HD番組と4K映像の効率的なアーカイブ、有効活用を目指して長期保存性、信頼性、後方互換性を保証するロードマップなどを評価しオプティカルディスク・アーカイブを導入、運用を開始。
株式会社 秋田ケーブルテレビ(CNA)様は、2015年3月にSWEV-N100A Archiveシステムとオプティカルディスク・アーカイブドライブユニットODS-D77Uを導入され、本格運用を開始しました。
同社 メディアクリエイト部 部長 斉藤洋樹様、同部 メディアクリエイト課 主任 小林拓也様にオプティカルディスク・アーカイブ導入の決め手、運用状況と成果、今後の期待などを伺いました。なお、記事は7月中旬に取材した内容を、弊社にてまとめたものです。
オフィスの一角に設置された棚管理でのアーカイブ保管スペース。オプティカルディスク・アーカイブはコンパクトで大容量、温度や湿度といった環境の変化にも強い信頼性・安定性の高さの点でも、保存環境をまったく意識することなく運用できます。
当社は開局以来、自社で制作した番組を地域の方々に提供するコミュニティチャンネルに注力しています。その一環としてデジタル化/HD化/ファイル化に早くから取り組み、XDCAM HD422カムコーダーPDW-680、XDCAM HDカムコーダーPDW-F355L、XDCAMメモリーカムコーダーPMW-200などによる取材・撮影から編集・送出、プロフェッショナルディスクの棚管理でのアーカイブと、ファイルベースのトータルワークフローを構築し、運用してきました。
今回、アーカイブシステムの更新を行いましたが、その理由の一つが、コミュニティチャンネルの一層の強化、充実です。2015年4月よりリニューアルされ、新生 CNAコミュニティチャンネルの放送をスタートし、より広範な秋田のニュース、スポーツ&カルチャー、お天気・交通情報、そして全国のケーブルテレビ局が制作した番組が楽しめるようになりました。これにより、保存対象となる番組が増え、必要となるディスク枚数や、書き出しを行うスタッフの負担も増えることになります。そこで、APC(番組自動送出システム)と連携することで効率的なアーカイブを実現するとともに、大容量のメディアの導入を検討することになりました。
PXW-Z100、PXW-FS7Kを導入して4K番組制作に積極的に取り組んでいます。これらの貴重な4K映像を長期間保存できることもアーカイブシステム選定の条件となりました。
アーカイブシステム更新のもう一つの理由が、4K化への対応です。XAVCフォーマット対応のXDCAMメモリーカムコーダーPXW-Z100(2014年導入)を1式、PXW-FS7K(2015年1月導入)を2式導入して4K番組制作に積極的に取り組んでいます。シリーズ初の4K制作となった全国ふるさとコンテンツ配信プロジェクト「けーぶるにっぽん」の第5弾「美・JAPAN」で当社の番組企画が選ばれました。また2015年4月からは、秋田の見どころを伝える29分の4K番組を月に1本制作しています。これらの貴重な4K映像を長期間保存できることも条件となりました。最終的にこうした当社の要望を満たしてくれたのがソニーから提案されたSWEV-N100A Archiveシステムとオプティカルディスク・アーカイブでした。
当初は、アーカイブメディアに光ディスクを使うオプティカルディスク・アーカイブか、磁気テープを使うLTOにするかで悩みました。単体コストや転送速度ではLTOに優位性があり、魅力的だと感じていました。しかし導入コストだけでなく、長期間保存するためのランニングコストや信頼性、安定性などを考えると、オプティカルディスク・アーカイブの優位性が明らかとなりました。私たちは、これまで実際にテープ媒体の再生事故を何度か体験していましたので、非接触メディアであることが安心材料となりました。また、LTOは、長期保存をする上では数年ごとに最新のメディアにデータを移行するマイグレーション作業が必要となります。オプティカルディスク・アーカイブは50年以上データが保存可能であることが実証されており、マイグレーション作業を最小限に抑えることができます。
一方、オプティカルディスク・アーカイブの唯一の懸念材料となったのが、サポート体制の維持でした。突然サポートが打ち切られた場合、対応に苦慮することになるからです。しかし、この点も、すでに国内外で高い採用実績と評価を得ていることや、後方互換性を保ちつつ記憶容量/転送速度の向上で、アーカイバル・ディスクの技術を活用したロードマップが策定されていることもあり、懸念が払拭されました。すでに発表されている第2世代モデルにも期待しています。
アーカイブシステム選定の条件の一つとした4K映像の保存においても、ODS-D77Uに標準でバンドルされたコンテンツ管理用ソフトウェア「Content Manager」を使用することで容易に行えます。XAVC 4Kのみならず、XAVC HD、XDCAMなど多彩なフォーマットのプロキシ映像の閲覧やメタデータの作成に対応し、コンテンツ管理を効率的に行える点も魅力です。
また、オプティカルディスク・アーカイブとともに導入したSWEV-N100A Archiveシステムでは、光ディスクの特長である高速なデータアクセスを生かし、オプティカルディスク・アーカイブと送出サーバー間での直接ファイル転送にも対応しており、より効率的な運用が可能になります。
オプティカルディスク・アーカイブを採用した新しいアーカイブシステムは、2015年3月より本格運用を開始しました。SWEV-N100A Archiveシステムとの連携でHD番組の効率的な保存・管理を実現しています。また、秋田の見どころをテーマに制作している4K番組は、大曲の花火大会や秋田竿燈祭りなどの秋田ならではの祭事や、世界自然遺産にも指定されている白神山地などの自然を対象としているので、ODS-D77Uを編集室に持ち込んで、基本的にすべての映像を残すようにしています。まもなくODS-D77Uをもう1台増設する予定ですので、より効率的にHD番組/4K映像のアーカイブが可能になると思います。
秋田の見どころをテーマに制作している4K番組は、ODS-D77Uを編集室に持ち込んで、基本的にすべての映像を残すようにしています。コンパクトに設計されたドライブユニットはちょっとしたスペースでも設置が可能です。
また、当社は光ケーブルを使ったIP 4K試験放送に向けて、今後コミュニティチャンネルの4K化にも積極的に取り組んでいくつもりです。そうした番組制作でも、保存した4K映像は有効に活用できると考えています。
実際に新しいアーカイブシステムの運用を開始して感じた成果の一つが、オプティカルディスク・アーカイブのランダムアクセスを生かしたニアラインアーカイブとしての活用です。必要なクリップにすぐにアクセスして二次利用することが可能です。たとえば、秋田のバスケットボールチームの試合を紹介する番組の制作では、特定の試合の一部のシーンが必要な場合でも、すぐに読み出して活用することができます。あくまでバックアップ用途のLTOですと、一度編集サーバーに取り込む作業が必要になりますが、そういった手間が必要なく便利です。今後本格化する4K制作でも有効に使えると考えています。
ソニーには、今後も、オプティカルディスク・アーカイブのサポートの維持だけでなく、4K制作機器の一層のラインアップ拡充と、保存した4K映像をより効率的に活用するアプリケーションの開発にも尽力してほしいと思います。
株式会社秋田ケーブルテレビ
1984年(昭和59年)設立、1997年(平成9年)に開局した秋田市を拠点とするケーブルテレビ局。2015年7月現在、およそ51,500の契約世帯にテレビ放送、インターネット、IP電話、そしてテレビをパソコンのように使えるスマートテレビなどを提供しています。開局以来、自主制作番組を提供するコミュニティチャンネルにも注力され、秋田の地域情報発信基地として地元の方々に親しまれています。さらに次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)の賛助会員である日本ケーブルテレビ連盟の一員として4Kコンテンツ制作・配信にも積極的に取り組んでおり、けーぶるにっぽん「美・JAPAN」での4K番組制作など、4K番組を積極的に制作、配信していく計画です。