写真は二度撮られる。それはシャッターを押す時と、撮影した中から一枚の写真を選ぶ時。
皆さんは写真を撮る時、一つのシチュエーションで何枚もの写真を撮るでしょう。被写体の動きや背景の変化につれて角度や構図を変えたりして何枚も瞬間を選択するのが撮影です。そしてその時撮れた何枚もの写真の中から、後で一枚の写真を選ぶわけです。選ばなければ作業は完成しない。二度撮られると言ったのは、この二度の作業で一枚の写真は決定されるという意味です。
この二つの決定作業は違う精神状態でなされます。撮影中は夢中になって、そうですね、子供のようになってと言ってもいいかもしれない、つまり自我を解放して写真を撮ることになるだろうし、後でPCの大きなモニタ上で選ぶ時は冷静に、写真を見る人のことも意識しながら選ぶことになる。この二つの違った自分の視点からの選択が写真の完成度を高めるわけです。
デジタルカメラでは撮影してすぐに背面液晶で再生ができるので、皆さんは撮影時に時々、どんな風に撮れているか確認をしているでしょうが、上に書いたように撮る行為と選ぶ行為は本来作者の視点が違うはずのものです。アドレナリンが出ている撮影時のモードと、冷静になった選択時のモード。二つのモードを通過したからこそその作品は面白いと言ってもいいですね。ですから、撮影中の再生確認は最小限にしてもらいたいと思うのです。チラッと見てすぐに撮影に戻って欲しい。そうしないと何が起こるかというと、つまりどっちのモードが心の多くを占めてしまうかというと、冷静になった選択時のモードが優先されることが多い。選ぶ時の気持ちに引きずられて熱くてスリルのあるはずの撮影が、妙に醒めた考えられたものになってしまう。語弊があるかもしれませんが写真がデザインや絵画のようになってしまう。いや無論そういう写真もいいのです。しかし写真らしい臨場感、偶然性、作者の動物的反応、の面白さは無くさないでいきたいと思うわけです。
できれば撮影中の再生は無しで。。プロやほんとうになれた人でも、この二つのモードの行き来は本当に大変なのです。え? 失敗したくないから再生して確認しなくちゃって? 気持ちはわかるけど、そうですね、失敗した方がいいんじゃないですかね。60点を量産するより、0点九枚と、100点一枚を撮った方がいい。たとえ今日は0点10枚でも、その悔しさと教訓が次の撮影の時一層の集中を生み、一枚の100点を生み出します。ほら、「失敗は成功の母」というじゃないですか。^^
「こゆるぎ浜・夕散歩」
大磯町西部、国府本郷にある旧吉田茂邸の前のビーチには不動川が流れ込む。河口にはドラマがありますね。ホリゾンタルなラインが多くなりがちなビーチでの作画に、縦の物語ができる。カメラを水面すれすれにして空の写り込みを楽しんでいると、若い女性が大きな犬を連れて夕方の散歩に来ました。いい場所に立ってね〜。と祈りつつ写真にしたものです。
「こゆるぎ浜・嵐の過ぎた朝」
台風が去った午後、日差しが浜に入り、まだ荒れ狂うショアブレイクの波濤を照らす。台風の最中は、当たり前だけど写真にならない。雨風や波のしぶきがすごくて、勿論危険で浜に出るなんてとんでもないが、たとえ出ても何も撮れない。嵐が来る前の日か、去った後に大波の写真が撮れる。しかしやはりマジに危険なので、小澤は腰に命綱をつけて万一に備えています。
「こゆるぎ浜・月と少女達」
トンネルをぬけて海に出ると、7、8人の少女達が円になって談笑していた。二十代から中学生までの七人。ここは土地の人以外にはあまり知られない場所なので、まわりには誰もいない。可愛らしい少女達は広いビーチを独り占めにして歩き回っていた。 まあ、ちょっと仲良くなった(?)ので写真を撮ったのだけど、Facebookをやっているか、と言う話になって、そこから落とすので、あたしたちの写真をアゲてくれ。と頼まれた。便利な世の中になったもんだ。みんなぁ。見てるかな。。ジャンプの決定的瞬間に月と飛ぶ鳥を入れたのが芸。^^
「こゆるぎ浜・小石と私01」
強い日差しの快晴の日。浜で小石と出会いました。そして、ふとこれは宇宙のカケラなんだと思った。空にある太陽は巨大なもので、小石は比べ物にならないくらい小さい。しかし小澤から見れば小石の方がずっと大きい。当たり前のことだけど、なんだか大事なことを思ったような気がしたのです。この日はまた深夜に同じ場所に行って、今度は月と星と一緒にこの石を撮りました。しつこいでしょ? 波が洗う浜にあったので、この小石が今はどこにあるかわからないけど、この写真があるので、小澤には相変わらず愛しい小石です。
「月の西湘バイパス」
気分を変えて、綺麗な夜景を。空のトーンが少し明るいのは、この背景の方角が平塚や茅ヶ崎、藤沢、遠くは横浜、東京方面なので、夜でも真っ暗にはならないのです。星を取る人たちはこれを「光害」なんて言っていますが、まあ都会というものがあるんだからしょうがない。海が月を映して光っていたので、バイパスの部分は三枚ブラケットの多重露光で光跡を増やして賑やかにしました。絵葉書的だけど、こんな写真も安心感を持って見られるので好きです。
さて今月はここまで、また来月まで、楽しく写真しましょう。
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