いつもの風景写真とはちょっと違ったものを撮りたい。そんなときに、皆さんはなにを試すでしょうか?構図を変える?レンズを変える?
写真の仕上がりを大きく変える方法がひとつあります。上記のどれでもない「HDR写真」というもの。もともとHDR(ハイダイナミックレンジ)撮影は、写真の白飛びや黒つぶれをなくして肉眼に近い表現が可能になるというもの。
しかし、ちょっと応用するとまるで絵画のような写真が仕上がるのです。
そのHDR写真を撮るコツ・被写体の選び方を、HDRフォトグラファーの石川真弓さんにうかがいました。
石川 真弓 HDRフォトグラファー
ブロガー、ライター、HDRフォトグラファー。世界一周旅行記やHDR写真、ガジェットやライフスタイルを紹介するブログ「URAMAYU」を運営。世界中を旅して見てきた絶景をHDR写真で撮影している。本業はクリエーティブエージェンシーの広報兼プランナー。2013年からα7をメインに使用。また2014年、国内初のHDR写真解説書籍「HDR写真 魔法のかけ方レシピ~撮ったあと生まれ変わる、写真のあたらしい楽しみ方」(技術評論社)を出版。
2010年からHDR写真を撮りはじめた石川さん。これまでに、世界中の風景などさまざまなものをHDRで撮影してきました。
ふだんは以下の手順で撮影・現像をしています。
- 1. 三脚を使って、ブレないように[明るい(+2)・暗い(-2)・普通(+-0)]の露出でブラケット撮影。画質はRAWで
- 2. PhotomatixというHDR合成用のソフトでHDR画像生成
- 3. さらに画像加工ソフトLightroomでノイズリダクションやトリミング、明るさなどを調整して現像
「ブラケット撮影をしたあとに、3枚の画像を合わせるのがなかなか面倒なんです。ひとが写り込んでいると、合成した画像に生じた人の残像が“ゴースト(亡霊)”のように映り込むんです」
と石川さん。しかし、今回の撮影ではカメラ内ですべてを完結!
現在販売中のα(※)には「絵画調HDR」というモードが入っていて、このモードを選ぶと、簡単に絵画風のHDR写真をとることができるのです。
※ α7S II、α7R II、α7 II、α7S、α7R、α7、α6500、α6300、α6000、α5100、α77 IIに搭載
それでは実際に、HDR写真で狙いたい被写体を撮ってみましょう!
こんな場所を狙いたい1:ビル街などメタリックな雰囲気のある場所
まず撮影したのはビル街です。
「工場やモダンなビル、ジャンクションに車や船。こういった被写体をHDRにすれば、メタリックな質感がさらに強調され、CGのような雰囲気を表現することができます。被写体の反射と映り込みが良い味を出してくれるので、コンクリートのみの建物よりガラス張りのビルの方がおすすめです。撮影時は曇ってしまいましたが、日が沈む時間帯、マジックアワーに撮影するとより印象的な風景になりますよ」(石川さん)
さて、絵画調HDRで撮影するとこんな仕上がりに。
HDR写真を撮った際に副次的にえられるのが「ハロ」。今回の作例でも、明暗差の強い部分の周囲にハロ(ビルと空の境目にある、靄のようなもの)が現れています。
「ハロは好まれないこともありますが、今回のようにまったく違った雰囲気を見せたい場合や非現実感を表現する効果もあります」(石川さん)
こんな場所を狙いたい2:反射が起きる場所
反射をうまく捉えるのも、HDR写真の特徴です。今回は川面の映り込みを狙って撮影してみました。絵画調HDRを使わないとこのような仕上がりになりますが…
「今回の撮影では水鏡の反射を撮りました。水に反射した風景は、HDRでさらにはっきりとくっきりと際立たせることができます。通常の撮影だと、水に反射した被写体が薄かったり、川面が揺れているので写り込みがもの足りなく感じてしまいます」(石川さん)
他にも、雨上がりの水たまりや都会の公園に映り込むビル、そして冒頭の写真のウユニ塩湖の写真まで、水鏡のシチュエーションはHDR向きですね」(石川さん)
前項で紹介したハロが、この作例でもくっきり。空の青も強調されて、空気感が違って見えます。
こんな場所を狙いたい3:夜の光
夜景の撮影もHDR写真の醍醐味のひとつ。にぎやかな夜の街を撮影してみました。
たくさんの看板、その一つひとつの光を拾いつつも、色がはっきりと出ています。店先のさまざまな装飾物の質感も際立たせることができます。
「色とりどりに光る看板の光を拾いつつ、真っ暗になってしまいそうな路上の奥の風景もしっかり捉えることができました。HDRにすることで、店先のさまざまな装飾物の質感も際立たせることができます。このように夜の暗闇と看板の光というコントラストがはっきりした風景も際立つ質感の被写体があれば、HDRでより印象的に仕上げることができます」(石川さん)
さらにこの写真、石川さんがふだん行っているようなレタッチを行っていただきました。すると、鮮やかさがまして以下のような作品に!
「画像加工ソフト“Lightroom”を使って、HDRで撮影した画像をさらにレタッチしてみました。シャドウを限界まで上げて、暗い通りの奥の風景を極力再現し、明瞭度と彩度も調整してよりくっきりと鮮やかに見えるように調整しています」(石川さん)
まとめ
さて、今回の撮影で、石川さんはα7Sにどのような印象を抱いたのでしょうか。
「α7にしてから、HDR写真の撮影でも三脚はほぼ使わなくなったのですが、α7シリーズ、特にα7Sはセンサーの感度が良く、高速でブラケット撮影ができました。そしてフルサイズ機としてはとても軽量でいいですね」(石川さん)
ふだんとはまったく違った世界を、気軽に見せてくれるHDR写真。あなたもぜひ、年末の旅行や帰省などで試してみてください。