今回紹介するのは「モノクロ写真」の撮り方。カラー写真から色を取り去ると、残るのは被写体の輪郭と光の強弱のみ。色を取り去ることで、いつも見ている世界はどんな姿に見えてくるでしょうか。
「色の下に隠れていたその被写体の本質が表れてくる」。そうヒントをくれたのは、写真家の鈴木知子さん。モノクロで撮影するのにおすすめの被写体と撮影のコツを教えていただきました。
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鈴木知子
神奈川県横浜市出身。東京工芸大学短期大学部卒業後、広告撮影プロダクションに入社。写真家、柳瀬桐人氏(他)のアシスタント経験後、コマーシャルフォトを中心に活動。現在フリーランスとして地元横浜に事務所を構え、カメラ片手に日々奮闘中。近年は雑誌への作品提供やフォトコンテストの審査、セミナー講師、写真ハウツー書籍の執筆も行なっている。1日1枚の写真で綴るライフワークの横浜を中心としたスナップ写真を、ブログにて毎日更新中。
αシリーズのカメラで撮影した鈴木さんの作品集へはこちらから
そして今回の大人のソニーは、東京のおでかけをもっと楽しくするWEBマガジン「TOKYO DAY OUT」とコラボレーション! モノクロ写真の撮影は、TOKYO DAY OUTの編集部おすすめの「東京なのに、まるで海外にいるような写真が撮れるスポット」で行いました。
撮影におすすめなのは「変化がある」「明暗がはっきり」「夕暮れ時」
まずは鈴木さんに、おすすめの被写体と撮影時間帯を教えていただきました。
変化がある被写体を選ぶ
「モノクロ撮影を行うと、色の情報はなくなって、代わりに被写体の質感や輪郭が浮かび上がってきます。なので、同じ壁を撮るにしても、ガラスのような平面ではなく、レンガなどでつくられているような変化のある被写体を撮るのがおすすめです」
明暗のある被写体を選ぶ
「光と影の強弱のみで表現されるため、明暗がくっきりしている被写体を選びましょう。この写真のように、窓枠やレリーフなど、浮かび上がる装飾が施されているものや、透かし彫りがされているものをモチーフにするといいですね」
撮るのなら日暮れ時~夜を狙って
「昼のうちは真っ白になってしまう空も、陽がかげってくるとだんだんと表情が出てきます。浮かんでいる雲もしっかりと筋が浮かび上がるように。夜になれば空は真っ黒になり、写真の全体が引き締まってきます」
慣れないうちは、自分の目で見ただけで「モノクロに向いている、向いていない」と判断するのは難しいもの。被写体をあらかじめモノクロで見られるのなら、もっといい写真を撮れそうです。今回撮影に使用したα7IIは、写真の仕上がりを選べるカメラの内臓機能「クリエイティブスタイル」で白黒モードを選択すれば、ファインダーと液晶モニターのどちらにも、被写体がモノクロになって映ります。カメラ越しに被写体を見て、モノクロにマッチするかしないかをチェックするだけ。EVFならではのメリットですね。
美しく撮るために1:輪郭がはっきりすれば、魅力をもっと引き出せる
光と影の濃淡のみで表されるモノクロ撮影では、被写体の輪郭がより際立ちます。
「光と影のコントラストをはっきりと出すことで、被写体のかたちがしっかりし、仕上がりがシャープな印象になります。明るい部分と暗い部分がしっかり分かれているような、コントラストがはっきりしたシーンを選んで撮影してみましょう」(鈴木さん)
カメラ本体の設定で、露出とコントラストを高めてから撮影を行うのもひとつの手。
「αシリーズの露出調整ダイヤル、感覚的に操作ができる位置に設置されているので、調整はシンプルに行なえます。そうすれば、ファインダーと液晶モニターに映るのは、露出とコントラストが調整された被写体です」(鈴木さん)
美しく撮るために2:玉ボケと光条が、ストーリーを与える
モノクロ撮影に力を与える光の表現。ここからは、光の表現の幅を広げる「玉ボケ」と「光条」をつくるコツをお伝えします。
今回使用するのはこちらのレンズ。
玉ボケには望遠レンズ(SEL70200G)、光条には広角レンズ(SEL1635Z)を使用します。
玉ボケをつくる
豆電球や電飾のような、点光源と呼ばれる光を丸くボケさせるのが玉ボケ。背景がボケやすい望遠レンズを使えば、大きな玉ボケをつくることができます。
「まずは、主役となる被写体を選び、その後ろに点光源が入ってくるように構図を調整。あとは、主役の被写体にピントを合わせれば、玉ボケが現れます。絞り優先AEに設定をしておくとよいです」(鈴木さん)
レンズのF値が小さいほど、また、主役の被写体と点光源の距離が大きいほど、玉ボケは大きくなります。
光条をつくる
光条も、玉ボケと同じく点光源があれば撮影が可能です。使うのは広角レンズ。
「玉ボケとは逆にF値が大きい方がうまく撮影できます。F値が11くらいのレンズであれば、光の筋がしっかり出てきます」(鈴木さん)
F値を大きくするとシャッタースピードが遅くなり、ブレが起きやすくなってしまいますが、α7IIのようにISO感度を高く設定できるものは、高めの設定にし、シャッタースピードを上げてブレを起こしにくくできます。さらに、ボディ内5軸手ブレ補正機能を活用すれば、ブレはもっと軽減。少ない光でも、さまざまな表現が可能になります。この写真のような狭い路地を撮影する際は、なかなか三脚は使いにくいもの。しかし、αシリーズなら気軽に撮影を行えます。
色の引き算で、被写体の個性を見つめなおすのがモノクロの魅力
最後に鈴木さんに、自身が考えるモノクロ撮影の魅力を伺いました。
「色を取り去って、被写体の本質を引き出すのがモノクロ撮影の魅力。ふだんは見ることのない、輪郭と光の強弱のみで表される世界を楽しんでみてください。色が引き算されるということは、被写体がこれまで持っていた個性がひとつなくなるということ。そこに、新しい解釈が生まれてくるかもしれません。時間軸さえもなんだか曖昧にしてしまう。そんな表現の面白さを追ってみて欲しいと思います」
鈴木さんが行っている写真講座でも、モノクロ撮影の人気は非常に高いとのこと。これを機会に、みなさんも新しい表現にチャレンジしてみてください。
撮影を行った各ロケ地の詳細は、コラボレーションを行っている「TOKYO DAY OUT」で公開中! 東京にいながらに、まるで国外に遊びに来たかのような気分になれるスポットを紹介しています。ぜひそちらもごらんください。
※TOKYO DAY OUTは2018年7月に終了したwebマガジンです。