オプティカルディスク・アーカイブの導入でMAデータの大容量化、保管の長期化への対応と同時に作業工程の大幅な短縮と簡素化を実現。
株式会社テクノマックス様は、MA作業データの大容量化、長期化する保管期間に対応する作業環境の実現を目指し、サーバーならびにアーカイブシステムの更新を行い、2014年2月より運用を開始しました。
このシステム更新について、同社 営業本部ビデオセンター編集技術部長の小島壯介様ならびに同 副部長・ミキサーの伊東謙二様にシステム更新までの経緯や目的、コンセプト、選定ポイント、運用状況、実際の運用を経てのインプレッションなどについて伺いました。なお、本記事は、2014年12月に取材した内容を、弊社にてまとめたものです。
当社では主にバラエティ番組、ドキュメンタリー番組、長尺の特別番組などを扱っていますが、特にバラエティ番組や特別番組では近年、効果音も細かくつけるようになり、ファイル数や容量も桁違いに増大する傾向にありました。音付けのベースとなる音声も、以前のようなVTRのサウンドトラックから拾うのではなく、OMF(オープン・メディア・フレームワーク)での受け渡しがメインとなり、編集点の数だけファイル数が増えました。特に当社が抱える番組においては、長時間のものが多く、2時間以上のレギュラー番組や、長寿番組も抱えています。特別番組においては4時間近いものもあり、音声ファイル管理の大容量化への対応が課題となっていました。
また最近では、番組の海外向け販売、いわゆる「海外番販」も増えてきました。このような海外番販は、制作当初より計画されている場合もありますが、どちらかといえば完成後に決まることが多く、お客様からは、来たる番販に備え、半永久的とも言える期間にわたるデータの保管が期待されるようになりました。修正や改変の際の作業時間や自由度を考えると、途中の履歴や、派生バージョンをできるだけ残すようにしていますので、結果として、1本の番組に対して、数本分のデータを保管できる環境を整える必要がありました。
従来はMA作業後のProToolsのセッションデータをSANに格納し、そのアーカイブメディアとして、当初はDVD-R、その後はBD-Rを利用していました。数年前であれば、1番組のデータ量は5〜6GB程度にとどまっていましたが、先に述べたような背景から、近年では1番組あたり25GBを超えるような状況もあります。結果として、ストレージの容量も限界に差し掛かり、同時に、アーカイブメディアへのバックアップにかかる手間や作業時間も見過ごせない状況となっていました。そこで当社では、ストレージとアーカイブ環境の大幅刷新を検討することとなりました。ストレージ環境として新たなサーバー(NAS)を導入することを決め、そのアーカイブメディアとして採用したのが「オプティカルディスク・アーカイブ」です。検討自体は2012年から始めていましたが、作業効率アップを目的としていたので、高速化された転送速度を評価しODS-D77Uを導入しました。
当初はアーカイブメディアとして、LTOを計画していました。しかし、LTOの場合、テープが切れたりする危険性、また、万一切れた場合にデータの回復が容易ではないことから、光ディスクを選択肢に加えました。USBなどのポータブルハードディスクについては、日常的に故障に見舞われることも多く、いくら複数のバックアップを取っておいても、やはり壊れた瞬間には冷や汗をかき、慌てるものです。ハードディスクはもとよりアーカイブメディアとしては考えませんでした。そのような中で、いくつかの放送局さんや他のポストプロダクションさんにおけるオプティカルディスク・アーカイブの導入事例を見聞きし、その実績も加味し、当社もオプティカルディスク・アーカイブを本命に据えることにしました。LTOについては、複数社の共同規格であることをアドバンテージとして見る向きもあります。しかし、私たちは、今まで長い間、ソニーの1/2インチVTRで仕事をしてきています。1社で一貫した規格と高い互換性や信頼性を確保してきているのを間近で見てきている実績と安心感がありましたので、オプティカルディスク・アーカイブが、むしろソニーのオリジナル規格であることがアドバンテージでした。
他にも見逃せなかったポイントが、マイグレーションが不要ということです。1/2インチテープフォーマット同様の下位互換性により、長期的にメディア間のデータの引っ越しをする必要がない、というのは魅力でした。従来利用していたDVD-RやBD-Rと比べても、光ディスクがむきだしではなくカートリッジに入っていますので、盤面に傷を付ける心配もなく、紫外線などで劣化が進む心配もありません。つまるところ、1/2インチテープ同様の扱いができるのも安心です。
推奨保管温度・湿度範囲が広く、耐衝撃性に優れるカートリッジ構造のため、メディアの保管は従来のテープ以上に取り扱いが容易。メディアケースも、従来の放送業務用ビデオテープの使い勝手を踏襲した材質や形状を採用しており、ラベルを差し込むポケットも用意されている
実際の運用では、アーカイブしたデータを頻繁に再利用しています。書き込みの速さも重要ですが、番販に伴う改変作業などでの、部分的なデータの取り出しにかかるスピードもとても重要です。オプティカルディスク・アーカイブは、光ディスクなのでランダムアクセスもLTOに比べて桁違いに速く、データの転送速度もハードディスク並みで、十分に満足のいく速さです。従来、DVD-RやBD-Rでのアーカイブ時は、書き込みも遅い上に、メディアが複数枚に分かれることもあり、アーカイブのために残業をするようなことがしばしばありました。しかし、オプティカルディスク・アーカイブを導入してからは、データ量が大きい場合でも仕掛けてそのまま帰ることができますから、アーカイブのために残業をするようなことはほぼなくなりました。
現在の運用では、NASにあるデータを、ODS-D77UをUSB3.0接続したMacBook Proの「Finder」上でドラッグアンドドロップしてドライブに書き込んでいます。手軽に利用でき、MA室に持ち込んで使うことも可能です。操作はいたって簡単で、誰でも操作ができます。オペレーション上では、ポータブルハードディスクと変わりがありません。また、最近では、付属のエクスプローラー「Optical Disc Archive Filer」を使用し始め、さらに書き込みや読み出しスピードがアップし、エラー管理などもよりしっかりしており、作業効率の向上と確実性を感じています。
現在保有しているカートリッジは毎月、だいたい5本のペースで増えていっています。1つのカートリッジには、MAで利用しているProToolsのセッションを2時間番組で約2クール(半年)分、1時間番組で4クール(1年)分を目安にアーカイブしています。オーディオのデータは、1つ1つのファイルを映像と比べるととても小さく、ガイドとなる映像ファイルはアーカイブしませんので容量はさほど重要ではありません。管理のしやすさを重視し300GBのリライタブルメディアを利用しています。
今回のシステム更新でのオプティカルディスク・アーカイブ導入の成果は期待通りで申し分ありませんでした。スピードも速く、掲げていた目標を達成することができました。
現在は、当社の編集室7室のうち6室はリニア編集室ですが、すでに4Kへの流れが始まってきており、全てファイルベースとなる4Kではノンリニア編集室への更新が前提となります。更新の際には、オプティカルディスク・アーカイブを映像系にも広げたいと考えています。オプティカルディスク・アーカイブでは、すでに1カートリッジ6TBまでのロードマップが公開されていますので、今後の進化にも期待を寄せています。付属のコンテンツ管理アプリケーション「Content Manager」では、ソニー製品で採用されているファイル形式以外の映像データも広く管理できるということなので、こちらも機会を見て活用したいと考えています。将来的には、現在の手でカートリッジを入れ替える形ではなく、「PetaSite拡張型ライブラリーシリーズ」や小型ライブラリー「ODS-L10」のような、ロボット型のオプティカルディスク・アーカイブシステムの導入も視野に入れていきたいです。
株式会社テクノマックス
制作技術業務、送出技術業務およびポストプロダクション業務まで幅広く手がけるテレビ東京の100%子会社。今回取材をさせていただいたポストプロダクション部門では、テレビ東京に隣接する東京・虎ノ門エリアにHDリニア編集室6室、ノンリニア編集室1室、MA室3室を有し、テレビ東京系のバラエティ番組、スペシャル番組、ドキュメンタリー、スポーツ番組、ニュース番組等をメインに据える一方、系列外の番組編集・MAも精力的に行なっています。