ブルースやフォークミュージックをルーツとするシンガーソングライター、ギタリスト。音楽プロデューサー。2004年に1stアルバムを発表。現在までに6枚のオリジナルアルバムをリリース。代表曲「おだやかな暮らし」は、クラムボンなど多くのアーティストにカバーされている。自身の活動に加え、映画音楽、楽曲提供、CM音楽やナレーションなど、“音”に関わる幅広いジャンルで活躍中。
(長い時間試聴して)……なるほど、いいですね。このMDR-1RMK2は音の空間が広くて、非常に立体的な音が聞こえてくる。ひとつひとつの音が粒立っていて、さらにそれぞれが上手く響きあっているような印象です。一方で少しコンパクトなこちらのMDR-10Rは、音に勢いがありますね。音楽そのものがひとつのかたまりになって聞こえてくるという感じかな。(MDR-10RCを手にとって)こっちは折りたためるんですね。デザインは踏襲されているけれど、持ち運びにはこちらのほうがいいかもしれませんね。どちらのヘッドホンも、それぞれの個性でとても快適な聴かせ方をしてくれていると思います。
より具体的に言うと、どちらのヘッドホンもドラムのニュアンスがきちんと聞こえてくるのが印象的でした。シンバルのうねりとか、倍音がすごくよく伝わってくる。自分のアルバムのなかでもほとんど一発録りの『ストレンジ・フルーツ』と、NYのスタジオで録音した『Music From The Magic Shop』の両方を試しましたが、レコーディングをしたときの音の記憶が蘇りました。そうそう、こう聞こえていたよな、と。
実は僕、今まではほとんどヘッドホンを使ってこなかったんです。音質の問題なのかどうか、ちょっと耳が痛くなってしまうような印象があって。特に最近の音の傾向として、高音と低音だけを強調しているものがよくあるんですが、ああいうサウンドをヘッドホンで聴いちゃうとちょっと辛い。もしかしたら僕の耳が“古い”だけかもしれませんけれども(笑)。でも、演奏や歌はもちろんだけど、音が鳴っている空気そのものも含めたすべてが「音楽」なんじゃないかと思うんです。僕はそれをきちんと聴かせたいし、それを聴きたいとも思う。
このヘッドホンのシリーズは耳が痛くなるということが全くないですね。音自体にも無理がないし、耳と接する部分も、非常に良く考えられていると思う。特にMDR-1RMK2は、大きな音で、この“音の空間”に浸りたいと思わせてくれるヘッドホンだと思います。そうだな……今度はこれで、たとえばジョアン・ジルベルトを聴いてみたいですね。彼の作品のいくつかは、歌と演奏、そしてそれを録って聴かせようという意志がぶつかった、究極のものだと思うんですよ。それをこのヘッドホンで聴いてみたいですね。