α6300 × Motor Sports Impression
レーシングフォトグラファー 大西靖氏
レースの撮影は、結果が求められる厳しい現場
・今回、α6300を使用してモータースポーツの中でも最高峰のカテゴリーである、スーパーフォーミュラを撮影していただきました。
大西さんは、スーパーフォーミュラの公式カメラマンとしてレースを撮影されていますが、普段はどういったカメラで撮影されていますか?
(大西)
レースの撮影では、ハイエンドのフルサイズ一眼レフを2台使っています。1台には標準ズームレンズを、もう1台には400mm位までの望遠ズームレンズか、500、600mmの望遠単焦点レンズを装着して撮影しています。
・フルサイズの一眼レフに、超望遠レンズ、ハイエンドのカメラボディと超望遠レンズを使用することは、やはり譲れないポイントなのでしょうか。
(大西)
そうですね。プレスとして写真を撮っているカメラマンは、最終的に報道用の写真を納品できて初めて仕事になりますから。結果を残すために、特にオートフォーカスと連写性能が最良の機材を選ぶ人は多いと思います。
トップフォーミュラに追いついた、
進化したフォーカス性能
・そんな中で、今回α6300と、FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSSの組み合わせを中心に使用してみて、特にオートフォーカスという面でどうでしたか?
(大西)
昨年、α6000で同じ第2戦の岡山ラウンドを撮影していたので、ある程度は想像できていました。今回は300mmのレンズが使えるので、マシンを大写しにした迫力のある構図で撮影することができました。
まず感じたのは、オートフォーカスが良くなっていたことでしたね。α6000よりも食いつきと追従性が良くなっていました。このコンパクトなボディからは本格的な望遠レンズをつけての撮影は想像できないでしょうが、いざ望遠レンズをつけたら、非常に動きの速い被写体に対しても撮影ができる。
また、解像度(*)も普段使っているカメラよりもあるのに、秒間11コマの連写で追い続けられる、これは凄いことだと思います。
(*)有効2420万画素
・なるほど、具体的にはどんなシーンで、それを実感しましたか?
(大西)
例えばこの写真は、コーナーを立ち上がって加速しているマシンを写したものです。スロットル全開なので、思っている以上に速くマシンが迫ってきます。オートフォーカスが追従するのは結構難しいんですが、このシーンでは一度追従させたらピントが食いついて、満足のいくカットが撮影できました。
一方こちらの写真は、思い切りマシンを大写ししました。これだけ大きく写すと、本当にオートフォーカスの追従速度がものを言うんですが、最新の70-300との組み合わせで、なんとか撮ることができました。
・これらの写真は、どういう設定で撮られましたか?
(大西)
撮影中はほとんど、AFモードはAF-C、連写は一番速いモード(*)にして、タイミングをみて2〜3枚の連写。 AFエリアは「拡張フレキシブルスポット」で撮っていました。これは普段僕が使っているカメラとほぼ同じ設定なんですけど、AFポイントをダイレクトに背面のキーで選択できるようになっていたのも助かりました。
((*)ドライブ「Hi+(11fps)」
カメラマンの表現意図をしっかり体現するレンズ
・オートフォーカスについてのインプレッション、ありがとうございました。一方で、FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSSの 描写力はいかがでしたか。
(大西)
このレンズは良かったですね。この写真は、予選前の緊迫したドライバーの表情を撮影したものです。望遠レンズはこうした、ドライバーの緊張感ある表情を押さえるためにも使いますが、このレンズは文句のない画質で応えてくれました。
この日は曇りで、ピットの中にいるドライバーを撮るには光量が足りないので、絞りは開放。カメラの感度も上げなきゃいけないので比較的厳しい条件だったんです。
開放が甘いレンズだと質感表現ができないですから、ドライバーの表情をカリッとリアルに表現するには、どうしても絞らなきゃいけない。真剣な表情をしているのに、ぽわーっとした絵だと締まりませんから。でも、そうするとカメラのISOが上がって、どうしても画質が悪くなってしまって、悪循環なんですね。
その点、α6300と70300G(※)の組み合わせは、絞り開放にも関わらず血走る目と肌の質感を十分な解像度で表現してくれました。よく見ると、コンタクトレンズまで見えている位です。
(※)FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS
機動性の良さが、あらたな表現意欲を掻き立てる
・なるほど、α6300とFE 70-300mm F4.5-5.6 G OSSの組み合わせは、オートフォーカス性能、そして画質の面で満足のいく結果が残せた、ということですね。一方で、α6300は非常にコンパクトなことも特長ですが、機動力についてはいかがでしたか?
(大西)
機動力は、このカメラの真骨頂じゃないでしょうか。これから挙げる2枚の写真は、カールツァイスの標準レンズ(※)で撮影したものですが、この組み合わせだと、とにかく身軽です。
(※) Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS
・その身軽さは、レースの撮影ではどういったシーンで活きるのでしょうか?
(大西)
それはピットレーンとか、選手とマシンに寄れる撮影ですね。
例えば下の写真は、一眼レフではノーファインダーで撮る構図ですが、チルトする背面液晶を使ってサクッと撮影できました。ライブビューでもオートフォーカスが快適なのがいいですね。
一方で次の写真は、広角で発進する車体を流し撮りしたものです。こういう時、ノンフラッシュでもいいのですが、フラッシュがあるとより、被写体を写し止めやすくて便利なんです。 α6000もそうでしたが、コンパクトなボディにフラッシュまで内蔵されているのは非常に便利です。もちろん本格的なフラッシュを付けた時のように、発光させながらバシャバシャ連写はできませんが、その分軽くてフットワークがいい。足でカット数を稼ぐにはもってこいですね。
十分な耐久性を持ち合わせた、進化した機動力
・具体的な作品での解説、ありがとうございました。最後に、α6300を「レースの撮影」という過酷な 仕事現場で使ってみて、どんな感想を持ちましたか。
(大西)
α6000に比べて、持ち前の機動性を維持しつつ画質とオートフォーカス性能が改善され、上位機種としていい方向に進化していると思います。
今回は敢えて、普段仕事で使っている機材と同じ使い方で同じ写真を撮りましたが、オートフォーカスは頑張っているな、と思いましたね。光量が足りなくてコントラストが低いシーンでは多少食い付きが弱かったり、精度面で苦戦する場面はあったものの、一度被写体を捉えると頑張って食いついていました。それもトップレベルにスピードレンジの高い難しい被写体を相手に、ですからね。
最初にも触れましたが、プレスで撮影している身としては、やっぱり最終的に写真を納品してなんぼですから。条件が悪くてもしっかりマシンやドライバーを写し止めなければなりません。
スローシャッターの流し撮りや光を活かした表現を追求することもありますが、今回の岡山ラウンドのように週末へむけて天気が崩れていく環境の中では、まずはしっかり納品できるカットを押さえることが最優先です。
そうすると、ある程度シャッタースピードを上げるので、高感度まで使わざるをえません。それはカメラに対しては厳しい条件だったと思います。普段、もっと画素数の少ないフルサイズでもISO1600以下で撮ることが多いんですが、APS-CならISO800では厳しいのでは?と思っていました。でも結果をみたら、ISO800でも十分納品に耐える画質を提供してくれました。あと、最後の日曜日のグランプリは大雨だったので濡れながらの撮影でしたが、最後まで問題なく使うことができました。小さくても防塵防滴(*)なのは大切ですね。もちろん移動時は着ている雨ガッパの中に入れて、最大限濡れないようにはしていましたが、それでも撮影中は濡れますから。この小さなボディで厳しい環境への耐久性を示してくれたことは、信頼感に繋がりましたね。
・ありがとうございました。
(*)防塵防滴に配慮した設計
撮影協力:P.MU/CERUMO・INGING 岡山国際サーキット JRP
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