東海大学医学部付属病院様では、年間数十万件におよぶ診療画像記録が発生する検査を実施しています。
2015年から開始された病院情報システムと未接続の診療画像記録の中央管理の現状と、2019年に導入したオプティカルディスク・アーカイブ(以下ODA)の運用についてお話しいただきました。
この記事は2020年3月に、東海大学医学部付属病院 診療情報管理課 鈴木 政智様、山口 翼様に取材した内容を弊社にてまとめたものです。
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東海大学医学部付属病院では、2015年10月より病院情報システムと未接続の診療画像記録の中央管理を開始しました。
これに先駆け、2013年から専門委員会を設置。院内の現状調査を進めた結果、病院情報システムと未接続の診療画像記録(主にポータブル機器から発生し、Blu-ray Disc・DVD・USBメディアなどに出力される手術映像、検査動画など)、多くの医用画像データが、それぞれの部署で独自に管理されていました。
調査および院内の運用を整備し、2015年からBlu-ray Disc・DVDにデータを出力し、直接メディアを回収することにしました。メディアの内容(何時・何処で・何が)は、電子カルテへ登録を行い、各種メディアは、ターミナルデジット方式で棚管理を行ってきました。
また、管理するデータの二次利用としては、執刀医の手術記録(オペ録)や認定医申請、臨床研究、教育コンテンツ、学会での発表用など、多岐にわたります。情報セキュリティーについても、年々厳しくなっていた時期であり、当院の規程では患者様の個人情報である診療画像記録は中央管理をする必要があります。
診療画像データの中央管理を行うにあたり、医師側からは「不便になる」などの反対意見があり、運用が浸透するまでには時間がかかりました。しかし、今では「データを適切に管理してくれる」という安心感から、データ管理方法について各部署から多くの相談をいただくようになりました。現在年間約15,000検査(※1)に及ぶ、病院情報システムと未接続の診療画像記録を中央管理しています。
(※1)手術・検査・診療を含め1オーダーあたりの総称として1検査という
この運用を続けていたところ、2018年には運用上の課題が2つ見え始めました。
1つ目は、回収するデータ量の増加です。医療ロボット(米国Intuitive Surgical社da Vinci Surgical System)、手術用顕微鏡、外科手術用内視鏡を始めとするさまざまな医療機器から発生する映像の画質向上により、1検査当たりのデータサイズが著しく増加していました。長時間の手術になると1検査のデータが1枚のディスクに入りきらないことも多く、1日に回収する平均のディスク枚数が50枚を超えるようになっていました。
2つ目の課題は、保管場所の問題です。前段で説明したディスク枚数の増加に加え、各部門で病院情報システムとは未接続の診療画像記録が発生し、運用開始時に想定した倍以上の速さでディスクの保管棚が埋まりつつあることが判明し、早急に新たに保管場所を拡張しなければならないことがわかりました。
新たな課題も見えてきたことから、いくつかの改善案を検討し始めました。保管棚の増設に関しては、わかりやすい方法でしたが、院内設置スペースの問題もあり、根本的に解決できるものではありませんでした。
また、診療画像記録を保存するための部門システムの刷新についても検討しました。この場合、院内ネットワークを介して病院情報システムと連携する必要があり、運用自体を大きく変えなければならない懸念がありました。当然、大規模なシステム導入となると予算の問題を解消しなければならず、その間にディスクの保管棚が埋まってしまう可能性がありました。
その様な中、「国際モダンホスピタルショウ2018」を見学していたところ、ソニーブースで見つけたのがODAでした。
ODAカートリッジとDVD院内統一メディア
課題解決にむけた選定ポイントは、「省スペース」「保管年数」「運用の踏襲」「転送速度」でした。これらのポイントにODAが問題解決の要件を満たしていたのです。
ODAは、DVDやBlu-ray Discの大容量・低コスト版と考えるとわかりやすく、ラベルの貼り付けもできます。この点は当時の運用をそのままに、シンプルに運用を踏襲することができました。
また、堅牢性の高い3.3TBのカートリッジ容量いっぱいにデータをまとめることができるため、メディア管理数を圧倒的に減らすことができます。カートリッジは小さいため、新たに収納スペースを用意する必要もないことも導入の大きなメリットでした。
ODA導入後は、二次利用についても便利になりました。従来は二次利用の申請があると、別棟のメディアの保管場所に移動し、約7万枚のメディアが保管されていた中から該当する検査のディスクを探す作業を行っていましたが、現在は付随するワークステーション端末で、どのカートリッジに保管されているか検索すれば、簡単に誰でもデータを高速に抽出することが可能になりました。これによりデータ抽出後に行う患者情報の匿名化作業にいち早く取り掛かることが可能となり、教職員に対して素早く診療画像記録を提供することが可能になりました。
データ管理を行うドライブユニットODS-D280Uと
管理システムMnemos MD操作端末
ODA導入当初、医用データの中には、ソニーとして想定しない種類のデータがあり、そのため何度かトラブルが起こりました。現在はソフトウェアと運用の両面で克服し、安定した運用を行うことができています。使い勝手、速度共に満足しています。
今後の課題としては、FHDや4Kなどの映像は高速転送により抽出することができていますが、医療現場では医用画像専用フォーマットDICOM形式などは、1検査で数千〜数万ファイルの多く細かいデータであるため、転送に時間がかかってしまいます。これらの検査データが高速転送できるように改善されると嬉しいですね。
また、ソニーに限らず、利用されるソフトウェアはどうしてもたくさんの機能が搭載されがちです。医療現場では、シンプルでわかりやすい使い方が望ましく、ソニーにもハードウェア、ソフトウェア一体となって開発し、これからも運用サポートをしていただきたいと願っています。