九州朝日放送株式会社様は、この度、オプティカルディスク・アーカイブ(以下ODA)第3世代、PetaSite拡張型ライブラリーシステムおよびコンテンツ管理システムMedia Backbone Ensembleを導入し、2020年3月より本格運用を開始されました。
この記事は2020年9月に、同社 報道情報局 映像センター長 安武 修平様、技術局 放送技術部 部長代理 中溝 貴祥様に取材した内容を弊社にてまとめたものです。
当社では、2019年に報道支援システムの更新、編集システムの刷新を計画しました。その際に、編集システム更新後のコンテンツ管理に課題が見えてきたため、新たにアーカイブシステムを検討しました。アーカイブシステム構築では、特に関連するシステムとの円滑な連携と運用を重視しました。
導入前の運用で課題となっていたのは、コンテンツの保管場所です。従来のアーカイブコンテンツはXDCAMプロフェッショナルディスクで保管しており、2018年時点で2万点程度となっていました。また、近年はデータ容量の大きいスポーツコンテンツが増加しており、日常の保管数も増加傾向にありました。局内の保管場所は2か所ありますが限りがあるため、スペース削減も含めて検討しました。
ODA 第3世代のドライブユニットとカートリッジ
これらの背景から、アーカイブシステムおよびメディアについて検討を重ねました。また、アーカイブシステムを設備する、いくつかの放送局の見学も行いました。見学の際にデータテープ(LTO)を利用する放送局では、データ移行(マイグレーション)の問題を抱えていました。また、世代互換により古いメディアの読み出しができないといった懸念がありました。
そこで当社は、ちょうどシステム納入前に発表されたソニーのODA 第3世代と、システム連携性の高いコンテンツ管理システムMedia backbone Ensembleを選択し、2020年3月より本格稼働に至りました。当社では2008年よりアーカイブシステムを運用していますが、「XDCAMプロフェッショナルディスクからODAに記録媒体が変わっただけ」という印象で、とても受け入れやすいものでした。また、アーカイブメディアについては、データ容量に対するコストが、従来よりも大きく削減できると考えています。
今回、初めてPetaSite拡張型ライブラリーシステムODS-L30Mシリーズを採用し、アーカイブの自動化にチャレンジしました。アーカイブメディアの保管スペースの問題は、ラック1本のスペースで済むことになり、解消されました。容量は最大で2.7PBと、将来的にも十分な容量を管理することができます。
また、ライブラリーシステム導入によるオンライン化により、アーカイブメディアを保管場所まで探しに行く手間も省けました。株式会社ニシコン製報道支援システムJaprs(上位システム)にて、アーカイブされたコンテンツを検索し利用申請を行うと、コンテンツは自動で共有ストレージに取得できるようになっています。特に報道部門は二次利用の頻度が高いのですが、すぐに利用でき、作業の手間も軽減されたと大変好評です。
上位システムでは、過去より低解像度映像を閲覧できるようになっています。これまで低解像度映像は、特殊なファイルフォーマットを利用しておりました。今回の更新を機に、汎用的なH.264/MP4フォーマットへの変換を進めています。というのも、OSやブラウザが進化する過程で、再生プレーヤーの維持のためにいくつかの弊害が出てきました。専用のフォーマットには、専用の映像再生プレーヤーを利用しなければなりません。長期運用するアーカイブではこの点も考慮しなければなりません。
今後は、素材共有やコンテンツの販売を促進する中で、ネットワーク経由でやりとりがしやすいフォーマットが運用に適すると捉えています。上位システムのウェブブラウザ化にむけ、導入したMedia backbone Ensembleの自動作成機能を用いて、コンテンツ登録ごとに変換を進めています。
今回導入したアーカイブシステムは、局内システム全体でオンライン化が進むことで、リモート環境でも効果が発揮されると考えます。上位システム側に検索、申請、承認などの機能を持っていますが、アーカイブ利用は深夜帯にも利用要求がありますし、昨今のコロナウイルス禍のような有事の際には、管理担当が出社できないケースもあります。将来的には局内のオンライン化により、人の手を介さず、アーカイブ作業や二次利用ができるようになることで、もっと利便性が増していくことでしょう。
特にアーカイブ設備は性質上、長期的に利用するものですので、マイグレーション不要で互換性の高いソニーのODAに期待しています。