株式会社NHKテクノロジーズは、NHKグループの「総合技術会社」として、多様な専門性と新たな技術への対応を含めた確かな技術力で、“公共メディア”へと進化するNHKの事業を支えるエンジニア集団です。番組を制作する技術、放送を送出する技術、電波を送受信する設備の建設や保守、放送を支えるコンピューターシステムの設計・管理・運用など、放送に関わるさまざまな先端技術を駆使して、これからも人々の安心・安全・快適な暮らしに貢献してまいります。
株式会社NHKテクノロジーズ
メディア技術本部
事業展開部
シニア・エンジニア
井田 善博 様
私たちNHKテクノロジーズは、さまざまな番組の制作技術に携わっており、大相撲中継もその一つです。その中で、両国国技館にて大相撲中継を行う際、東西の花道にリモートカメラを設置し、取り組み前後の力士が通る姿を撮影しています。これまでは2台のカメラを背中合わせに配置し、そのうち1台で向かってくる様子、もう1台で去っていく様子を力士の歩みに合わせてスイッチングして捉えていましたが、どうしても映像が途切れてしまうため、固定カメラでしか撮影し得ない状況には以前から課題を感じていました。
そんな中、ソニーのPTZオートフレーミングカメラ『BRC-AM7』をご紹介いただき、この高画質とサイズ感で、これほど高い精度の自動撮影ができるなら、歩く力士を逃さず連続的に捉えられると考え、今回活用することになりました。
カメラが自然な画角で被写体を高精度に自動追尾してくれることで、花道でこれまで撮りきれていなかった力士のさまざまな表情が捉えられるようになりました。狭い花道をたくさんの人が行き交っていたり、力士がしゃがんだりしたときでも、簡単な操作で追い続けることができます。画質についても、BRC-AM7に搭載されているプリセットを切り換えることなどによって、求めていた力士の姿をサイズ固定ではなくサイズフォローできるようになり、かつ放送に十分耐えられる高画質なカットが得られるようになりました。また、これまで2台のカメラを設置していたところを1台で対応できるようになり、大幅な省スペース化が図れた点も大きいです。
さらに、タブレット端末でのタッチ操作を前提としたUIが採用されているため、カメラ操作の専門的な知識がない人でも直感的に操作できます。オペレーションのさらなるシンプル化が実現できているところも、実際に使用したスタッフからの評価が高いポイントです。
体の大きな力士が左右に揺れながら歩く際に、まだ多少カメラが振られる改善点もありますが、ソニーは引き続きAIによる追尾精度の向上に取り組むと聞いていますので、今後さらにオートフレーミングのクオリティーが上がることに期待したいと思います。
NHKテクノロジーズでは大相撲だけでなく、他にもさまざまなスポーツ中継番組の制作技術を担当しています。たとえば、水泳でのサブ会場や選手招集所での任意の選手のフォローや、スピードスケートのようにレース後のトップ選手のフォローなど、PTZオートフレーミング機能の活用を検討していきたいと考えています。また、スポーツ中継に限らず、スタジオ収録のサブカメラとして使用し、カメラマンの省人化とコスト削減をめざすなど、今後もBRC-AM7を活用したさまざまな撮影スタイルを模索していきたいと思っています。
リモートカメラシステムは、カメラ操作をリモートコントローラーで行うカメラシステムです。少人数でのオペレーション、カメラ設置が困難な場所、ホールや会議室などを広範囲に撮影する利用ケースに適しています。特にオンライン講義やウェビナー(オンラインセミナー)の重要性が増す中、従来の放送設備、映像制作用途以外にも、教育設備、各種ホール、会議室、Web会議(ビデオ会議)システム、ライブ動画配信や動画コンテンツ制作など、さまざまな用途にご利用いただけます。