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東京カメラ部10選 2012/2013
富久浩二〜後編〜
「一瞬に出逢う。一瞬を切り取る。」

α Universe editorial team

日常生活の中の決定的瞬間をドラマチックに捉えるスナップフォトを得意とする富久浩二氏。RX100 Vの連写性能を活かす一方、オールドレンズ+α7 IIで立体感豊かな作風の撮影も楽しんでいる。今回はα7 IIを使っての作品制作について伺った。

富久浩二/フォトグラファー 1970年福岡生まれ。2012、2013年「東京カメラ部10選」に選出。日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、人が入った物語のある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。 2011年 イギリスのマガジンCamerapixioにて日本人初の掲載 / 2012年 ナッジオのDaily Dozen2回選出/ 2012年 インドのAPF Magazine Street Photographyにて日本人初の掲載/ 2012、2013、2014、2015年イラクでの国際写真展に展示。

──α7 IIとRX100 Vとで撮影スタイルの違いはありますか? RX100 Vでは連写性能、サイズ感、シャッターの静音性などを活かした撮影をしますが、α7 IIにはマニュアルフォーカスの単焦点レンズを付けっぱなしにしています。α7 IIを使う場合は立体感のある写真を撮りたいときです。被写界深度の浅さや階調の豊かさなどを重要視しており、絞り込んだ撮影をすることは少ないです。

──ぼけ味がとても美しいですが、使用しているレンズはなんでしょうか。 MD ROKKOR-X 50mmF1.2という大口径標準レンズを使うことが多いです。例えばこの写真は、金網を挟んで花が両側に咲いていて、金網の切れ目である端っこからカメラを構えて撮影しています。メインの被写体である花の位置で拡大表示をしてフォーカシングをしています。明るいマニュアルフォーカスレンズを使う場合は拡大できることはとても大切ですね。初期設定のまま「C1」ボタンに拡大表示を割り当てています。ピント精度の高さは光学ファインダーの一眼レフとは段違いだと感じています。

──オールドレンズもミノルタ派なんですね。 わたしは写真教室を主宰していますが、ぼけの解説をする時には威力絶大なんです。F1.2の開放F値だと、背面液晶の小さな画面で見ただけでぼけの豊かさがわかるんですよね。ソニーにもGマスターレンズがありますが、ミノルタAF時代のGレンズも使います。純正アダプター「LA-EA4」を使ってα7 IIに装着するとAF撮影ができ、画質面でも十分に緻密な描写を楽しむことができます。ミノルタ製のレンズは発色の傾向とぼけのやさしさが好み。ソニーのGマスターレンズもその思想を受け継いでいるそうなのでいつか使いたいと思っています。

──この写真のぼけ味、軟らかな描写はオールドレンズならではですね。 現行レンズではクッキリと写りすぎてしまい、個性を出すのが難しくなってしまう場合があります。わたしの中でオールドレンズを使うことは差別化するためのひとつの手法。後処理で対応ということもできるが、やはりレンズ固有の描写はなかなか出しづらいと思っています。ただ、それだけでも偏りが出てしまうので、新旧のレンズを使い分けできれば最高ですよね。α7 IIであれば、オールドレンズであってもボディ内手ブレ補正が使えますし、一眼レフ用だけではなくレンジファインダー用のオールドレンズも装着可能です。しかもフルサイズ。やはりレンズの周辺部の味は欲しいので、α7シリーズは唯一無二の選択肢ですね。キチッと撮ろうと思えば最新レンズも豊富にラインアップされていますし。

──オールドレンズ使用時の設定のコツはありますか? 焦点距離設定だけは見直すようにしています。日中の撮影では大丈夫ですが、夜の撮影では焦点距離が正しく設定されていないと手ブレを起こします。

──現行レンズも併用しているのですか? ツァイス製のLOXIA21mmF2.8はよく使います。また、最近はモニターとしてFE 12-24mm F4 Gを使ったのですが素晴らしいですね。画角のインパクトも描写の素晴らしさもあり、このレンズの良さを活かすために珍しく森に撮影に行きました。あまり出掛ける機会がないだけで、森でも楽しく撮ることができるタイプです。

──EVFと背面液晶のどちらを使いますか? 基本的に背面液晶です。EVFはよほどの晴天時で見づらい場合のみ。カメラの高さに制限が出てしまいますからね。いろいろなアングルから撮るのはわたしの強みのひとつだと思っています。この野球少年の写真もかなりのローアングルからです。走っていき、構図を素早く決めて撮影しました。

──被写界深度は浅いなか、MFで素早くフォーカシングができるわけですね。 拡大表示に加えてピーキングを併用しています。チラチラッと赤くなるとわかりやすい。「赤+低レベル」という設定が基本で、被写体によって色を変えています。強くすると赤のチラつきが気になりすぎてしまうので、弱めの方が好みです。敢えてどの部分にもピントが合っていない写真を撮ることもありますし、わたしにとってはMFが極めて普通で、逆にAFレンズは1本しか所持していません。

──さまざまなパターンの作風がありますが、ここまで豊富な視点というのはどこからくるのでしょう。 ライブビュー越しで被写体を探すよう心掛けています。ライブビューの映像はそのまま写真になるので、自分の眼で探すよりもはるかに正確。街中にある反射する材質のもの、柵、穴などにレンズを近づけてみて、ユニークに写るものを常に探しています。例えばテレビがあったら、そのテレビが何を見ているのだろう、と考えるんです。視線を変えるという作業。カッコイイ人が歩いていたらストレートにその人を撮るのではなく、なにかにその人が反射していないかを探します。また、ライブビューなら構図の最後のひとひねりが簡単にできますよね。高さや角度を自由に変えることができるのは、ミラーレス機の強みだと思います。

──RX100 Vの写真とは撮影の視点は似ていても、仕上がりそのものはかなり違いがありますね。 絞り込んだ写真とぼけのある写真の両方が好きなんです。2台持ちのバランスはとても良いなと思っています。

──バッテリーの持ちなどはいかがでしょう。 α7 IIをMFで使う場合、ミラーレス機でありながらかなり持つほうだと思います。ただ、スタンバイ状態が長時間になるとバッテリー消耗は進みますので、必ず予備バッテリーと外部電源を持ち歩くようにしています。USB給電ができるのは本当に便利ですよね。撮影会でも必ず何人かはバッテリー切れになるので、外部電源は欠かせないアイテムです。

──今後、このようなαが欲しいというようなリクエストはありますか? 超広角レンズが搭載されたRX100シリーズは欲しいですね。建物や交差点をモチーフにすることも多く、やはり画角が広いほうが迫力のある切り取り方ができるんです。あとはα9の導入は検討しています。その場合は純正レンズも同時に増強して、フルサイズでありながらRX100 Vの連写性能を活かしたような撮影をしてみたいです。ただ、もしもα9を使うようになったとしても、サイズの面からRX100 Vは保持するでしょうね。とにかくいつでもカメラを持ち歩き、日常の移動の中から何かを見つけるのが本当に楽しいので。仕事中、デスクに向かっているときは例外ですが、一歩外に出ると写真のことを考えてしまうんです。でもまったく疲れません。楽しいことをしている、という脳に切り替わっているんでしょうね。これからもαを相棒に、さまざまな作品を撮っていきたいです。

「東京カメラ部 10選 コラボトークショー 〜αの使い手が魅せる新表現〜」

αを使用して数多くの写真表現を生み出している、東京カメラ部10選 黒田明臣さん・富久浩二さんの2名が集うコラボトークショー。それぞれの写真哲学・撮影秘話・αを使用した撮影術などリアルに語っていただきます。 ◇日時:11/11(土)1回目13時〜、2回目16時〜 ※同様の内容で2回興行 ◇場所:ソニーショールーム/ソニーストア 銀座 4階
〒104-0061 東京都中央区銀座五丁目8番1号 GINZA PLACE 4階
https://www.sony.jp/store/retail/ginza/index.html ◇対象:無料。どなたでも参加いただけます

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