凛として時雨のドラマー。手数、足数を駆使した高度なテクニックと表現力で、豪快かつ繊細な圧倒的プレイスタイルを確立。サブカル的な独自の視点と卑猥なマイクパフォーマンスでごく一部のファンから熱狂的な支持を得ている。ドラムメーカーであるTAMAからは、日本人初となるシグネチャードラムセット発売、シグネチャースネアの予約即完売など、前例のない功績を残した。また、凛として時雨とは別に「カオティック・スピードキング」という3人組即興ユニットや、ヒップホップ集団「玉筋クールJ太郎」での活動、DJやコラム連載など、ドラマーとしての可能性を模索し、幅広く精力的な活動を展開している。
凛として時雨のドラマー、ピエール中野。自身のバンドやソロとしても活躍する一方で、GLAYやももいろクローバーZ、大森靖子など、ジャンルを問わず様々なアーティストのレコーディングやライブに参加している。ドラマーとして多忙を極める彼は、「いい音を知らなければ、いい音を作ることはできない」と話し、ヘッドホンやイヤホンには強いこだわりを持つ。そんなピエール中野に、「XBA-N3」の試聴をお願いし、率直な感想を聞かせてもらった。なお、CINRA.NETのインタビュー記事では、ピエール中野が愛するアイドルたちの魅力を、バンドマンならではの視点で熱弁している。
ー最初にXBA-N3で試聴する楽曲として選ばれたのは、Negiccoの「トリプル!WONDERLAND」でした。この曲を選んだ理由を教えていただけますか?
中野 Negiccoの楽曲のなかでも特に好きだから、という理由ももちろんあるんですが、サウンドプロダクションがしっかりしているし、イントロから徐々に楽器が重なっていくので、リファレンスとして最適なんですよ。なので、ヘッドホンやイヤホンを試聴するときには、必ず最初に聴いています。
ーXBA-N3のサウンドの第一印象はいかがでしたか?
中野 僕、あんまり「いい」って思えるイヤホンが少ないんですけど、これはお世辞抜きでめちゃくちゃいい。ボーカルも、シンセなど上モノの楽器もきれいに出ているし、低音もしっかり聴こえます。若干、低音が強めの印象で、ベースフレーズがたっぷり前に出てくる感じがしました。でも、変に色付けされた感じではなく、他の帯域も引っ込んだりせずナチュラルに聴こえてくるので、違和感はまったくなかったです。これまで試してきたソニーのイヤホンの、「ここがもう少しこうなるといいのに」と感じていたところがすべて解消されている印象ですね。しかも、予想を超えてきているのがさすがです。
ーこれまでのイヤホンは、バランスド・アーマチュア・ドライバーユニットを多く搭載することで音質向上を図っていたのですが、XBA-N3はあえて1基にすることで小型化・軽量化に成功し、小型高感度ダイナミックドライバーユニットと組み合わせることで、高音質再生を実現しました。
中野 なるほど。これだけパワーがあるのに、無理やり突っ込んだ感じがない。ナチュラルに奥行きや広がりを感じられるのがすごいです。ソニーはヘッドホンもそうですが、不自然な感じがまったくない。変な色付けがないんですよ。かつ、聴いていて楽しい音に落とし込んでいるモデルって、他ではなかなかないんですよね。
ーご自身がドラムを叩いている楽曲をXBA-N3で聴いてみていかがですか?
中野 大森靖子の“マジックミラー”をハイレゾ音源で聴いてみたのですが、楽器の再現力が非常に高くて驚きました。キックの打面を打つペダルの質感や、銅鳴りの響き、シンバルの立ち上がりなど、本当にリアルでいい感じですね。それと、この曲はストリングスアレンジが絶妙なのですが、音のキレや余韻の残り方など素晴らしいです。
ーXBA-N3の装着感はいかがですか?
中野 普段は耳にかけるタイプのイヤホンを使っているのですが、全然違和感なく装着できました。もともとこういうタイプが好きな人にもバッチリだと思います。密閉性もかなり高いし、軽いからストレスも感じない。あと、ケーブルのタッチノイズがほとんど気にならないのも嬉しいですね。
ー今回、音質の向上とともにこだわったのが装着感です。バランスド・アーマチュア・ドライバーユニットは、数が多ければ多いほど高音質というイメージがある一方で、ユニットが増えると筐体も大きくなり、装着性が低くなっていたのですが、XBA-N3ではユニットを1基にしたことで装着性を高くすることができたんです。
中野 しかも本体がすごく軽いから、長時間装着していても耳が疲れないし、ストレスも感じなさそうですね。
今回新たにトリプルコンフォートイヤーピースを開発しました。ソニーはイヤーピースも試行錯誤を繰り返していて、シリコン製のイヤーピース内部にウレタンフォームを使用したものや、発砲クッション材を使用したものがありますが、今回は独自開発のシリコンフォーム素材などを採用することで、よりフィット感を高めています。
中野 (イヤーピースを変更して試聴中)……なるほど。低音が膨らんで、全体的な音も柔らかくなる印象ですね。僕は解像度が高くてパキッとした音の方が好きだし、今回はそういう楽曲を試聴したので、標準型のイヤーピースの方が相性はいい気がします。でも、たとえばアコースティック系の柔らかい楽曲だったら、こちらのイヤーピースの方が気持ちよく聴けるかもしれないです。
ーXBA-N3は、ケーブルの付け替えにも対応しています。今回、キンバーケーブルと共同開発した独自の編みケーブルを販売します。φ4.4mmのバランス標準プラグで、LRが完全にセパレートされているんですよ。
中野 (ケーブルを変更して試聴中)……楽器の鳴りが力強くなりましたね。音の余韻もよりくっきりと明確に聴こえます。ただ、センターにいるボーカルやベース、キックなどが少し後ろに引っ込んでしまったような印象がありますね。おそらくLRの広がりや奥行き感が増したのが、原因として大きいと思います。楽曲によっても印象が違うのかもしれないですね。もしかしたら、センターを強烈に意識させない音楽、たとえばクラシックとかジャズとかインストゥルメンタル曲の方が、相性がいいのかも。あくまでも個人的な感想ですが。
ー中野さんにとって、理想のイヤホンとはズバリどういうものでしょう?
中野 ケーブルのタッチノイズがなく、高解像度で、各楽器と歌の出音の一番気持ちいいところがちゃんと出ていて、装着感がよく、いつまで着けていても耳が疲れないもの。さらにいえば、どの再生機器で聴いても、そのイヤホンの音がするような、そんなイヤホンを探しています。完璧なイヤホンにはまだ出会ったことがないですが、XBA-N3の満足度はかなり高いです。
ーこうやって音楽を聴くためのハードが進化していくと、制作面にも影響はありそうですか?
中野 当然、音楽を制作する人は「いい音で出したい」と誰もが思っているでしょうし、いい音を知らなければ作れないし、ジャッジもできない。そういうためにも、ずっといい音を求めていますね。
レーベル:T-Palette Records
配信開始日:2016.05.20
収録曲数:全6曲
販売データ:ミュージック|AAC-LC 320kbps
レーベル:avex trax
配信開始日:2016.3.23
販売データ:ハイレゾ|FLAC|44.1kHz/24bit