2019.10.2
木の個性を見極め、その魅力が躍動するように磨き上げていく。木工作家・盛永省治さんの制作過程はまさしく、木と対話をしているかのよう。木材を回転させる木工旋盤という機械を使い、ウッドターニングと呼ばれる技法で、ボウルやオブジェなどの作品をつくり続けています。鹿児島県内にある工房で、ひとり創作に取り組む日々を、DSC-RX100M6で記録していただきました。
「普段作業している工房で、いろいろと撮ってみました。最初のほうの写真は、外側を削り終えたので、次に内側を削っているところです。こうしてボウル状のものをつくる場合には、丸太の状態からチェーンソーでカットしたブロックを、木工旋盤と専用の道具を使って削り上げて、そのあとに乾燥させます。僕のつくる作品は比較的薄いので、だいたい2週間くらいで乾くのですが、乾燥すると歪みが生じたり、自立しなくなったりする。そうした部分に修正を加えて、全体に手で細かなやすりをかけてから、蜜蝋を塗って完成させます。ここ何年もスマートフォンで撮ることばかりでしたが、身近なものもこうしてデジカメで撮ってみると、やっぱりきれいに写るので、写真を撮ることそのものに興味が湧いてきますね」
「木の外皮の部分をふちに残した仕上げは、ナチュラル・エッジと呼ばれるものです。すぐ近くに木をチップに加工する工場があって、そこで山桜や樫など、さまざまな木材を選ばせてもらって買っているのですが、重機を使って積み下ろしをする際などに、どうしても外皮が剥げてしまうことが多いので、こうした作品はなかなか数をつくることができません。白っぽい木材は榎(えのき)。通常はもっと黄色っぽいんですけど、こういう白いものがたまたま見つかって。実際に削ってみると、木くずが本当に真っ白で、雪のようにきれいだったので撮ってみたくなりました。動画は、ボウルをつくるためにターニングしているところです。やっぱり、丸太から切り出したときに、おおっと驚くような木目が現れる瞬間はたまらないですね。虫喰いや腐れがあっても、それを生かして、しっかり素材と相談しながら使い切れたときが、いちばんうれしいです」
「この工房には、いつも朝6時くらいにきて、夕方の5時にはきっかり作業を終えて家に帰ります。ひとりで作業を続ける、淡々とした毎日です。だから今回も、作業中の風景と、子どもたちと一緒のときの写真ばかりで。7歳と5歳の娘がいるんですけど、しょっちゅうケンカしていますよ。僕自身も2人とよくケンカするので、奥さんに怒られているんですけど(笑)。娘たちを走らせて、瞳AF(オートフォーカス)の機能も試してみました。こうやって遊びながら撮ることができると、また楽しいですね。自動でいろんな表情を捉えてくれるので、たくさん数を撮ってみると、いい写真が何枚か撮れていて驚きました」
「6月の終わりから、九州南部にはずっと大雨が降り続いていました。この工房は床が少し浸水したくらいだったのですが、県内の学校が休校になったり、近くの川が氾濫したり、一時は本当に大変でした。連日の雨がようやく少し落ち着いてきたころ、盛岡の『Holz』というショップで個展が始まることになっていたので、そのオープニングに向かったところです。こうした展示では、皿やボウルをはじめとした実用的なものと、そうではないオブジェのような作品と、その都度、全体のバランスを見ながら構成を考えるようにしています。このときは合間の時間で、『岩手県立美術館』に行くこともできて。すごくいい空間だったので、いろいろと撮ってみたくなりました。こうしてカメラを普段から使ってみると、ものでも風景でも、自分なりに切り取ってみることの大切さに気づきますね」
※盛永省治さんには、デジタルカメラ「DSC-RX100M6」を使って撮影していただきました(インタビュー時の写真は除く)
※本ページに掲載している情報は2019年10月2日時点のものであり、予告なく変更される場合があります
盛永省治(もりなが しょうじ) 木工作家。1976年生まれ。鹿児島県出身。大工、家具職人を経験したのちに独立。2007年、鹿児島県の日置市・東市来町に工房兼ショップとして「Crate」をオープン。当初は主に注文家具をつくるつもりだったが、以前から関心のあった木工旋盤を用いたターニングによるウッドボウルづくりを、YouTubeで見つけた動画によって独学で習得し、その制作に専念するようになる。2008年より、業者向けの合同展示会「FOR STOCKISTS EXHIBITION」に出展。2011年には、カリフォルニア州ジョシュア・ツリーを拠点にする彫刻家アルマ・アレンのもとに2カ月ほど滞在し、創作活動を手伝う機会を得た。現在も「Crate」の工房で、木工作品をはじめとした創作の日々を送り、日本各地のゆかりあるショップやギャラリーで個展の開催を続ける。2020年5月には、サンフランシスコの「Playmountain EAST」で個展を予定している。
盛永省治 オフィシャルホームページ
http://www.crate-furniture.net/
Edit by EATer / Photography by Kiyotaka Hatanaka(UM)[interview] / Design by BROWN:DESIGN
料理家 冷水さんが撮る、日々の風景「RX100 ダイアリー」
旬の食材を活かした、やさしい料理がファンの多い冷水希三子さん。定期的に更新している彼女のインスタグラムには、日々の料理が並び、その料理を楽しみにしているフォロワーの方がたくさんいらっしゃいます。そんな冷水さんがRX100M3を使い撮影した、日々の写真を紹介します。