撮影しながらその場で作品に仕上げられる「ピクチャーエフェクト」は、デジカメならではの機能だと思いました。その中でも「ミニチュア」が好きですね。子どもの写真を撮るときに本人を撮るのではなく、仕草や日常の一瞬を「ミニチュア」で撮るとすごく生きてくる。「ミニチュア」を使えば周りがぼけて、主役をよりたたせることができます。ぼけをどう生かして撮ればいいか分からない人にも手軽にぼけ写真ができて、ぼけ表現を楽しむいいきっかけになると思います。また陰影を生かしてメリハリをつけたいときに「ハイコントラストモノクロ」を使うと、印象的なモノクロ写真に仕上がりましたね。
夕方の時間帯では、普通に撮ると暗いイメージになってしまいがちですが、温かみを持たせるために「レトロ」を使ってみました。ホワイトバランスを日陰にして黄色を強調しつつ、温かみを増やすようにしています。こんな風に「ピクチャーエフェクト」を使うと新しい視点が増えていきますね。いくつも撮り重ねていくと「ピクチャーエフェクト」に合うシーンを見つけられるようになりますし、そこから新しい発想が生まれてきます。普通の撮り方プラスアルファの表現が、手軽に、だれにでもできるし、いろいろな写真が増えれば家族のアルバムもにぎやかになりますね。
ポートレートだけでなく写真はその場の発見を取り込んでいくのが大切だと思います。窓に家族が対称的に映った写真を撮ってみましたが、こんな風に常におもしろい視点がないかなと探してみる。そうすると普段何気なく見ているものでも、写真家の眼になっていくことでおもしろい視点を見つけやすくなります。水たまりに映りこんだ空や、ガラスに写った笑顔。そういう発見を自分の作品のなかに持ってくれば写真が格段に面白くなっていきます。それに人と違った視点、新しい視点で自分を盛り上げながら撮っていけば楽しいですし、その写真を家族が見たときの反応も楽しみのひとつになるのではないでしょうか。
今回のポートレート撮影をしてみて思ったのは、“α65”の完成度の高さですね。シャッターチャンスで「いいな」と思ったときシャッターを押して、どこまでその瞬間に近づけているか。自分の持っているイメージと撮った写真との誤差がどれだけ少ないか。その誤差が少ないほどいいカメラだと思います。“α65”はそういう誤差がほとんどなかったですね。シャッタータイムラグも少なく、イメージして撮るまでが速い。それに約10コマ／秒の連写といい、有効約2430万画素のなめらかさといい、写りもイメージにどんどん近づけられる。そういう意味では自分のねらいをしっかり表現してくれるので、イメージを具現化しやすいカメラだと思います。ソニーが“α”を発売して6年強でここまで進化してくると、これ以上何が良くなるのだろうと思うくらい完成度が高いカメラだと思います。あとはレンズをどう選んでいくかというところまできていますね。レンズの組み合わせをいろいろと工夫しながら、自分の表現の幅をどんどん広げていける。そんな“α65”のポテンシャルの高さを、みなさんも楽しんでみてください。
1975年横浜市生まれ。23歳でフリーランスとして独立。ライフワークとしているモンゴルでは独自の視点で自然風景からドキュメントまで幅広く撮影。2005年『路上少年』で第1回名取洋之助写真賞受賞。2007年ＮＨＫ教育テレビ『趣味悠々』デジタル一眼レフ風景撮影術入門講師として出演。個展開催多数。公益社団法人日本写真家協会会員。
