（試聴して）あ、こんなにしっかりした音が聞こえてくるんですね。ちょっとびっくりしました。特にこのMDR-XB70は低音がすごく忠実に出ていますね。レコーディングのときの、作り手にしかわからないかな？と思っていた低音もちゃんと聞こえる（笑）。MDR-XB50は新しい感じの音というのかな、ヘッドホンならではというか、イキのいい音が聞こえてきますね。音そのものに奥行きもあるし、空気感もきちんと再現されている。歌のチェックにも使えるクオリティだな、と思いました。素敵ですね。

実は今まで、インナーイヤータイプのヘッドホンにあまりいいイメージはなかったんです。このサイズだと、技術的にまともな低音を再生することは難しいのかと思っていましたが、違うんですね（笑）。装着感も圧迫感もなくてすごく良いし、インナーイヤータイプへの印象が一変しました。

MDR-XB70は低音がすごく出ていて空気感もあるので、たとえば低音を豊かに使ったゴージャスな音楽を聴くと、その良さがよくわかるんじゃないかな。一方でMDR-XB50はとてもパンチのある音なので、ダンスミュージックを聴くと盛り上がりそうですね。好きな音楽とヘッドホンのキャラクターをいろいろ組み合わせてみると楽しいかもしれません。

音楽って、再生環境にとても左右されてしまうものなんです。僕ら音の作り手は、聴き手の再生環境を指定することができません。つまり、自分たちが作っている音が実際どんな音で再生されているかが実はわからない。ものすごいオーディオマニアも、本当に簡単な環境で聴いてくださる方もいらっしゃるでしょう。僕らはいろいろな環境の中のある一点を捉えてその最高のものを目指すわけですけれど、いろいろ違いが出ることは事実です。

だから、ここしばらくのオーディオやヘッドホンの進化は、聴き手にとってはもちろん、音楽の作り手にとっても実はすごくいいことだと思っています。今後、クオリティの高い再生環境がより一般化すれば、音楽の持っている良さが、より広く伝わるはずだと思うんですよね。だから音楽の再生環境に携わるメーカーや、そこに勤める人たちも、音楽文化の屋台骨を支える存在なんです。業界自体は変わり時ですが、きちんと音楽そのものに取り組んでいる人たちにより脚光が当たるようになればいいなと思いますね。

僕自身は、この半年で4枚のアルバムをリリースしたので、なんというか、2014年前半の記憶がないんです（笑）。オリジナル『Cinematic』やブラジル音楽の名曲カヴァー集（『Vamos La Brasil』）を制作しながら、一方ではテレビドラマのサウンドトラックを作っていました（『FIRST CLASS SOUNDS』）。全く方向性の異なる音楽性だったので、頭と感覚を切り替えるのが少し大変でしたね（笑）。これからの目標としては、真正面から向き合って、より良い再生環境でじっくりと聴いていただけるような音楽を作っていきたいと思っています。丁寧に練り上げた音楽を、このヘッドホンで聴いていただければ嬉しいですね。同時にライヴもいろいろな形で展開しているので、こちらもいろいろと発展させていくことができればな、と。より広く、全国、そして世界中の方々とご一緒できればと思っています！