美しい花々が咲き誇る、春がやってきました。彩りに溢れるこの季節、儚(はかな)い花の命を永遠のものにできるのは、カメラのなせる業かもしれません。この春、挑戦したいのは「見たことのない花」の写真。マクロの世界を映す「水滴写真」なら、花を撮るだけでなく、見たことのない “花をつくる”写真を撮ることができます。
今回、「水滴写真」の撮り方を教えていただくのは、息をのむような美しい作品が国内外で注目され、「妖精の目」を持つと言われている水滴写真家・浅井美紀さん。
ぱっと見、珍しい花のように見えるこちらの写真は、実は水面と光の反射を利用し、水滴によって“つくられた花”なのです。
早速、デジタル一眼カメラα7 IIを使って、マクロの世界に咲く奇跡の花の撮り方を教えていただきました。
水滴写真家・浅井美紀
北海道帯広市生まれ。幼い頃から写真鑑賞に興味を持ち、一眼カメラの購入をきっかけに、2012年5月から写真投稿サイト「500px」に自身の写真を投稿。マクロレンズを通して撮影された神秘的な作品は、イギリスのカメラ雑誌等で取り上げられ、その後日本でもさまざまなメディアで紹介される。2015年2月には、初の写真集『幸せのしずく World of Water Drops』(扶桑社)を刊行。現在も会社員として働きながら、仕事を終えた後や休日にカメラを手にし、肉眼では見えにくい小さく輝く世界を撮り続けている。
最初にする準備
「特別なものは、何も使っていません。カメラ・レンズ・三脚・LEDライト以外はすべて100円ショップで買うことができます。」という、浅井さん。まず用意するのが、「α7 II」と90mmのレンズ「SEL90M28G」。そして、下記の基本の七つ道具を準備します。
【基本の七つ道具】
- ペットボトルに入れた水
- スポイト
- はさみ
- 三脚
- LEDライト
- カラーセロハン(透明折り紙)
- 白い紙をクリアファイルに入れたもの(簡易的なレフ板)
その他、あると便利なのが、花を固定するためのセロハンテープ、また黒いお盆や粘土も使用することがあります。
基本の水滴写真の撮りかた
まずは基本の水滴写真の撮り方を教えていただきました。花は、“花びらに水滴がのりやすいもの”という観点で選びます。初心者におススメなのが、ガーベラ。
- 1. カメラを三脚に取り付け、ガーベラの茎をペットボトルの高さに合わせて切ります。
- 2. セロハンテープ等で、ガーベラの位置を固定します。この時、水滴をのせる位置の見当をつけておき、水滴の真後ろにあたる背景が抜けてしまわないように、花の高さを合わせます。
- 3. 三脚の位置を合わせます。この時、寄れるだけ寄れる位置に寄せておくのがポイント。また、水滴をのせる前に、だいたいの構図を決めておきます。
- 4. 息をとめて、静かにスポイトで水滴をのせます。水滴は繊細なので、少しの揺れや風、自分の息などでこぼれてしまいます。また、花びら自体に湿気が多いと、水滴がうまくのらないことがあります。場合によっては、水滴をのせる花びらを換えたり、花自体を交換したりしましょう。
- 5. 被写体を動かして、ピントを合わせます。水滴の雫を、できるだけ大きく映すためには、レンズで合わせるというより、被写体の位置で合わせるのがポイント。「この時、レンズを触ると拡大される機能“フォーカスホールドボタン”は、他のカメラにはないαならではの機能で、ピントを合わせるのにとっても便利ですね。」と浅井さん。「露出補正がわかりやすく、ピントも合わせやすい、そして、何より操作が簡単です。」
※このときのF値は7.1
そして、完成形は、このような写真になります。
さらにバリエーションとして、水滴の量を増やしたり、背景の花の色を変えたりすると、このような水滴写真を撮ることができます。
水面の反射がつくる美しい花
そしていよいよ、“花をつくる”水滴写真の撮り方をご紹介します。
水面に映る反射が美しい、こちらの水滴写真。ここで使用するのが「黒いお盆」。100円ショップ売っているもので良いのですが、お盆の色は、必ず黒である必要があります。
- 1. お盆には、水がこぼれる直前まで水を注ぎ、その上に、茎がしなる花、もしくは茎だけを切ったものをしならせてアーチ状に置きます。そしてもうひとつ別の花を、その茎を止めるように置きます。
- 2. 基礎編と同じように水滴をつけてピントを合わせます。
- 3. 背景の色は、好きな色のカラーセロハンでつくります。お盆の後ろに置き、光が足りない場合は、LEDライトを当てて、背景の色を調節します。
背景の玉ボケがつくる幻想的な花
水面の反射の他に、水滴写真をつくる バリエーションとして覚えておきたいのが、こちら。
綿毛を活かした、水滴と玉ボケが作り出す花は、幻想的な雰囲気がとっても素敵です。
- 1. たんぽぽの綿毛を、粘土を丸めたものの上に立たせます。
- 2. 背景の玉ボケは、カラーセロハンの凹凸を利用してつくります。好きな色のカラーセロハンをくしゃくしゃに丸めて広げ、LEDライトを当てながら被写体の後ろに置きます。この時、玉ボケのキラキラを大きくする場合は、カラーセロハンを被写体から遠ざけ、キラキラを小さくする場合は、被写体に近づけます。「αは、本当に背景のボケがきれい。」という浅井さん。「とても柔らかく、きれいにボケるので、より幻想的な世界を作り出せます。」
“ダイヤモンドよりも美しい水滴”を味方に、奇跡の花を咲かせて
水滴写真の着想は、「雨上がりに、庭の花に水滴がついているのを見て思い浮かんだアイデアです。」と語る浅井さん。「肉眼では見えないものが、マクロレンズを通すと見えるので、その世界の虜になりました。水滴って、ダイヤモンドよりも美しいと思います。とっても繊細で、少しの光の加減で表情を変える、そんな水滴を味方につければ、見たこともない美しい花を咲かせることができると思います。」
この春、あなたもマクロの世界に、息をのむような美しい花を咲かせてみませんか?
ちなみに、今月号はTokyo Day Outとのコラボレーション企画!お花にちなんでTokyo Day Outでは、もうすぐ訪れる母の日に向けた、手作りのフラワーアレンジメントをご紹介しています。
DSC-RX100M3の動画機能を使って一工夫すれば、アレンジしている様子にメッセージも加えたオシャレな動画も作ることができます。
今回はDSC-RX100M3の「タイムラプス」機能を使い、文字が躍るコマ撮りアニメーション映像を作りました。
まず、カメラをWi-Fiに繋いでPlayMemories Camera Appsから「タイムラプス」のアプリをインストールします。そして、「MENU>アプリ一覧>タイムラプス」でタイムラプス機能を起動します。カメラを三脚に固定し、シャッターボタンを押すだけでタイムラプスの撮影が開始できます。今回は、シャッタースピードを「4秒」に設定し、シャッターとシャッターの“あいだ”の時間を利用して、文字のプレートを少しずつ動かすことによって文字が躍っているかのようなアニメーションを実現しました。
お花だけでなく、この映像ごと母の日のプレゼントにすることができそうですね。ぜひ試してみてください。
企画協力
※TOKYO DAY OUTは2018年7月に終了したwebマガジンです。
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