α Universe editorial team
CM、ミュージックビデオ、ライブ映像など様々なコンテンツを年間約50本手掛ける映像監督・奥藤祥弘。同世代の監督からの信頼も厚い、奥藤監督からみたα7S Ⅱの魅力とは。
カメラのスイートスポットを探す
―普段からカメラの研究をよくされていると伺いました。それはなぜですか?
昔からカメラの一番いいところ、テニスでいうスイートスポットみたいに、機種の一番いいところはなんだろうと探るのが好きなんです。だからオフや実際の現場では、何度も何度も試します。監督に専念するため、自分のカメラをカメラマンに渡して撮影してもらうこともあるのですが、初めて使う人にも設定を覚えてもらわなければいけないので、誰よりもカメラのことを把握しておかないといけません。
―奥藤監督が見つけたスイートスポットを教えてください。
野外撮影などで、太陽の光が強く当たって明るすぎるところからかなり暗いところに変わっていくところのシーン。こういう明度が極端に変わるシーンでは、可変式のNDフィルターを用いながらS-Logで撮るようにしています。
α7S Ⅱでは、Logの設定にすると最低ISO感度が1600に固定されますが、私はあえてISOを6400など高感度にし、周囲の明るさに応じてフィルターのリングを回転させ入射光量を調節しています。S-Logで撮っておくことで広いダイナミックレンジで押さえることができるので、後処理での明度調整の自由度が格段に上がります。ISOと絞りで合わせて明度を調節するとカクカク落ちてしまう一眼ムービー撮影ならではの弱点もこれで補っています。
―NDフィルターもそうですが、装備にもかなりこだわりがあるように見受けられますが。
ケージはムーブカムのα7S Ⅱ専用のものを使用しています。手ブレをおさえるビデオ撮影ならではの持ち方ができ、モニタ―もつけられます。不注意でカメラを落としたときのガードになりますし、装着した状態でバッテリーの交換が可能、ライトもつけられます。
ビデオレンズに見劣りしない
動画撮影でもストレスなく使えるFEレンズ
―今回アメリカ3都市(ロサンゼルス・サンディエゴ・サンフランシスコ)での撮影にαのVario-Tessar T FE 24-70mm F4 ZA OSSを使用されたとのことですがいかがでしたか?
あるロックバンドのUSAツアーに同行し、一週間、彼らのライブとドキュメントを撮影した際、使わせてもらいました。他のレンズと比べディストーション(歪み)が少なかったのが印象的でしたね。特に驚いたのは、ズーム時の画角の軸ズレの少なさです。一眼レフのレンズってズームをするとフォーカスが焦点距離によって左右にずれてしまうことがよくあるのですが、このレンズはそういうことがなく、演出的なズームをしたいときビデオレンズと同じような感覚でスッとズーミングして撮影できました。
また、本体側の手ブレ補正とレンズ内の補正が合わさって、5軸の手ブレ補正として効くので、安定したフレーミングでの撮影が可能です。僕がいつも使っているレンズは手ブレ補正がないので、普段からブレないように太ももを鍛えているのですが、このレンズがあれば、もう鍛えるのをやめようと思いました(笑)。
操作性をよりよくするために
自分だけのボタンカスタマイズ
―奥藤さんがされている、動画撮影時のボタンカスタマイズを教えてください。
監督、撮影ともに自分でやらなければいけないときや状況が過酷な撮影状況などでは、なるべく迅速にできるようなセッティングにしています。
C1:ピクチャープロファイル
C2:ガンマ表示アシスト
C3:オートフォーカス・マニュアルフォーカス
C4:全画素ズーム
ジョグダイヤル:ISO感度
ジョグダイヤル下ボタン:ホワイトバランス
ジョグダイヤル左ボタン:手ブレありなし
前ダイヤル:絞り
後ダイヤル:シャッタースピード
―奥藤さんのパフォーマンスを最大限引き出すために欠かせないムービー撮影の周辺機器「3種の神器」は何でしょう?
ケージ、NDフィルター、あとはモニターですね。でも、本当に大切なのは「撮影する心」だと思います。僕はこれだけの機材を持っていますが、これだけ持っていても、やはり大事なのは相手との距離感や、被写体が持っているものを引き出すことで、それを撮り逃さないために、自分なりにカスタマイズをしているということです。結局は、撮るものがあって、撮るべきものがあって、見せたいものがあるから、カメラやライトなどの機材を充実させているのだから、撮影する心こそおろそかにしないようにしています。
おくとう・よしひろ
1985年生まれ。
impress、P.I.C.S.を経て、2011年よりフリーランス。
様々なコンテンツをハイペースで制作する、若い世代を代表する映像作家。
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