商品情報・ストア Feature アサヒカメラ × α Photographer 高性能だけじゃないユーザーの声を踏まえた進化こそが魅力 -ミラーレスカメラで変わった鉄道写真-
アサヒカメラ × α Photographer 高性能だけじゃないユーザーの声を踏まえた進化こそが魅力 -ミラーレスカメラで変わった鉄道写真-

鉄道写真はミラーレスカメラでどう変わった?

数ある被写体の中でも、とりわけ根強い人気を誇る鉄道写真。今、αを筆頭としたミラーレスカメラの登場によって、その鉄道写真の有り様が大きく変わろうとしています。これを受けて、ソニーストアでは、2人の識者によるスペシャルトークイベント『「CHANGE」-ミラーレスカメラで変わった鉄道写真』を開催。早くからミラーレスカメラに可能性を見出していたと言うアサヒカメラ前編集長・佐々木広人氏と、最前線で活躍する鉄道写真家・山下大祐氏のクロストークで、いったい何が変わったのか、変わっていくのかを浮き彫りにしました。

ここではこのイベントで語られた貴重なお話を、より多くの方に知っていただくため、去る2月16日(日)に、ソニーストア銀座5階のイベントスペースにて実施された同イベントの様子を詳細レポートします。

「ミラーレスカメラの時代」においては
より撮影者のアイデア、
芸術性が求められるように

ソニーストア銀座 5F、デジタルカメラ売り場の隣のイベントスペースで行われたスペシャルトークイベント『「CHANGE」-ミラーレスカメラで変わった鉄道写真』。あらかじめアサヒカメラでの告知が行われていたこともあり、従来よりも幅広くカメラファンの皆さんにお集まりいただきました。さて、アサヒカメラと言えば、他のカメラ専門誌と比べて、かなり早い時期からミラーレスカメラに注目し始めていたと印象があります。当時はまだ発展途上だったミラーレスカメラを誌面で大きく取り扱っていたのはなぜなのか?その理由を佐々木さんは次のようにふり返ります。

「ソニーから『α7』というフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラが登場したのが2013年後半。僕はちょうどそのタイミングでアサヒカメラの副編集になりました。編集部に届いた『α7』を触ってみて感じたのは、この製品の登場によって写真を撮る人の間口が大きく広がるだろう、良い写真がさらに増えていくだろうということ。カメラ誌としてここに目を付けない手はないなと思いました」(佐々木さん)

これには山下さんも大いに同感とのこと。山下さんは『α7』デビューの翌年に発売された『α7S』で初めてシリーズを手に取ったとのことですが、「これが劇的にカメラの将来を変えていくんだなと確信したのをよく覚えています。その後、2017年に発売された『α7R III』から、本格的に仕事で使うカメラとして常用するようになりました」(山下さん)と、その鮮烈なファーストインプレッションと、現在はご自身の主力カメラとして昨年9月に発売された『α7R IV』を活用していることを教えてくださいました。

では、ミラーレスカメラと一眼レフはどういった点が異なっているのでしょう? その機能的なアドバンテージにはどういった点にあるのでしょうか?

「僕ら鉄道写真家界隈がカメラメーカーにずっと要求していたことがあります。それは、フレームの端の方に1点でもいいからAFポイントを配置してほしいということ。でもこれ、一眼レフでは構造上の制約からどうしても実現できず、僕らも半分諦めていました。ところがミラーレスカメラにはそんな制約はありません。我々が長年悩んでいたことが一瞬で解決してしまいました(笑)。そのほか、撮った写真のプレビューがファインダー(EVF)内で行えるようになったことも大きいですね。液晶モニタの見にくい明るい場所でもピントや露出を確認できるようになりました。これ、僕らにしてみれば劇的な進化なんです」(山下さん)

「プレビューについては僕も山下さんと近いことを感じています。EVFは作品の仕上がりイメージを掴みやすいのがメリット。例えば、鉄道のある光景を撮ろうとした時、本番前に、(露出などを反映した)より写真の仕上がりに近い形で構図を確認できます。なによりそこからさらに一歩踏み込んでいくことで、一眼レフではなかなか思うような写真を撮れなかったという人がワンランク上の写真を撮れるようになる可能性がある。従来のカメラではプロや上級者に太刀打ちできなかった技術的な部分に追いつけるようになるんです。実際、そういう動きが出てきていることを実感しています」(佐々木さん)

佐々木さん曰く、これまでの一眼レフでは実現できなかった機能や使い勝手を実現したことで、アサヒカメラなどが主催している写真コンテストでは明確に応募作品のレベルが向上しているそうです。以前のような撮り方で普通に記録するだけでは上位に入るのが難しくなってきているのだとか……。

「その結果、どういう写真だったら人を惹きつけられるのかというアイデア勝負になってきています。難しいところは全てカメラに任せて、人間にしかできない美的感覚を磨いていく。これがミラーレスカメラの正しい使い方なのだという結論です」(佐々木さん)

「撮影以前の、何をどう撮るか、構図をどのように切り取るかを決められるのは人間だけ。そこで違いを作っていかねばならない時代ですね。プロも常にそこに考えを巡らせています」(山下さん)

アサヒカメラ前編集長としての佐々木さんも、最前線のプロフォトグラファーである山下さんも、カメラへの取り組み方が変わってきていることでは共通の認識をお持ちのようです。また、イベントに参加した皆さんも多くがこれに同感だったよう。会場には“かつてのカメラ文化”を知る年配の方も多くいらっしゃっていましたが、皆さん、一様に深く頷きながらお二人のお話に聞き入っているのが印象的でした。

αはミラーレスカメラの“牽引役”であり
あるべき姿を示す“模範”である

ミラーレスカメラの登場でプロからアマチュアまで、写真への取り組み方が変わってきつつある中、ソニーのミラーレスカメラ「α」シリーズがどのような位置付けにあるのか、お二人は時代の“牽引役”であってほしいと口を揃えます。

「すでに「α」シリーズはカメラ業界を引っ張っていく立ち位置にいます。この先も、1人だけつっぱしるのではなく、引っ張っていくかたちで業界全体を盛り上げていってもらいたいですね」(山下さん)

「現在の「α」シリーズのラインアップは、高画素モデルから高感度モデルまで極めて多彩です。しかし、ここで重要なのがそれらのラインアップのコンセプトが明確で、何を撮るべきなのか、何を撮るのに向いているのかがわかりやすい。その点、「α」シリーズは時代の“牽引役”であると同時に、フルサイズミラーレスカメラがこうあるべきだという“模範”を示していると考えています」(佐々木さん)

さて、現在は最新モデル『α7R IV』を愛用中の山下さんですが、それまで使っていた『α7R III』と比べて、その進化をどのように捉えているのでしょうか? 実際に使い込んでいるプロフェッショナルの感想、とても気になるところです。

「昨年の夏から『α7R IV』を使っています。スペックを見たときは、まず、とんでもない画素数のカメラが出たもんだなと思ったのですが、それと引き換えに何かを妥協しているということもほとんどなく、ほぼ全ての点で先代『α7R III』を上回っています。ここまでの製品が出るのはあと1年くらい先だと思っていたので驚きましたね。ちょっと進化が速すぎますよ(笑)」(山下さん)

もちろん感心したのはスペックだけではないと言います。グリップの形が変わってより握りやすくなったこと、本体背面の親指AFボタンが押しやすくなったこと、露出補正ダイヤルにロック機構が付いたこと、レリーズケーブルを接続する端子のカバーの開く向きが変わってより使いやすくなったことなど、大きなところから細かいところまで、徹頭徹尾、ユーザーの声に向き合っていることに感心したそうです。

そしてアサヒカメラ2020年2月号では、そんな山下さんの使いこなしに迫る記事が掲載。毎回異なる写真家が、愛用する「α」シリーズを語るレギュラー企画「αの魅力をひもとく」第9回には、山下さんが『α7R IV』撮影した鉄道写真と共に、山下さんの「α」シリーズへの想いが綴られています。

「この記事は、山下さんが『α7R IV』をご自身の撮影ギアとしてきっちり使い込んで、そのフィーリングも含めて語っていただいたもの。カメラは道具ですから、使い込んだときにこそ“味”がでます。短期間の試用に基づくファーストインプレッション的なものとは次元が異なっており、必読です」(佐々木さん)

そしてイベントはメインパートである、山下さんの鉄道写真作例紹介のコーナーへ。アサヒカメラ記事で紹介された写真を大画面ブラビアに表示しつつ、その写真がどのように撮影されたのか、見どころはどこなのかをお二人に語っていただきます。

写真家・山下大祐が
『α7R IV』で撮影した鉄道写真
識者が語り尽くすその魅力と見どころ

山下さんの撮影した鉄道写真をお題に識者が語るクロストーク、1枚目に映し出されたのは、アサヒカメラ記事の最初の見開きに掲載された秩父武甲山の採鉱場のふもとを走る、西武鉄道の写真。新型特急電車「ラビュー」が銀色の車体をきらめかせて走るようすを映し出した風景的一枚です。

<武甲山の作品>


Sony α7R IV + FE 24-70mm F2.8 GM 
1/320秒・f8・ISO100・マニュアルモード

佐々木:これはまさに今の時代の風景写真だなと思える1枚。新型の車両が映っているという時点で記録性が高いのですが、武甲山という、人間が自然に関わった末の姿も一緒に写し取っているところが面白い。特に僕が人間っぽさを感じたのは写真中央やや左にうっすらと写っている工場の排煙です。この煙があることで、工場が稼働していて、そこに人がいるということが伝わってきますよね。こうした人の営みと自然の姿、そして鉄道を1枚の写真で楽しめるというのは、高画素な『α7R IV』で撮ったからでしょう。

山下:(佐々木さんの排煙への言及を受けて)そういった点で言うと、山腹のもやっと映っている砂煙にも注目していただきたいですね。これはシャッターを切る数分前に爆発した発破(ダイナマイト)の煙。この写真ではそうした描写にもこだわっています。山まで入れてワンフレームで撮るには広すぎる光景なのですが、『α7R IV』の高画素ならいけると考えて撮影しています。

佐々木:こういうワイド感のある写真って、解像度が低いとただの横に長いだけのだだっ広い写真になってしまいがち。でも、解像度があることで、画面の至る所からドラマを感じられるようになります。たった1枚だけど、何度見ても楽しめる写真になるんですね。そして、それが観る人の心を惹きつけるんです。こんなことは、たった一つの決定的瞬間で勝負せざるを得なかった、昔の時代には考えにくいですよね。

続いて表示されたのは、札幌の雪道を走る路面電車を捉えた作例。路面電車を真正面から捉えたシンメトリカルな面白さも感じられる1枚です。

<札幌の路面電車の作品>


Sony α7R IV + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 
1/320秒・f11・ISO100・マニュアルモード

山下:この写真は昨年11月に札幌の市電を撮影したもの。前日にドカっと雪が降ったものの夜のうちに止み、朝の日差しによって白と黒のコントラストが強い1枚になりました。日差しがなかったら全くイメージの異なる写真になったと思います。

佐々木:白と黒、そしてメタリックな質感がキモの写真ですね。モノクロにしても面白かったかも。雪面に光が反射しているところが白く飛んでしまわないようにするのが難しいんですよ。この写真はそのあたりをきちんと表現できていて、おかげで雪は止んでいるもののキュッとした寒さを感じられるようにもなっています。ちなみに私は雪国出身なんですが、こういうふうに、雪で電線がたわんで下がってくると冬の到来を感じます(笑)。

山下:雪が溶けて電線やパンタグラフにしたたっている水がキラキラと輝いている様子や、車が巻き上げる飛沫なんかの表現にもカメラの力が発揮されていますね。

3枚目の写真はこれまでとは異なるユニークなカット。トンネルの向こうに走り去っていく電車と線路脇に群生するひまわりの様子を捉えたものなのですが、何と車両がほとんど隠れてしまっています。この写真にはどういった狙いがあるのでしょうか?

<トンネルの向こうに消えていく電車の作品>


2×テレコンバーター使用
Sony α7R IV + FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
1/320秒・f16・ISO800・マニュアルモード

佐々木:これは編成写真が好きな人が怒り出しそうな1枚ですね(笑)。

山下:ちらっとテールライトが見えるのですが、これ、電車が向こうへ走り去っていくバックショットなんです。それだと電車が真正面を向いたところを捉えてもパワーに欠けるところがあって……。どうするか思案していたらトンネルの向こうにひまわりが咲いていることに気がつき、それを見せる手はないかと思案してこの撮り方を導き出しました。

佐々木:そして、これ、200-600mmのレンズにさらに2×のテレコンバーターを付けて撮っていますね。なぜそんなことを?

山下:まずトンネルの周りをこの四隅で切り抜くことを決め、その上で背景を少しでも大きく撮るために望遠レンズを使いました。できるだけ離れて望遠で撮ってあげた方が、入口と背景の圧縮感が違ってきますから。

佐々木:そしてこのチラ見せ感が絶妙。ひまわりにドラマを感じさせつつ、ギリギリテールライトは映っているのが見事です。

そして4枚目は……一見すると鉄道写真とは思えない1枚。しかしよく見ると彼岸花の向こうにある2本の光条が鉄道のレールだということに気がつきます。

<彼岸花とレールの作品>


Sony α7R IV + FE 70-200mm F2.8 GM OSS 
1/160秒・f8・ISO100・マニュアルモード

山下:これは三岐鉄道(三重県)で撮影をしていたとき、線路脇に彼岸花が群生しているのを見つけて、スナップ的に撮影したものです。鉄道写真が面白いのは、こういう写真もアリなところ。鉄道という存在が誰にとっても身近だからこそで、ほかのジャンルではなかなか成立しない撮り方だと思っています。

佐々木:線路がなかったらただの綺麗な花の写真なんですが、奥にどこまでも続いてきそうな線路が太陽の光を受けて輝いている、そこに目を奪われるんですよね。また、ピントを花の側に合わせているというのも大事。ここで線路のディテールを出そうとすると台無しになってしまいます。

山下:アングルを決める際に気をつけたのは、一番強い光を受けている線路のハイライトがシャドウ側にぼんやりと光をにじませているように見えることと、一番元気の良い花にピントが合うようにすること。ちょっとくたびれている花はぼかしています(笑)。

5枚目以降はアサヒカメラに掲載されなかったカット。初公開の貴重な鉄道写真となります。その1番手は、山下さんに「これが未掲載だったとは(笑)」と言わせるほどの完成度の高い新幹線のアップカットです。

<500系新幹線アップカット作品>


Sony α7R IV + FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS 
1/2500秒・f8・ISO200・マニュアルモード

山下:これは『α7R IV』の機能をばりばりに駆使して撮った写真ですね。鉄道ファンの間ではおなじみの500系新幹線です。鉄道に詳しくないという方でもこの形は見たことがあるはず。残念ながら東京にはもう入ってこないのですが、西日本ではまだ現役で、こちらに向かって走ってくるところをトラッキングさせ、AFを追従させながら連写しました。

佐々木:すごいAFの食いつきですよね。質感がクッキリと写ってる。表面の磨きの跡とか細かいキズとかに、この車両がいろいろなものを背負って走ってきたことを感じさせられます。

山下:前後の写真もきちんとピントが合っているので、置きピンで撮った場合と異なり、後でベストな1枚を選べるよさがあります。鉄道写真では非常に有効な機能で、とても重宝しています。背景を黒で引き締めることで、被写体(新幹線)が浮かび上がってくるという効果も狙っています。

6枚目は山下さんがα Universeにご提供いただいている、ダム湖に架かる鉄橋を俯瞰した鉄道写真の縦位置バージョン。近い場所で撮影していますが、空が入ることでずいぶんと印象の異なる写真に仕上がっています。

<ダム湖に架かる鉄橋の作品>


Sony α7R IV + FE 16-35mm F2.8 GM
1/640秒・f8・ISO100・マニュアルモード

山下:この写真のポイントは上部の雲の立体感と下部の緑の表現が同居していること。皆さん誰しも経験があると思うのですが、雲の立体感を出そうとすると、どうしても風景がアンダーになってしまいがち。従来は空を入れない方が安全なんです。特に夏の緑は黒に近いですからね。『α7R IV』の階調表現力あってこその1枚です。

佐々木:縦位置の写真ってこういう時に勇気がいります。「覚悟の縦」なんて言われますから。このシチュエーションで木々のディテールが潰れていないというのは本当にすごいことなんですよ。

山下:先の500系新幹線では周辺の黒を引き締めて撮りましたが、こちらはその逆で、コントラストを出すと表現できない明暗差を表現させています。こういう懐の広さも『α7R IV』の良いところだと思いますね。

最後の7枚目はまさに今、日が落ちようとしている中を走り抜ける新幹線を撮影したもの。鉄道にはほとんど光が当たっていませんが、にもかかわらずしっかりとした存在感を感じ取れる印象的なショットに仕上がっています。

<夕暮れバックの作品>


Sony α7R IV + FE 16-35mm F2.8 GM 
1/2000秒・f4.5・ISO400・マニュアルモード

山下:空を出しつつ、不自然ではないシャドウの表現ができる『α7R IV』の表現力に助けられた1枚。きちんとデータがあるので、ギリギリ白い鉄道を浮かび上がらせるようなコントラストの調整もできます。シャドウ部分の描写がコントロールできるからこそ、こういう表現ができるんです。

佐々木:データがなければ、後処理でここを思いっきり持ち上げてもこうはならないんですよね。

山下:それに加えて、ここで止めて撮るのも難しいところだったのですが、それも『α7R IV』の高速連写を駆使することで難なく撮ることができました。

αの魅力は圧倒的な
高性能だけじゃない
ユーザーの声を踏まえた
進化こそが魅力

鉄道写真家・山下大祐さんの相棒として、もはや手放せない存在となっている『α7R IV』。山下さん曰く「これによって撮れる写真が大きく変わりつつあるのを感じる。今後、そういった新しい被写体、撮り方にもチャレンジしていきたい」とのことです。

この後、イベントでは参加者から募った質問に佐々木さん、山下さんが回答するQ&Aコーナーを実施。「写真を撮るときに最も心がけていることは?」「初めての場所のロケハンはどのようにしている?」「アサヒカメラの編集長になって人生に影響のあったことは?」など、さまざまな質問にお二人が真剣に回答してくださいました。

そしてイベントの最後には、司会者からお二人に「αの魅力とは?」という質問が。その回答は奇しくも同じ、「α」シリーズがユーザー目線で作られているというものでした。

「『α7R IV』では、冒頭でもお話ししたよう全てのスペックの水準が上がった上で、使い勝手の部分でもしっかり撮影者目線になっています。個人的にはそれが最も良いニュースでした。今後も、そのままで更なる高みを目指していってほしいと思っています」(山下さん)

「ソニー「α」シリーズは、言うなれば業界の常識をぶっ壊したカメラ。フルサイズ機が一眼レフ一色だったところに殴り込みをかけて、そこから着実に進化させてここまで到達しました。例えばグリップの形状もそう。『α7R IV』で非常に握りやすい形になって、これでどれだけのシャッターチャンスが救われたことか……。これって、開発者がユーザーの話をしっかり聞いてきたから実現できたこと。この“聞き分けの良さ”は今後も継続していってほしいですね」(佐々木さん)

〜佐々木広人さん、山下大祐さん
イベント後インタビュー〜

αを使っていない人たちからは
「どうしてくれるんだ」って
思われているかも(笑)

お疲れさまでした。まずはイベントを終えての感想をお聞かせください。

佐々木:純粋に楽しかったです。長らく雑誌の仕事をやってきましたが、やっぱり書き言葉だけでは伝わないものってあるんですよ。実際にそのカメラを使っている人の息づかいというか……。また、山下さんとのトークイベントにしていただいたことで、講演会などよりも引き出されるものがあったように感じています。音楽に例えるなら雑誌にはCDの、イベントにはライブの良さがあるのではないでしょうか。ぜひ、こういう催しを今後も続けていただきたいですね。もちろん、また呼んでいただきたいです(笑)。

山下:私も楽しかったです。こうしてクロストーク形式で、しかもメディアの方と喋る機会はなかなかないのですが、キャッチボールのような形でお互いの経験、強みを引き出すことができ、お越しいただいた皆さんにご満足いただけるような話ができたのではないかと思っています。今回お見せした作例も、ああ、こんなところを見ているのかと知ることができて、私自身とても勉強になりました。

アサヒカメラの読者の間で「α」シリーズはどのように評価されているのでしょうか?

佐々木:ご存じのようにアサヒカメラはベテランのカメラファンが多い雑誌なのですが、「α」シリーズはその中でも特に若い方に支持されているという印象です。こうした方々は、SNSで写真を公開している方が多く、自己表現について前向きです。すると自然とカメラの機能を駆使して撮影していこうという姿勢になっていくんですよね。

また、イベントでもお話ししたよう、「α」シリーズを筆頭としたミラーレスカメラの登場で、写真コンテスト入賞のボーダーラインがものすごく高くなっています。今では相当の美的感覚がなければ入賞できなくなってしまいました。ですので、使っていない人たちからは「どうしてくれるんだ」って思われているかもしれません(笑)。

これから鉄道写真を始めたいと考えている方に、オススメのαとレンズを教えてください。また、オススメの被写体・場所を教えてください。

山下:予算次第のところもあるので、とても難しい質問なのですが、『α7 III』以降であれば、どの製品でも「α」シリーズならではのハイテクを活かした撮影が楽しめるのではないでしょうか?

佐々木:その上で、個人的にはできるだけ良い機材で始めてほしいという気持ちがあります。よくビギナーは手頃なカメラで充分と言う人がいますが、僕はそれ、逆だと思うんですよ。最初に最新・最高のものを買って、それを基準に感覚を磨いていった方がいい。技術的な遅れを努力で補おうとすること自体がロスだと考えています。……それに高いモノを買っちゃった方が、取り返そうってやる気になりますよね(笑)。

今回のイベントでは山下さんの撮影した鉄道写真を大画面ブラビアで再生していました。大画面4Kテレビで写真を見る楽しみについてどのように感じられましたか?

佐々木:日本の住宅事情を考えると、撮った写真を大きくプリントして飾っておくのは難しい。でも、テレビに表示させるのであれば、話が変わってきます。番組を見ていない時にスクリーンセーバーのように作品を表示させたり、ホームパーティーの時に写真を大画面で友達に見せたり、いろいろな楽しみ方ができそうです。また、4Kテレビならではの高精細・大画面で見ることで、小さなPCやスマホの画面で見ていたのでは気がつかない細部に気がつくメリットもあります。写真の新しい楽しみ方として今後ますます広がっていくのは間違いないでしょうね。

山下:こうしたイベントではいつも大きなテレビに写真を表示していただくんですが、何度見ても惚れ惚れしますね。プリントとは発色や黒の沈み込みが全く違っていて、写真の新しい装丁方法の1つだと思っています。また、テレビでは写真(静止画)と動画の境目も曖昧なものになっていきます。両方がミックスされた作品も出てきているようですし、そこには将来性を感じます。いつか自分もそういうものを作ってみたいですね。


アサヒカメラ前編集長
佐々木広人
Sasaki Hiroto

1971年、秋田県生まれ。リクルートの海外旅行誌の編集者だった99年、朝日新聞社に移籍。週刊朝日副編集長、アサヒカメラ副編集長など経て、2014年4月から5年間アサヒカメラ編集長を務める。2019年4月から雑誌本部長。肖像権や著作権、撮影マナーに関する講演も多く、「写真界の噺家」と呼ばれることも。2012年の新語・流行語大賞トップテン入りした「終活」の生みの親でもある。

鉄道写真家
山下大祐
Yamashita Daisuke

1987年兵庫県出身。日本大学芸術学部写真学科卒業後、フリーランスのカメラマンとして活動する傍らロケアシスタントで多様な撮影現場を経験。2014年からレイルマンフォトオフィス所属。鉄道会社の広告・カレンダーや車両カタログ、カメラ広告、鉄道誌のグラフ等で独創性の高いビジュアルを発表している。


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FE 16-35mm F2.8 GM

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