音、というか、音質にはすごくこだわるほうですね。こだわるというよりも、好みの音質が明確にあるという方が近いでしょうか。音楽は、たとえ同じ曲であっても、その聴こえ方によって感じ方が本当に変わってくるものだと思うんですね。聴こえる部分によって、その音楽の意味は大きく変わってくる。私も、音楽を聴くときはもちろんですが、たとえば選曲をやるときにも、とにかくイコライザーを細かくいじって自分好みの音にしてしまいます。
エレクトロニカを聴くと、細やかな高音がまるで降り注いでくるような感じがしますね。高音域の粒子がきちんと聴こえてきて気持ちいい。同時に、音の「層」の存在が聴き取れる。アーティストがすごく神経を使って音を作り上げているのがすごくよく聴き取れますね。(今度は70年代のバンド、ソフト・マシーンの音を聴きながら)こういうシンプルな編成のサウンドだと、ミュージシャンがどう演奏をしているか、音をどう配置しているかが聴きとれますね。面白い! ヘッドホンでの新たな音楽の聴こえ方だと思います。しばらく聴いてなかった音源を聴き直してみたくなる。
これまでのヘッドホンには不満があったんです。理由はそれは単純で、聴きたい部分が聴こえてこなかったから(笑)。こういうすごくクオリティの高いヘッドホンを使ってみると、音楽の持つ良さを、改めて実感させられる気がします。私にとって、音楽はないと生きていけないもの。それは大袈裟な表現ではなくて、子どものころからいろいろな音楽を聴くことでいろいろなことに興味を覚え、それを知り、成長してきたわけですから。そして大人になると、音楽の趣味で友達もできるし、私の場合は幸運にもお仕事にもなっているわけなので。最近は音楽があまりにも手軽に聴けてしまうのですが、もったいない気がしてしまいます。音楽って本当にいいものだよ、と、しっかり聴き込んで、自分に取り込むことで、世界が拡がるし、友達もできるよ、と言いたいですね。
今は制作活動中で、立体の作品を作っていますけれども、造形のお仕事でも選曲でも、もちろんモデルをやるときも、その表現の背後にあるストーリーをイメージしてもらえるように、と思っています。共感してもらえるストーリーを呼び起こして、見る人、聴く人にフックするところができればいいな、と。そしてそのためには、結局、すごく細かい部分にも手を抜かないということしかないんですよね。本当に、誰も気付かないかもしれないようなところを、丁寧に作り上げていくしかない。
このXBA-40にも、細かいところに神経が使われているのがよくわかります。ケーブルがフラットになっていたり、耳に入れる部分のデザインとか、音質のチューニングもきっとそうですね。こういうちょっとしたところですごく大きな違いが出てくると思うんです。それはどんな仕事でも同じでしょうけれども、特にものをつくるうえに於いては、一番大切な部分なのかな、とも思います。わかる人には必ずわかりますから、本当に。