ギターと玩具を主軸に無数の楽器を演奏する音楽家。楽曲の全てを作曲、演奏、録音までひとりで作り上げている。TONOFONを主催。2004年、米NYのインディ・レーベルよりデビュー。各国のメディアで絶賛を浴び、その後日本でもリリース。順調にヨーロッパ、北米で作品をリリースし、世界的にツアーを行う。海外から火がつく形で日本でも知名度を上げ、アルバムリリースはもちろん、ライヴ、CM音楽等含め全世界/多方面で活躍中。 12月には2015年に向けた先行新作シングルをリリース。
(試聴して)……聴こえすぎて息を飲んでしまいますね。音像が明確で、ひとつひとつの音、音の階層がすべてクリアに聴こえてくる。楽器ごとの距離がカタチとして見える。特に興味深いのは、音量と音像との関係ですね。大音量でも小さい音量でも、同じ音像できちんと奥行きのある音が聴こえてきます。すごく新しい経験だと思います。
特にハイレゾ音源をこのMDR-1Aで聴くと驚かされますね。楽器の「鳴り」がそのまま自然に、減衰することも色づけされることなく聴こえてくる。それぞれの音に存在感が出ていて、靄が晴れたような、楽器本来の鳴りがそのまま耳に届けられている印象です。拡がる音像に圧倒されました。
音質そのものに関しても、高域と低域の両方ががっしりと出ている印象です。特に中高域が自然に響いているので、長時間聴いていても疲れるということはないでしょうね。音そのものを素直に響かせているという意味では、すごくナチュラルなヘッドホンだと思います。デザインに高級感もあるし、イヤーパッドのつくりをみても、リスナーに対して「ヘッドホンは今ここまでできちゃうんだぞ」というプライドを感じますよね。
100kHzというのは、人間には聴こえていないとされる部分ですよね。ここのポテンシャルが、聴こえていないはずだけど聴こえる部分を鳴らしているんでしょうね。その部分が、音楽の聴こえ方を完全に変える。それがすごく面白くて、とても興味深い部分ですね。聴く音楽によっても聴こえ方が違ってくるので、音がクリアになった驚きと同時に、これまで僕がつくってきた音楽はどう聴こえるようになるんだろう? これからどう音を作っていけばより良く聴こえるようになるんだろう? という楽しみが増えると思います。音楽を作っている立場としては、より高度な再生環境で聴いていただいて、音楽に込められたいろいろな部分がよりきちんと届くようになれば嬉しいです。
だからこそ、たとえばこれからはこのMDR-1Aで聴いてもらうためのレコーディング/ミックスをしてみたらものすごく面白いんじゃないかな。たとえば生の弦楽器の弦のこすれる音とか、息づかいとかリズムの響き、それぞれの音の重なりをより味わうことができるような音楽を作ることができるだろうと思います。僕自身も今後、実験的なことも含めていろいろと音作りを試してみたいですね。
そしてこれほどの再生環境が一般化すると、僕ら人間の音楽の作り手は、自分の耳とリスニング環境、そして自らの音楽そのものに賭けるしかなくなるだろうなとも思います。だって、僕らが聴こえる以上の音が再生されてしまうわけですから(笑)。きっと今後はハイレゾ音源はもちろん、通常音源であってもこのレベルのヘッドホンで聴いてもらうことが前提になってくるのかもしれませんね。次の新作シングルはアナログレコード(手回し・段ボールレコードプレイヤー付き)なんですが、アナログレコードは、ハイレゾ同様、CDよりも可聴帯域が広いですよね。アナログレコードでこのMDR-1Aがどう響くのか、ぜひ試していただきたいと思います。もちろん色々なハイレゾ楽曲も、100kHzの部分がどんなふうに聴こえるのか、僕自身、すごく楽しみです。