1980年、東京都出身。ドラマ、アニメ、映画などのサウンドトラック楽曲のほか、アーティストへの楽曲提供、編曲なども手がける。2006年、ドラマ『医龍 Team Medical Dragon』のサウンドトラックが話題となる。2014年より、ボーカルプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]をスタートさせ、第1弾はアニメ『機動戦士ガンダムユニコーン』にて楽曲をプロデュース。2016年6月には『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』のオープニングテーマ『Into the Sky』をリリース。
ソニーヘッドホンの新たなフラッグシップモデルMDR-Z1Rが発売されます。澤野さんには1週間ほどご自宅で試聴していただきましたが、第一印象はどのようなものでした?
とにかく聴いていて楽しかったです。 音楽制作をしているときは、モニタースピーカーにしてもヘッドホンにしても、派手に聴こえてテンションが上がる音が好きなんですよ。だから僕にとって「楽しい」と感じるかどうかは、とても重要。Z1Rは、機能で「色づけされた」派手さではなく、「フラットでナチュラル」なサウンドなのに、しっかり音圧もあるし、迫力や臨場感、奥行きも感じましたね。
澤野さんが作曲された『Into the Sky』をMDR-Z1Rで試聴したそうですが、作り手としてどう聴こえましたか?
曲の後半で生ドラムやエレキギターが入ってきて「生っぽさ」を感じる曲調なのですが、基本的にはシンセサイザーを全面に出したデジタルサウンドです。そこでこだわったのが「立体感」。たとえば、音像における楽器音の配置やイコライザーなどで曲の立体感や印象が変わってくるので、「どのシンセ音をどんな音でどこに配置するか?」にもこだわりました。Z1Rで聴くと、ステレオスピーカーでは表現が難しい、頭の後ろに回りこんだ音まで感じさせてくれるんです。まるで、音のなかに入り込んでしまったような感覚というか。あとは音の立ち上がりが非常にいいなと思いました。ピアノにしても、ドラムやベースにしても、自分の思い描いていたイメージにかなり近い音で鳴っているなと。
MDR-Z1Rのヘッドホン端子は、新規格のバランス接続を採用しました。これにより、音質、強度、立体感がとても良くなっています。
接続プラグも気になったので、バランス接続とアンバランス接続とで聴き比べてみたんですよ。ものすごく大きな違いを感じたわけではないのですが、Z1Rで聴くと、音に厚みが出たように感じました。
MDR-Z1Rは微小な音の表現が可能になりました。演奏前後の「静寂」をも表現するように設計しているのですが、どのような印象でしたか?
たしかに、音の消え際などは非常にナチュラルな印象がありました。ドラムのハイハットの鳴り方や、奥行き感のある女性コーラスの歌声など、そういう空気感や表現力も引っくるめて曲の「臨場感」に影響しているのかもしれないですね。
「臨場感」でいえば、MDR-Z1Rはコンサートホールのもっとも良い席(Best Audience Seat)で聴いているようなサウンドの再現性を目指しています。
ああ、なるほど。たしかに、サントラ曲で女性コーラスを視聴したとき、広いホールにいるような臨場感がありました。あと、僕が手がけたオリジナル・ビデオ・アニメ『機動戦士ガンダムユニコーン』のサントラをすべて聴いてみたのですが、制作期間のスパンが長かったため、それぞれの時期によってアレンジがかなり違うんですね。2009年に作り出した音と、2014年に最後のレコーディングしたものでは、僕自身の音楽性にも変化が出ているので、曲の仕上がりにも影響していますね。
そのアレンジの違いを、MDR-Z1Rでは聴き分けることができると?
はい。シリーズ初期は、オーケストラのシンフォニックなバランスや各楽器の鳴り方、空間の広がり方などを気にして制作しました。それが後半へ進んでいくに従い、たとえばハリウッド映画『レインマン』のサントラも手がけた映画音楽界の巨匠、ハンス・ジマーの音作りに影響を受けて、打楽器とシンセを組み合わせてみたり。もちろんボーカル、ギターなど、各パートのミックスダウンの方法も、時期によって変わってきているのですが、そういうアレンジ、サウンドの変遷というのが再現力のあるZ1Rで聴くと、より鮮明になっていました。
音に込めた作者のこだわりポイントが再現されているのはうれしいですよね。
ええ。本来、ヘッドホンで重低音を聴き分けるのは難しいのですが、そこもよく聴こえます。最近は、低音を聴きやすくするためにブーストするものが多いじゃないですか。そうすると、ほかの周波数帯域が影響されてしまい、作り手が届けたい音バランスではないものになってしまうことがあるんですよ。MDR-Z1Rの場合は、自然な響きで低音を聴き分けられるほか、高域まで非常にクリアに聴こえてきます。ズンとした重低音って、全身で聴くスピーカーとは違い、耳だけのヘッドホンで再現するのは難しいのですが、体感的にはかなり近いところまで来ているように思います。
じつはMDR-Z1Rを作るにあたって、ニューヨークのソニー・ミュージックスタジオも協力して、「マスタリングスタジオでも使えるヘッドホン」というのを目指したところもあったんです。
なるほど。自分の曲を試聴して、イメージ以上だと感じたところもありましたよ。このヘッドホンで聴くと、制作のミックス過程で表現したかった「立体感」をより感じることができるんです。久しぶりに何時間もヘッドホンをつけて、いろんな音楽を聴きまくりました。僕はわりと大きい音で聴くのですが、疲れる感覚がないまま何時間も聴けましたね。
MDR-Z1Rは長時間でも疲れない「フィット感」を重視した作りになっています。装着感はいかがでしたか?
ほかと比べても抜群に良くて、全然疲れなかったです。これまで使っていたヘッドホンは7万円クラスで、決してグレード的にも悪くないものですが、それでもZ1Rの装着感は違いました。
クラシックからロック、EDMまで、あらゆるジャンルの音楽に対応して作られたMDR-Z1Rですが、とくに良さを実感できそうなジャンルや曲というと?
おそらく、楽器の編成がシンプルなほど、一つひとつの音の立ち上がりや再現能力がよくわかるので、そういう音楽でZ1Rは威力を発揮すると思います。僕の音楽は、オーケストラとか、デジタルと生楽器の融合とか、かなり音数が多いのですが、その場合でも、各楽器の定位感や空間の広がり、臨場感などを鮮明に、リアルに表現してくれる。本当にジャンルレスで楽しめると思いましたね。
MDR-Z1Rのようなハードが進化することで、リスナーの音楽体験はどのように変化していくと思いますか?
たとえばものすごく高価なオーディオシステムを、大きい音で聴く環境はなかなか作れないですよね。でも、Z1Rのようなサウンドクオリティーの高いヘッドホンがあれば、それと同じくらいのリスニング体験を、いつでもどこでも好きな音量で聴くことができる。それってすごいことだと思うんですよ。
「20万円くらいのヘッドホン」と聴くと、ちょっとひるんでしまいますが(笑)、高価なオーディオシステムに近いサウンドをこの値段で持ち運べるとなれば、音楽の楽しみ方も変わってきそうですね。
たとえば洋服でも、高価なものは袖を通したときの心地よさが違うように、いい音を一度知ってしまうと、なかなか後戻りできない。いいヘッドホンを長く大切に使いたいですね。
本当にそう思います。僕は学生時代に、お金を貯めてちょっといいコンポを手に入れたことがあったんですね。そうすると、音楽の聴こえ方が変わるんですよ。同じ曲を聴いても、「あ、こんな音が聴こえる」「こんな音まで!」ということがたくさんあって、ものすごくテンションが上がったことを覚えています。これまで何十回、何百回と聴いてきたCDを棚から引っ張り出してきて、そのコンポですべてのアルバムを聴き直しました(笑)。
オーディオが変わることで、曲の良さを再発見する体験ということですね。
今回Z1Rを使ってみて、そのときの感動を思い出しました。「この音で、家にあるCDをすべて聴き直したい」って。Z1Rと出会ったことで、久しぶりに「音楽を聴く楽しさ」を思い出せたことを心から感謝しますね。
レーベル:Sony Music Labels Inc.
配信開始日:2016.06.29
収録曲数:全8曲
販売データ:ハイレゾ|FLAC|96.0kHz/24bit
レーベル:SUNRISE Music Publishing
配信開始日:2014.05.28
収録曲数:全25曲
販売データ:ハイレゾ|FLAC|48.0kHz/24bit / ビデオ|SD | AVC/H.264
レーベル:SUNRISE Music Publishing
配信開始日:2014.05.28
収録曲数:全19曲
販売データ:ハイレゾ|FLAC|48.0kHz/24bit / ビデオ|SD | AVC/H.264
レーベル:SUNRISE Music Publishing
配信開始日:2014.05.17
収録曲数:全14曲
販売データ:ハイレゾ|FLAC|48.0kHz/24bit
レーベル:SUNRISE MUSIC PUBLISHING
配信開始日:2014.12.03
収録曲数:全13曲
販売データ:ハイレゾ|FLAC|48.0kHz/24bit