日本大学芸術学部音楽学科卒業。映画やドラマの劇伴、TVCM音楽、番組テーマソング、ゲーム音楽など幅広いフィールドで作曲活動を展開中。 生のオーケストラから打ち込みまで楽曲に応じてさまざまなスタイルで制作し、鍵盤楽器は自ら演奏する。また、近年では楽曲中に自らの歌声を調和させる手法が注目を浴びている。
中野カリンです。映画やドラマ、TVCM、番組テーマソングなど映像作品のための音楽を多く作らせていただいています。
今回このMA900を試させていただいて、まるでコンサートホールのようなヘッドホンだなと思いました。音がそこで鳴っているということが、空気感や生々しさといっしょに伝わってくる感じです。音楽や演奏者の「圧」と同時に、天井の高さや音の残像までもがすごくクリアに聞こえてくる。フルオープンエアータイプのヘッドホンを試すのは初めてだったのですが、新しい音の楽しみ方の提案なんだなと思いました。
ひとことでクリアな音と言っても、色々なクリアさがあると思うんです。たとえば私も作曲や編曲の仕事をしているときには、ひとつひとつの楽器の音像を精細に聞き取りながら自分の音楽を完成させています。つまり、分析的なクリアさですよね。でも、そのクリアさは、長い時間をリラックスして音楽を楽しむのにちょっと向いていない。このMA900はちょっと違っていて、音楽全体を、とても心地のよいクリアさで聞かせてくれるヘッドホンだと思います。
音楽の作り手としては、音全体をひとつの音楽そのものとして聞いて頂きたいと思っています。もちろん精細な部分のこだわりを味わっていただくのも嬉しいのですけれど(笑)。モニター用ヘッドホンとは、違った意味で非常にハイレベルなヘッドホンですね。私は「仕事耳」「くつろぎ耳」と呼んでいるんですが、このMA900は、「くつろぎ耳」にフィットするヘッドホンと言えるのではないでしょうか。
今回は野外コンサートのDVDをPCで再生し、このMA900で試聴してみました。すごくいいですね。夜風が弦楽器の音を運んできているのがわかります。マイクの位置や楽器との距離もわかって、演奏者の息づかいが伝わってくるような臨場感があります。PCのスピーカーで映画を観るのは少し寂しい気もするので、音楽はもちろんのこと、PCで映画を観たり、動画サイトで映像を見たりする際にもとてもいいのではないかと思いました。
ひとことで言うと、MA900はすごく心地のいいヘッドホンです。音の心地よさというのは、音が自然に聞こえて無理がないということだと思うんです。このヘッドホンで、脚色のないピュアな音、音そのものが空気を鳴らしている自然な心地よさ、音楽というものの素敵さをぜひ皆さんにも味わって頂きたいですね。一音楽家としても、音楽の魅力をより多くの人々に感じるきっかけとなることができればとても嬉しく思います。