国立大学法人東京大学 地震研究所様は、1923年の関東大震災を契機に、1925年に設立されました。地震・火山現象を科学的に解明し、それらに起因する災害を軽減することを使命にされています。この度、同研究所 地震火山情報センター様では、地震関連データの永久保管を目的にオプティカルディスク・アーカイブ(以下ODA)第3世代を導入されました。
この記事は2020年2月に、国立大学法人東京大学 地震研究所 地震火山情報センター 准教授の鶴岡 弘様に取材した内容を弊社にてまとめたものです。
東京大学 地震研究所についてはこちら⇒http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/
東京大学 地震研究所 地震火山情報センターでは、多種にわたる地震記録データの保存業務を担当しています。1つは古地震・古津波委員会が管理する記録データです。特にマイクロフィルムが多く存在しますが、管理や利用は大変です。もう1つは、日々増え続ける地震観測データです。
テレメータ装置・地震計で観測する波形情報は、全国1000以上におよぶ観測点から、データを収集し続けています。リアルタイムかつ連続の地震記録を取得し、時系列にデータが蓄積されていきます。データ収集に利用される装置も安価ではなく、特殊な環境に装置を設置するため、費用と工数がかかることからも、貴重なデータとなっています。
地震計による記録では、古くは「すす書き記録」を行っておりました。極めて細く記録できることから、紙媒体よりも鮮明に目視できる反面、劣化が起こりやすく、すすが剥げてしまうため、保管には気を使います。朽ち果てる前に、電子化していかなければなりません。
観測点がテレメータ化され、デジタルデータ記録で保存できるようにシステムが変わると、記録媒体は8mmテープ、DATテープやDDS-4、DAT72などさまざまなデータテープを利用してきました。残念ながら、読めなくなってしまうデータもあります。
最近は、ハードディスク(HDD)を活用しています。現用の共有ストレージには1PBの容量を確保しつつ、2TBのHDDに複製コピーし、アタッチメントをつけて保管しています。アーカイブし続ける一方、媒体の性質上、とても気を使いながら管理をしています。
デジタルデータとして記録しながらも、長期保管としては、やはり「紙」が一番長い実績がある現状です。保存性、二次利用・閲覧の面では非常に優れていると思っています。保管面では、荷重、劣化や特有の匂いには気を付けなければなりません。
ODA第3世代のカートリッジと、2011年東日本大震災の波形記録
紙、データテープ、HDD、いろいろ使っていますが、今回導入したODA第3世代の本格的な運用はこれからですが、すでに非常に高い期待をしております。
長期的に見れば、また異なる記憶媒体が現れ、コピーできる可能性は当然あり得ると思っていますが、現存する記憶媒体としては、コスト面はメディアが低価格で良いと考えています。
また、メディアが取り扱いしやすい点はとても魅力的です。例えば、大容量データを受け渡すケースがありますが、HDDは非常に気を使います。研究者が必要なデータを利用したい場合、当研究所ではHDDは輸送せず、データを原則受け取りに来ていただいています。ODAであれば、耐久性が高いことから、宅配便で直接送付できると思っています。
管理の面では、図書的な管理ができる点にメリットがあります。HDDですと、残念ながら預かってくれる部署はありません。ODAの場合、付属のケースに入れて、ラベルを貼り、棚管理することが容易です。図書室とのコラボレーションを行って、書籍同様に長期管理ができないか 検討し、効率的な運用に繋げていければと考えています。
操作面では、Linux OSを利用していますが、二次利用の速度、特にRead性能が良い印象です。どのような形式でデータを記録していくか、これから本格的に検討していきます。
当センターが所有するデータは、明治・大正時代から存在します。関東大震災の記録などは、東京大学しか所有していないものもあり、大変貴重なデータとなります。記録データは気象庁、防災科学研究所や、大学・研究機関と連携を取り活用していますが、広報アウトリーチ活動としても、データ活用の場を広げていきたいです。
ODAには、データ流通において一層使用が広まることで、より導入しやすく、より大容量に保存できるようにしていただきたいです。