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「私説・大磯百景 撮影録」
七月

七月はもう夏の始まり。でも真夏のような抜ける青空はまだやってこない。夏を予感させる海辺の写真を五枚ほど。。ちょうど七夕の頃の海のイメージですね。

自分の中にこういった写真が撮りたい、またはこういった写真になるだろうという予測や計画があって、写真を撮りに出かけるということはよくあることですが、本当のことを言うとそれだけではつまらない。ある風景を見て、ある人物を見て、それで自分の考えが変わる。つまり新しい自分に出会う。それでその新しい自分が写真を撮る。それが新しい写真ですね。「いい写真」とは、ちょっと乱暴な言い方だけど「いい写真家が撮る写真」ということだと思います。ではいい写真家とはなんでしょう。予定調和で撮影を終わらせない写真家です。新しい写真が撮りたければ、自分が新しくなること。もっと言うと、優しい写真が撮りたければ、、強い写真が撮りたければ、、みんな同じですね。優しい人になったり、強い気持ちを持ったりしなければなりません。写真には自分が写っています。

「北浜のスーパームーン」

大磯漁港の北東、北浜と呼ばれているピーチの沖には兜岩が浮かんでいます。スーパームーンの夜、薄い雲がかかって月の出は見られなかったが、少し時間が経ってから雲の切れ間に赤くなった月がぼんやりと顔を出しました。雲の芸も波の芸も何にもない静かな夕暮れ。何年かに一度の特別なスーパームーンを、岩上の海鵜とともに見ていました。まあ波は高くないと言っても風はあったので、ここは少しは風に散る波しぶきを表現したいところです。それで絞りを開けて少し早めのSSで。

α7R|70-200mm F2.8 G 1/200sec F2.8 ISO 800

「こゆるぎ浜の少年たち」

夕日が落ちる頃、浜に座っていると少年たちが遊びにやってきた。磯っこたちはよく浜で遊ぶ。もう日差しはないが空は明るいので、少し離れたところまで歩き、シルエットで群像として写真にできると思いました。こういう写真はシャッターチャンスが全て。いい瞬間を逃さないように息を詰めて撮影することになります。写真では見えないが少年たちの後ろは海、遠くに見える雲は伊豆半島の山々に架かる雲。壮大な自然の中で遊ぶのが当たり前の、海辺の子供達の無邪気な気持ちが伝えたい事です。

NEX-5|18-200mm F3.5-6.3 1/1000sec F8 ISO 200

「こゆるぎ浜・海に還る」

海に出てみると強風に雲が流れて波もそこそこ大きく浜には誰もいない。ふと「海に還る」という言葉が頭に浮かびました。何が海に還っていくのかはわからないけれど、ワイドで波寄せ側まで距離を持った写真にしようと思いました。例えばウミガメが長い距離を歩いて還るのでもいいが、どうも今日は自分の中にある遠い原始の記憶が、海に帰りたがっているような・・。いやいやそれは大げさだと笑われるかもしれない。しかし写真というものはハッキリ言葉で書くわけではないので、話せば気恥ずかしくなるような思いを持っていたとしても、その気分を持って撮影しても、何も恥ずかしいことはない。ただそれが言葉にできない特徴となって作品に表れることは確かだと信じたいと思います。

α7R|SWH 15mm 1/640sec F8 ISO 200

「こゆるぎ浜・夜の波音」

深夜。夜の海は、真っ暗な波の音が轟いて、ちょっと怖い気がします。曇ってほとんど星も見えない夜、浜辺に座って波の音を聞いていました。しばらく座っているとだんだん目が慣れて波の白いところが見えるようになってきます。今のカメラは優秀なので、肉眼で見えなくても昼間のように撮れたりするけれど、ここはやっぱり暗く、しかし微かに波が見えるくらいに撮りたい。怖い感じにはしないで少しファンタジーになるといい。そう思って色んな設定を決めました。あまりISOを上げないことと、波のぶれ方がいい感じになるシャッタースピード。色合いは少し青く、深い色。全部がぶれては面白くないので、浜の石は細密に撮りたいと思いました。

α7R|16-35mm F2.8 ZA SSM 30sec F4 ISO 400

「こゆるぎ浜・月と雲」

面白い雲が月のすぐ上を横切っていました。これは夕日に映えて赤くなっている雲なので、月の明るい部分はもっと右下(太陽の方角)を向いているんですが、ちょっと縦位置にした時の雲の角度が気に入らなかったので、少し写真を回転して構図を整えました。インチキだと言えばそうなのですが、まあ天文学の教科書に載せる訳でもないので勘弁してもらいましょう。先月に続いてこの写真も造形写真ですね。これは別に大磯でなくても撮れるというか、大磯はなんにも写ってないわけですが、こういうのが時々入ることでシリーズ全体に厚みが出ると思っています。この月の細密さは、やっぱりRですね。

α7R|Tele-Elmar-M 135mm 1/8000sec F4 ISO 800

じゃあ、今月はここまで。また来月お目にかかります。

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