を進めていました。当時はアナログのノイズキャンセリングヘッドホンが始まった頃で、デジタルは未知数の技術だったんです。ただ試作機ができたということで聴かせてもらったんですが、これがとてもよく出来ていて、特に音質が素晴らしいという印象を受けました。

浅田   入社当時に所属していた部署が、ノイズキャンセリング機能のデジタル化に関する技術を開発したんです。角田の言うようにとても音質がよく、アナログ以上の可能性を感じました。ですがデバイスが今のように揃っておらず、消費電力がかなり大きかった。また、サイズもとてもじゃないがヘッドホンの筐体の中に納まるものではない。商品化するにはまだ現実的なものではなかったんです。
 その後私がノイズキャンセリングヘッドホンの開発から外れまして、マイクやスピーカーの開発、あとは音響測定や音場処理などを手がけることになりました。でも、どこか頭の隅にデジタルノイズキャンセリングのことがあり、いつかは商品化したいと思い続けていました。当時聴いたときの印象が忘れられなかったんです。

板橋   僕も浅田と同じ部署にいて、先輩がやっているのを見ていたのですが、そのとき使っていたDSP(=Digital Signal Processor/デジタル信号処理プロセッサー)がとても高価なもので、これは商品化するのは難しいなと。ここ最近になってDSPやノイズキャンセリング技術は伸びてきましたが、それまではデジタル化する技術はあっても、アナログより優れたキャンセル性能を得ることができなかったんです。

浅田   今から2年ぐらい前に、角田から『そろそろ機は熟したのではないか?』という話があって、チャンスが来たと思い開発チームに加わりました。15年前と比べて、いいデバイスが安く作れるようになりましたし、ノイズキャンセリングヘッドホンの市場も成長してきた。私自身も15年間培ってきた音に対する技術の成果を出せるのではないかと。それに今出せば、“世界初”ですから、これはどうしても達成したかったですね(笑)。

水内   ただそこには多少のあせりもありました。15年かけてやっと実現する、“世界初のノイズキャンセリング機能のデジタル化”。それが他社から先に発売されてしまえば、今までの想いが水の泡ですから。世界初にこだわるならば、多少キャンセル性能を犠牲にしても、なんとか第1号機を出すという方法もあったかと思います。ですが、ソニーの技術者としての魂がそれを許しませんでした(笑)。

角田  もちろん性能が低いのに発売することがあってはありません。「MDR-NC500D」(以下:NC500D)の開発をスタートしたのが今から2年ほど前で、基本的なシステムを組み込んだ初号機が出来たのが1年ほど前です。これは今までと比べても驚異的なスピードだと思います。そこからブラッシュアップしていき、『これはアナログのキャンセル性能は超えたのでは?』と思った試作機が完成しました。ただ上司からは、『そのぐらいの性能では出すことは難しい。圧倒的に性能がよくならないと商品化はしない』と強く言われました。

水内   上司が、『お金がかかってもいいから、いいものを作りなさい』という、英断でもあり厳しい指導をしてくれたんです(笑)。もちろんプレッシャーもありました。

浅田   そこから再び皆で試行錯誤を繰り返し、2ヶ月ぐらいかけて調整をしたのですが、もう苦悶の毎日(笑)。作っては設計しなおし、作っては設計しなおしのカットアンドトライの日々でした。でもアナログと違いデジタルは、データ部分は比較的、簡単に改造することができるというメリットがありました。アナログの場合は回路を改造して作り直さなければいけないのですが、デジタルの場合、中に組み込んであるフラッシュメモリのデータを換えてやればいい。そのためデジタルのプラットホームができたあとは、かなり速いペースで改良が進みました。その成果もあって、今はアナログより良い性能のものができたと自負しています。

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