鳥居僕は説明を受けるまで今ひとつその凄さがわからなかったのですが、「DTS-HD Master Audio」ロゴを取得するとは、どういうことなのでしょうか?
伊藤DTSでは、DTS-HD Master Audioをはじめとしてさまざまな基準があります。「DTS-HD Master Audio」ロゴは、そのなかでも最上位のものとなります。 鳥居同じバーチャルサラウンドのサウンドバーである「HT-CT660」は「DTS-HD」となっていますね。でも、どちらもBDに収録されたDTS-HD Master Audioフォーマットに対応し、きちんと信号をデコードできるという点では同様ですよね? 伊藤はい。その点では同じです。「DTS-HD Master Audio」ロゴの認定には、そういった機能的な面だけでなく、様々な要件を満たすことが必要です。ですから、今までは7.1chのアンプを内蔵したAVアンプなど、単品コンポーネントの製品が取得することが多かったですね。 鳥居どちらかというと手軽な製品であるサウンドバーが、本格的な「DTS-HD Master Audio」ロゴを取得したということは、「HT-ST7」ならば本格的な7.1chサラウンドが楽しめるということをDTS社も認めたという証というわけですね。 伊藤その通りです。我々も、一般家庭でスピーカーを8本も使ったサラウンドシステムを実現することが難しいのは理解しています。リアル7.1chなどのシステムは理想ですが、それだけでは我々が目指す音を「広く」普及させることはできません。ですから、サウンドバーのようなより実現しやすい製品には大きな可能性があります。これまでは特に音質的なクオリティーのため、サウンドバーでは弊社の基準を満たせませんでした。その点を「HT-ST7」がきちんとクリアしたのは確かです。 藤下DTS社とソニーは、オーディオメーカー各社と同様にサラウンド製品の開発などで深い関係を持っていますが、ソニーとしてはデコード用DSPの開発協力などもさせていただいております。そういったこともあり、「DTS-HD Master Audio」ロゴの取得についてもたくさんの協力をしていただきました。ロゴ取得のための基準は、膨大な数の項目の審査を受ける必要があるのですが、審査のためのテストに立ち会って直接意見を聞かせてもらうなどをして、基準を満たす製品に仕上げることができました。また、店頭デモ用としてDTSで制作したサラウンド作品を提供していただきました。 伊藤映画コンテンツとして「ハンガー・ゲーム」、「プロメテウス」からシーンを収録したディスクを、「HT-ST7」の店頭デモ用に用意しました。優れたサラウンド作品を使って、店頭で「HT-ST7」の音質を確かめていただけます。 藤下先ほどの「映画の3要素」、セリフと効果音と音楽、それぞれにおける「HT-ST7」の音質を十分に堪能できるコンテンツですね。迫力ある爆発音はもちろん、肉声、ヘルメット越しの声、通信機越しの音声など様々な種類のセリフ、そして場面を盛り上げるBGMを「HT-ST7」がいかに再現するか、ぜひ店頭で体験いただければと思います。 鳥居DTS制作のデモ用コンテンツは、AV好きの間でも人気が高いですからね。店頭だけの使用とはいえ、それを楽しめるのはうれしいです。それにしても、お手軽だけれども、サラウンド再生の実力は少々劣ると思われがちなサウンドバーで、「HT-ST7」のような製品が登場することは、ユーザーとしてもうれしいことだと思います。住環境の問題でリアル7.1chが実現できずにいる人には朗報でしょう。 鳥居3人で「HT-ST7」の音を聴かせてもらいましたが、僕はサウンドバーの持つ可能性がとても大きいことを実感しました。僕自身は将来的な9.1ch再生を見据えて5.1chからサラウンドシステムを見直しているところですが、異なるスピーカーを組み合わせていることもあり、スピーカー同士の音のつながりに苦労しています。スピーカーを同じにしたとしても、配置の問題などを含め問題は山積みです。ところが、「HT-ST7」ならば一番重要になるスピーカーのつながりの問題は解消されています。そのおかげで、空間の広がりと、前後左右に定位する音、スクリーン面に配置される音がしっかりと描き出されていました。サウンドデザイナーが狙った音場や音像の再現がきちんとできていると思います。 藤下ありがとうございます。「HT-ST7」はサウンドバーのハイエンドですが、単品コンポーネントのハイエンドのような限られたお客様だけのものにはしたくありませんでした。家庭で気軽に家族と一緒に楽しめることを目指しつつ、音もハイエンドにふさわしいものになったと思います。 伊藤「DTS-HD Master Audio」ロゴを取得した時点で、音質的なクオリティーも含めてDTSが求める音を再現できることは間違いないのですが、改めて、コンテンツの持っているポテンシャルがきちんと引き出せていることが、実際に「HT-ST7」で映画を観るとわかります。DTSとしても、使いやすい一体型のサウンドバーでここまで「映画の音」を再現できる製品が現れたことはとてもうれしく思います。 鳥居最後に付け加えるならば、音場空間や個々の音の濃密さにも驚かされました。これもリアル7.1chサラウンドで苦労するところなのですが、生活空間で邪魔にならないことを考えて小型スピーカーを使う場合、部屋が広すぎるとスピーカーの音のつながりの問題もあり、音場空間が薄くなってしまうことがあります。スピーカーからバラバラに音が出ている感じになるのです。ここ、ソニーの試聴室はかなり広い空間ですが、そんな広さでも音場や音の濃密さが薄まらずに、実体感のある音に包まれる感じが味わえます。壁の反射を利用するタイプではないので、置き場所の自由度も高いですし、広いリビングで使うには最適なモデルだと思います。 (Text by 鳥居一豊)
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家族みんなで気軽に楽しめる。「HT-ST7」は手軽に使えるハイエンド
「HT-ST7」は一般的なサウンドバーとしては高価な製品ですが、リアル7.1ch再生に憧れながらも現実的には実現が難しい、とあきらめてしまっている人にはぜひお薦めしたいですね。本日は皆さんありがとうございました。関連情報
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