次世代放送の先進局を目指すプロジェクトの一環としてオプティカルディスク・アーカイブによる4Kアーカイブ設備を導入。PMW-F55による撮影から4K・HDR制作、アーカイブまでの4K制作フローを実現。
名古屋テレビ放送株式会社様は、2015年3月にライブラリー室にオプティカルディスク・アーカイブドライブユニットODS-D77Uを導入され、4Kの素材映像や番組などの完パケコンテンツの保管・管理に本格運用を開始されました。さらに同年9月には東海地区では初となるHDR(ハイダイナミックレンジ)対応4K編集室の運用を開始され、局内に一貫した4K・HDR制作ワークフローを構築されました。
同社 技術局 映像技術部 主事 長田圭介様に、オプティカルディスク・アーカイブ導入の背景や決め手、運用状況と成果、今後の期待などを伺いました。なお、記事は2016年2月下旬に取材した内容を、弊社にてまとめたものです。
当社は2015年3月、ライブラリー室にオプティカルディスク・アーカイブドライブユニットODS-D77Uを導入して、スタンドアロン運用で4Kコンテンツの保管・管理を開始しました。背景にあるのは、次世代放送への積極的な取り組みです。当社では4Kなど次世代放送に向けて、早い段階で技術習得を行い、スムーズに移行できる体制を整えておく必要があると考えています。また、Channel 4Kやケーブル 4K、スポーツ・イベントなどでのパブリックビューイングでも4K制作・配信が活性化しており、そうした時代の要請に応えられるサポート体制の強化も積極的な取り組みの目的の一つです。
2015年9月に導入したHDR対応4K編集室。局内での4K制作システムが完成し、4Kアーカイブともスムーズな運用で連携しています。BVM-X300により、HDR制作にも対応しています。
4K編集室には4KメモリープレーヤーPMW-PZ1や、クライアント用4Kモニターとして75V型の4KブラビアKJ-75X9400Cを設置し、試写システムとして運用しています。
2014年にCineAlta 4KカメラPMW-F55を導入し、4K映像の撮影・収録の運用を開始しました。2015年9月には、東海エリアでは初となるHDR(ハイダイナミックレンジ)対応の4K編集室を導入。これにより、局内での一貫した4K映像を制作できる環境が整いました。すでに4K制作での特別番組「BOMBER-EダンスナイトSP」の制作で活用したほか、東山動植物園のプロモーション映像制作では、PMW-F55でS-Log3撮影を行いました。30型4K有機ELマスターモニターBVM-X300を活用して迫力のコントラスト、臨場感に富んだ色彩を可能にするHDR対応作品に仕上げ、大型デジタルサイネージに活用したり、Channel 4Kに納品しています。今後の本格運用で4K完パケコンテンツが増えるのは確実で、その意味でも4Kアーカイブの重要性が増してくると考えています。
4Kアーカイブに運用されているODS-D77U。HDDにバックアップされた4Kコンテンツをオプティカルディスク・アーカイブに転送しています。
4Kアーカイブメディアについては、当初使い慣れたHDD(ハードディスク)を想定しましたが、長期間安定した保管・管理という点でリスクがあると考えていました。そこで社内で利用しているLTOか、オプティカルディスク・アーカイブか、という選択になりましたが、正直悩みました。メディアコストの観点では、LTOが有利でしたが、簡易的かつ簡単なGUIである点と、アーカイブに不可欠なメディアの信頼性、マイグレーション不要な後方互換性の確保、そして将来2次利用を想定したアクセス性とスピードの総合力の観点では、オプティカルディスク・アーカイブが優位だと評価しました。他局での導入・運用実績の高さもあり、今回の導入を決定しました。
オプティカルディスク・アーカイブの一番のメリットは、保存耐性と使い勝手のよい光ディスクを採用している点でした。長期保存が可能なだけでなく、高温・多湿の保存環境でも磁気テープのように注意を払う必要がありません。また非接触タイプなのでデータ記録・再生時の劣化不安もなく、安定性・信頼性に優れています。イニシャルコストの点ではLTOが有利でも、利便性ではオプティカルディスク・アーカイブが優位であると判断しました。
「Content Manager」のGUIの分かりやすさ、使い勝手の良さも好評です。
また、コンパクトなスタンドアロン運用に適していることも評価しました。コンテンツ管理には、標準でバンドルされる「Content Manager」のGUIの分かりやすさ、使い勝手の良さが魅力です。XAVC 4Kコーデックのアーカイブでもストレスを感じることなく保管・管理できます。
導入した4Kアーカイブシステムの運用は、PMW-F55でSxSメモリーカードに収録した4K映像をディレクターやカメラマンがポータブルHDDに転送してアーカイブ室に持ち込みます。それをアーカイブ室オペレーターがポータブルHDDからオプティカルディスク・アーカイブに転送するというワークフローです。貸し出し用にポータブルストレージPSZシリーズを用意しており、再利用などの貸し出し時にオプティカルディスク・アーカイブから転送して必要な映像を渡すといった管理・運用ができています。
また、PMW-F55でS-Log3収録した4K映像も多く保存されています。新設のHDR対応4K編集室での編集作業においては、従来の映像制作では表現が難しかった高輝度部分も、白飛びせず、鮮やかな色彩を表現することが可能です。まさに、4Kをしのぐ迫力と臨場感を生み出すことができ、肉眼で見るのに近い映像を再現できます。4K、HDR制作で必要不可欠で正確な色表現が可能なBVM-X300も大いに活用しています。
今後はファイルベースアーカイブの促進が課題となっており、オプティカルディスク・アーカイブシステムの拡張も検討していきたいと考えています。特に、報道用途では再利用が日常的に行われますので、ランダムアクセスでニアラインアーカイブ運用に適したオプティカルディスク・アーカイブは有効ではないかと考えています。
オプティカルディスク・アーカイブの本格活用には、ソニーの長期的なサポートが欠かせません。すでに発表された第2世代モデルに続き、第3世代モデルの容量拡大と転送速度の強化には大いに期待しています。使い勝手の良いアプリケーションの開発、システムの構築や対応フォーマットの拡張など、利便性向上もぜひソニーに進めていただきたいところです。