株式会社テレビ朝日様は、2017年に開設したメディア保管庫のある若葉台メディアセンターに、ソニーのオペレーションサービスによる、テープからオプティカルディスク・アーカイブ(以下ODA)へのマイグレーションシステムを導入され、2018年10月から運用を開始されました。
当社では、東京・六本木の本社と沿岸部の平和島にメディア保管拠点を設けていましたが、2011年3月の東日本大震災での津波被害の大きさを受けて、津波対策として東京西部の多摩地域に若葉台メディアセンターを開設することとしました。
六本木本社では、アナログ1/2インチのアーカイブ7万2000本や、D-2 テープをプロフェッショナルディスクへ、1対1の手動インジェストシステムによりマイグレーションを進めてまいりました。
そんな中、HDCAMの2023年の保守終了のアナウンスがあったことから、デジタル1/2インチのファイル化も検討することとなり、急遽プロジェクトを立ち上げました。HDCAMをはじめとしたデジタルテープのアーカイブについては先ず40万本を5年間でマイグレーションすることを目標としました。
それには、従来のような手動インジェストだけではとても追いつかず、マイグレーション作業の自動化や省力化、夜間を含めた24時間のオペレーション、メディアコストの圧縮が不可欠なため、新しいシステムの導入を検討することになりました。
整然と並んだオートローダーによるインジェストシステム。
新しいシステムの導入にあたっては、信頼性の高いアーカイブメディアを採用したいと考えていました。近年の大容量メディアでは、1巻のデータを喪失すると100時間を超える素材を失うことになるため、データ消失のリスクをできる限り避ける必要があります。数社から提案をいただきましたが、多くはLTOでの提案でした。しかし、LTOのようなテープメディアでは、摩耗によるテープ切れや、物理破損した際のデータ復旧が困難であるといった脆弱性の観点などから、正副2本以上のメディアをアーカイブする必要がありました。
一方、ソニーのODAは光ディスクであるため、記録や読み出しは非接触です。また、長くプロフェッショナルディスクを使用していますが、データを消失するようなトラブルはみられず、信頼に足る実績がありました。このことから、ODAの場合は、高い信頼性に加えて正1本のみのアーカイブで十分であり、長期的にみれば、メディアコストだけではなくトータルコストの削減も可能だと考え、ODAを選択しました。
さらに、LTOの場合、数世代の間しか互換性がなく、今後もマイグレーションが続きます。一方ODAの場合、高い互換性から「メディアマイグレーション不要」を謳っており、マイグレーションによる投資を繰り返さずに済む安心感がありました。
このほかにも、アクセスの速さもアドバンテージです。テープメディアはシークなどでデータアクセスまでに時間がかかりますが、放送局の素材はリトリーブをすることが前提です。使いたい素材に素早くたどり着き、プレビューができる、という点でも光ディスクに優位性を感じています。
自動化や省力化、24 時間のオペレーションの要求に対して、テープオートローダーを利用して課題解決を図っていただきました。
VTRとPWS-100TD1が収められた手動インジェストシステムのラック。PWS-100TD1は2系統ごとに1台。
今回はいかに効率よく成果物を得られるか、という観点で計画をしました。メディアを預けてマイグレーションを行うサービスもありましたが、緊急で使いたい素材に対する運用が困難なため、若葉台メディアセンター内でマイグレーション業務を委託できる会社、ということが選定条件の1つでした。ソニーにはこれに応えていただくことができましたし、弊社としてもトータルでソニーに任せることにメリットを感じていました。メーカーとしてハード、メディアの知見があるため、製品単体のみならず、システム保守、オペレーションまで、ワンストップで安心してお願いをすることができるためです。また、システム内にあるクオリティーチェックアプリにより、成果物の映像の質も担保していただいています。
ほかにも、テープ保管用の棚も、テープのサイズ、重量などを良く把握されていて、適切な提案をいただいたソニーに導入をお願いしました。
稼働までには、途中での仕様変更などいろいろありましたが、ソニーには臨機応変に対応していただき、大変感謝しています。将来の第3世代メディアにも期待をしています。ただ、使用期限がある素材などを削除したいケースもあるため、第2世代以降でリライタブル版へのニーズがあることもお伝えしています。今後も長いお付き合いになると思いますので、良い関係を継続していければと考えています。