暑さが続く日々も過ぎ去り、秋の兆しを感じる心地よい風を感じる季節になってきました。芸術の秋、いつもと違った視点を持って写真を撮影してみてはいかがでしょうか。今回のテーマは2016年「被写体の本質を捉えるMonochrome Shooting」でご紹介した好評だった「モノクロ写真」。前回、写真家の鈴木知子さんに登場いただき、モノクロ写真に合う被写体選びと撮影テクニックをレクチャーいただきましたが、今回は鈴木さんに新たに撮り下ろしていただいた写真とともに、モノクロの性質を生かせる被写体選びのさらなるコツと、その魅力を改めてご紹介します。
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強い個性である“色がなくなる”ことで、明確になる“主役”
「モノクロの写真は、色がないからこそ見えてくるものがあります。色に惑わされず、形状が明確に捉えられるのです。被写体の強い個性である“色がなくなる”ことで、明確になる“主役”が浮かび上がってきます。」(鈴木さん)
駅を撮影したこの写真は、スローシャッターで動いている電車をぶらし、アクセントとした作品。色がないからこそ、何が主役なのかが明確になってきます。また色のインパクトがなくなるので、アクセントとなるような被写体をいれることが、魅力的なモノクロ写真を撮るコツとも言えます。
モノクロだからこそ見えてくる、形状や躍動感
こちらの噴水を撮影した写真は、ハイスピードシャッターで、肉眼では捉えられないしずくや水のうねりを捉えたもの。
「モノクロで撮影することによって、飛び跳ねたしずくの形状や水のうねりがより明確になり、カラーのものよりも、躍動感がより際立ってきます。」(鈴木さん)
動きのある被写体は、普段たくさんの色に埋もれて気づかなかった何気ないようなものでも、モノクロ写真にするとインパクトのある被写体になり得ます。
モノクロにすることによって、浮かび上がってくる質感
「モノクロ写真にすると、光や形が前面に出てきます。そのため被写体の質感が浮かび上がり、立体感も強調されます。タイプライターの金属の質感や重厚感などが増し、歯車などの美しい曲線も際立っていますよね。まさにモノクロが似合う被写体と言えます。さらにモノクロはレトロなイメージを想像させ、懐かしさを感じさせる魅力があります。ここでは色をなくすことで、時間が止まったような印象を強めました。」(鈴木さん)
「こちらの写真もカラーならば、植物の緑やトタンの錆の色に目が留まってしまうと思います。モノクロ写真にすることで、被写体の特徴や光、構図などの要素に集中させることができます。トタンや木の扉の質感と、縦のラインで構成した構図がリズミカルに感じられるはずです。また被写体や物事がストレートに伝わるという特徴があり、その場に漂う空気感も伝えてくれます。さらに、モノクロでは純粋に構図を見ることができるので、撮影時の構図力がアップしますよ。」(鈴木さん)
「こちらも、カラーであれば花瓶の中の鮮やかな花や緑の色に注目してしまいがちですが、モノクロ写真にすることによって、より花のフォルムや花瓶の曲線美が強調され、そちらに視線が集まります。撮影のポイントは、明暗のはっきりした被写体を選ぶようにすること。カラー写真よりも立体感を感じやすくなります。また色が見えないことによって、想像力をかきたてるといった効果もあります。」(鈴木さん)
悪天候さえも味方にできる!色の持つ情報がなくなる利点
「この写真を撮影した日は、くもり空で天候が悪く、カラーで撮影しても魅力的なものは撮れないだろうというほど、空がイマイチでした。ですが、モノクロ写真の特性を逆手にとりました。青空だと色がのって黒くなってきてしまうところ、くもり空だからこそ白くなり、よりコントラストが際立ってきます。」(鈴木さん)
ウミネコの白と鎖の黒、空と船のコントラストが際立つこちらの作品は、色の情報がなくなるというモノクロの特性を生かし、くもり空だからこそ撮影できたもの。重厚感も、より伝わってくるよう。このように、悪天候すら味方につけられるのも、モノクロ写真の強みです。
「お天気が良い日で、窓から差し込む光と窓の外に見える緑がきれいだったのですが、モノクロ写真にすることによってハイライトやエッジが入って際立つ階段の立体感や、光に照らされて浮かび上がった木目がより強調されます。光があるときに、色彩の美しさを表現するのではなく被写体の立体感にフォーカスがあてられるのも、モノクロ写真の魅力です。」(鈴木さん)
「窓の向こう側に見える窓枠は緑色、ランプは黄色と、実は色彩豊かな構図ではあったのですが、色の情報がなくなることで、窓の取っ手の質感や曲線が際立ちます。また、ボケ感をあえて活かすことで、柔らかくノスタルジーな雰囲気をつくり出すことができました。」(鈴木さん)
「横浜の中華街のように、インパクトのある色がなくなった場合、写真の主役となる情報を足す必要があります。こちらの写真の場合、中国語とちょうちんの質感がそれにあたります。また、例えば道路に出ている赤いコーンなど、映り込んでほしくないようなものがあるアングルでも、モノクロ写真であれば目立たなくできたり、うまく生かすことができたりします。」(鈴木さん)
モノクロ写真だからこそ見つかる、新たな視点
光と影を強調し、質感や雰囲気を際立たせる、まさに見せたいものを強調することができ「被写体の本質を捉える」ことができるモノクロ写真。今回使用したカメラα7 IIは小型軽量で使いやすいので、動作も大きくならず、街なかでもスマートに撮影できると、鈴木さんも太鼓判。クリエイティブスタイルで「白黒モード」を選択すれば、ファインダー、液晶モニターのどちらでもモノクロに映ります。撮影前にモノクロにあうシーンや被写体なのかをチェックできるので、初めてのモノクロ撮影でも気軽に楽しめます。さらに「シャープネス」、「コントラスト」が調整できるので、イメージ通りのモノクロ写真に仕上げることができます。ピクチャーエフェクトにも、明暗が強調されるハイコントラストモノクロ、階調豊かなリッチトーンモノクロがあります。個性的なイメージになるので、雰囲気を変えてみるのも良いですね。
モノクロ写真を撮りにα7 IIを持って街を歩けば、いつもと違った視点で街を眺め、普段は気が付かなかった魅力的な被写体を見つけられるかもしれません。
ちなみに、2016年の記事「被写体の本質を捉えるMonochrome Shooting」は「玉ボケ」や「光条」を利用したモノクロ撮影テクニックもご紹介していますので、是非チェックしてみてください。
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